就任挨拶

グローバル化が加速する中で、資源の枯渇、環境破壊、世界金融不安、貧困など、人類全体で取り組むべき課題が顕在化しています。これらの地球規模の課題に対処するためには、多様な人々が知恵を出し合い、それを活用し、連携協力して行動をおこすことが必要です。それを主導する人材を育成することは、東京大学の最重要な責務です。このため、私達は立ち止まることなく、勇気と英知と責任感とを持って挑戦し続けていかなければなりません。

この知のプロフェッショナルを育成する原動力となるものは、言うまでもなく、世界的に卓越した学問です。特に、これから学問を志す学生や若い研究者のみなさんには、研究の最前線で知の興奮と喜びを体験し、それらを糧として自ら意欲をもって自己を大きく成長させて頂きたいのです。東京大学をそのような「場」とすることが、支援を頂いている国民の負託に応え、さらには人類社会に対する貢献であると考えています。

東京大学は、創立以来、東西文化融合の学術の拠点として、世界の中で独自の形で、学術を発展させ、それを世界に伝えてきました。この伝統を引き継ぎ、さらに未来に向けて、世界の様々な人々を惹きつけ、知の探求を知の活用へとつなげる、「知の協創の世界拠点」を創っていきます。ここでは、国境、文化、世代の壁を越え、文系理系といった既存の領域を超えた新しい学術を展開し、さらには産官学の組織を横断する活動を進めていきたいと思います。この実現に向け、まず、卓越性と国際性を兼ね備え、学際融合の新しい学術の開拓にも積極的に取り組む大学院を創っていきます。

社会の姿が急速に変化する現代において、東京大学憲章に掲げる、人類社会全体の平和と福祉のための学術を現代的な形で押し進めるためには、時代の要請に応える柔らかさを備える必要があります。伝統として守るべきものはしっかり堅持する一方で、システム改革が欠かせません。これまで進めてきた学部の教育改革を定着させつつ、知のプロフェッショナルを鍛え価値創造の主体となる大学院の抜本的改革を進めます。同時に、男女共同参画、若手登用、流動性と安定性を両立させる人事制度の実現、これらは最重要の課題です。この改革を推し進める前提として、科学と学術の社会からの信頼を高めていかねばなりません。その基本である研究倫理と規範の徹底と、産学連携機能の強化は喫緊の課題です。

こうしたことを進めるなかで、日本の国民、そして世界から必要とされる東京大学、愛される東京大学となることを目指していきたいと決意しております。

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