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2021年冬・春に開催を予定していたプログラムの中止について


東京大学は、2021年の冬から春にかけて実施予定のグローバルキャンパス推進本部主催留学プログラム(以下)の学生派遣を中止いたします。

全学交換留学(春学期の学生派遣)
UC派遣プログラム(春学期の学生派遣)
ウインタープログラム及びスプリングプログラム(カリフォルニア大学サンディエゴ校、オタゴ、インドネシア、浙江、INSAリヨン、Science Po等)
国際総合力認定主催のウインタープログラム

この決定は現在、世界が直面する新型コロナウィルスの感染拡大を受けてなされたものです。外務省は現時点で全学交換留学協定校の所在地・国および短期プログラムの派遣先の国における感染症危険情報をレベル3としています。(これは「渡航は止めてください(渡航中止勧告)」という指示です。)また、全世界に対して危険情報のレベル2(「不要不急の渡航は止めてください」)を発出しています。グローバルキャンパス推進本部のプログラムはこれらの指標がレベル1以下にならなければ実施できません。一方、多くの国と地域において、ビザ発給の停止や入国禁止など、入国制限措置が続いています。残念ながら、こうした措置が緩和される兆しは現時点では一向になく、この冬から春にかけて、皆さんが渡航できる目処が立ちません。  
今春から夏出発の諸プログラムに引き続き、本学は再びこのような決断を下さねばならなくなりました。海外での学習を志して、さまざまな準備をしてきた皆さんはおおいに落胆しているでしょう。  
東京大学の学生がグローバルな舞台で大きくはばたくことを切に願う私たち教職員にとって、この決定はとても残念なものです。しかし海外での学びは、安全性はもちろんのこと、それが予定通り達成できるという計画性を前提にしたものでなければなりません。その前提が現在の世界状況では確保できません。世界的な感染状況の改善の見込みが十分に立たないなか、皆さんの今後の就学計画を考え、この段階での決定となりました。  
新型コロナウィルスは「境界」の存在を強く意識させるものです。ウィルスは境界を知らず、世界中に拡散します。一方、私たちはウィルスから身を守るために、できるだけ他人との接触をしないよう自己の周りに境界を設け、そのなかに身を潜めるようにと言われています。そのため、日本への入国も、日本からの出国も極めて困難になりました。都道府県間の移動にも気をつけなければなりません。皆さんが自宅からキャンパスに来ることもできなくなり、教室で共に学ぶという大学として「あたりまえ」と思っていたことまでもが先学期はかないませんでした。あらゆる境界を超越するかのごとく拡散するウィルスを前に、私たちは境界のなかに閉じこもらざるを得なくなっています。  
そのような状況下、自分は外の世界から切り離されてしまったかの感覚に陥るかもしれません。日本の国境の外のことは現実味が薄くなってしまうかもしれません。  
しかし、私たちは自分の小さな世界の殻に閉じこもって生きていくことはできません。皆さんの周りにある境界は絶対的なものではありません。今、この状況でも、私たちはさまざまな形で世界と繋がっています。ひとりひとりの小さな日常は世界の大きな流れと不可分な関係にあります。例えばこのウィルスが拡散することも、その治療法が開発されることも、その結果、私たちの日常が回復することも、グローバルな知識、情報、モノの流通と切り離せないものです。このような時だからこそ、自分の周囲に設けられた境界の意味を考え、その外に広がる世界を想像する努力をしてください。  
さまざまな形で狭められてしまった現在の境界が取り払われ、再び世界が広がる日は必ず来ます。そのときにはキャンパスの内外での対面の国際交流がまた始まります。その準備となるように、本学ではさまざまな国際体験をオンライン上で提供していきます。近い将来、皆さんが再びしなやかに、軽やかに境界を越えて、世界に飛び立てるよう、これからもグローバルな夢を持ち続けてください。  


相原博昭
大学院理学系研究科教授
副学長・執行役
グローバルキャンパス推進本部長

矢口祐人
大学院情報学環教授
グローバルキャンパス推進本部国際化教育支援室長