「若手研究者育成縮減の影響調査及び反対署名」について


東京大学理学部物理学科の4年生有志が、事業仕分けの結果を受けて、アンケート調査・署名活動を自主的に展開し、12月18日に予算縮減の見直しを求める「若手研究者育成資金縮減の影響調査及び反対署名」を発表しました。
以下は、これに対する山形俊男理学部長と松本洋一郎理事・副学長のコメントです。
学生諸君のアンケート調査、署名活動を受けて
<山形理学部長コメント>
私たち東京大学理学部・理学系研究科では、12月3日に声明「次世代を担う若手研究者支援の充実を望む」を公表するなど、平成22年度予算編成に向け、声を上げてまいりました。このたび、理学部物理学科4年生有志が中心となって行った「若手研究者育成資金縮減の影響調査及び反対署名」のとりまとめ結果に接し、私たちの危惧したとおり、事業仕分けに基づく予算削減の可能性に学生・ポスドクの人たちが大きな不安を抱いていることが明らかになりました。日々、真摯に研究に邁進し、国の研究開発を支えている若手が切り捨てられることのないよう、適切な予算措置が講じられることの必要性を改めて痛感した次第です。
署名では、「事業仕分けによる科学・技術予算削減、特に、若手研究者育成システムの予算削減・廃止」に反対する声が4千名近くに達することが示されています。また、アンケートの結果、特別研究員制度が無くなったと仮定した場合、学生の8割余りが、研究者になることを諦めたり、海外への留学を考えたりすると回答しています。これは我が国の科学・技術の基盤の崩壊につながると言っても過言ではないでしょう。
我が国を担う有為な若人の悲鳴にも近い声が、政府関係者に届き、事業仕分けによって示された方針が見直されるよう、大学本部と連携をとりながら、私たちも力を尽くしていきたいと考えています。これを機に、「大学院生・ポスドクへの国の支援は不必要な雇用対策である」といった間違った認識が正されることを願って止みません。
<松本理事・副学長コメント>
学生諸君のアンケート調査、署名活動の結果についての報告を受けました。若手研究者育成のため、東京大学全体として各界の理解を求めていかねばならないとの思いをさらに強くいたしました。
若手研究者育成に関わる予算措置の意義・重要性については、東京大学の関わる様々な声明、アピールの中でも触れられてきたところです。私自身も、11の研究大学の研究担当理事・副学長の一人として、去る12月15日、共同声明「大学の研究基盤の強化と未来を拓く若手研究者の育成のために」を公にし、科学研究費補助金の拡充の必要性などを訴えました。
政府の間では、スーパーコンピューターなど一部の事業について、仕分け結果の見直しが行われつつある模様ですが、若手研究者育成については、未だ明確な転換がなされておりません。学生諸君の願いをしっかりと受け止め、今後とも、様々な場や機会を通じ、粘り強く訴えていきたいと考えています。
今回、学生諸君が連帯して声を上げたことそのものが、民主主義の担い手としての貴重な体験になったものと思います。引き続き、学生諸君が広く社会に目を向け、課題解決のために考え、自ら行動して欲しいと願っています。