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ピンク系の色の三角形が幾何学的に配置

書籍名

Routledge New Horizons in South Asian Studies Language, Identity, and Power in Modern India Gujarat, c. 1850-1960

著者名

ISAKA Riho

判型など

206ページ

言語

英語

発行年月日

2021年10月29日

ISBN コード

9781032009247

出版社

Routledge

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学内図書館貸出状況(OPAC)

Language, Identity, and Power in Modern India

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本書は、近代のインド・グジャラート地方におけるエリートたちの言語をめぐる議論に焦点を当て、それらが彼らの自己認識の変容や、社会集団間の権力関係の変化と密接に連関していたありさまを明らかにしたものである。19世紀半ばから20世紀半ばにかけて、植民地支配、ナショナリズム、独立後の国家建設という大きな政治・社会変動のなかで、インドの様々な社会集団に属するエリートたちの間では、「自分たち」がいかにあるべきかをめぐり活発な議論が繰り広げられた。「自分たちの言語」のあり方をめぐる議論は、その重要な一部であり、そこにはネーション、地域、宗教、カースト、階級、ジェンダーなどに基づく社会集団間の権力関係が反映されている。グジャラート地方に焦点を当てた本研究は、公文書、新聞・雑誌、文学作品、回顧録などの広範な史料に基づきながら、19世紀半ばから1960年前後までのエリートの言語観の変化を論じている (1960年はグジャラーティー語と結びついた「言語州」としてグジャラート州が成立した年である)。そこには、彼らの間での言語観の相違や、その相違に基づく対立、折り合いの様子が示され、言語、アイデンティティ、権力の間の複雑な関係が浮かび上がっている。
 
本書の前半部では、植民地期におけるグジャラーティー語の「標準語」化をめぐる議論が主に取り上げられる。今日「標準語」として知られている形態は、どのように規定され、どのように広まったのか? その一方で、他の言語形態はいかなるかたちで「方言」として位置づけられていったのか?どのような人々がいかなる背景のもとに標準語化を推し進めたのか? 彼らのもとで「正しい」グジャラーティー語が規定されていく過程は、グジャラート地方における社会集団間の関係とどのように連関していたのか? 言語をめぐる議論は、「グジャラート」「グジャラート人」という地域アイデンティティの再構築過程といかなるかたちで関わっていたのか?「標準語」とは異なる「自分たちの言語」をもつ人々は、標準語化にどのように抵抗し、あるいはその過程といかに折り合っていったのか? これらの問いを検討したうえで、さらに本書後半部では、国語 / 公用語をめぐる議論、公用語と地域言語との関係、「言語州」の是非をめぐる論争などが論じられる。グジャラーティー語に関するエリートたちの議論は、英語、サンスクリット語、ペルシア語、ヒンディー語 / ヒンドゥースターニー語をめぐる議論とも密接に連関しており、本書は様々なことばの絡み合う重層的な言語世界とその変容過程を描き出している。
 
これらの議論には、教育・文学活動に携わる知識人たちはもとより、政治・社会運動の指導者も含め、多様な立場のエリートたちが参与していた。そのなかには、「インド独立の父」でグジャラート出身のM.K.ガーンディーも含まれる。近代インドの諸地域において、エリートたちが「自分たちの言語」のあり方をめぐりいかなる議論を展開し、それが彼らの帰属意識の再構築過程といかに連関していたかについては、近年、重要な研究成果が次々に出されている。しかし本書が対象とするグジャラート地方に関しては、その経済活動に注目が集まることが多く、人々の言語観を政治・社会的背景とともに考察する試みは限定的であった。また本研究の特色として、こうした言語観の変遷を、植民地期から独立直後にいたるまでの長い期間を対象に分析したことが挙げられる。本書はこのように、グジャラート地方の言語をめぐる議論を通じて、近代インドにおける「地域」「国家」概念の発展過程を理解するための新たな視点を提供している。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 井坂 理穂 / 2022)

本の目次

Introduction
1. Gujarat Society and its People
2. Educational Institutions and Language
3. The Gujarat Vernacular Society and the Press
4. Debates over Gujarati Language and Literature
5. Nationalism and Language
6. The Formation of Gujarat State
Conclusion

関連情報

書評:
Mona G. Mehta 評 (『International Quarterly for Asian Studies』Vol. 54 No. 4 pp.461-463  2023年12月22日)
https://hasp.ub.uni-heidelberg.de/journals/iqas/issue/view/1434
 
Amrita Shodhan 評 (『South Asia Research』Vol. 43(1) pp. 129–150  2023)
https://journals.sagepub.com/home/sar

大石和欣 評 <本の棚> Riho Isaka 『Language, Identity, and Power in Modern India: Gujarat, c. 1850-1960』 (『教養学部報』第638号 2022年7月1日)
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/about/booklet-gazette/bulletin/638/open/638-02-1.html

レクチャー:
「Debates on language in modern Gujarat: Dialogues between past and present」 (オンライン [主催: IIT GANDHINAGAR HUMANITIES & SOCIAL SCIENCE] 2022年4月20日)
https://hss.iitgn.ac.in/k-event/debates-on-language-in-modern-gujarat-dialogues-between-past-and-present/

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