やわらかアカデミズム・<わかる>シリーズ よくわかる哲学・思想
哲学・思想は今日の社会でおおいに注目され、私たちが直面するさまざまな問題に指針を与えることが期待されている。哲学には、近年ごく簡便な入門書や図解の本が多数出版されており、他方で高度な専門書や翻訳も充実している。これら二種類の本は広く流通しているが、その間を埋めるレベルの本はほとんど出ておらず、そのため、初心者の段階から一歩進んでさらに哲学を知りたい人に、必要な知識や哲学の全体像を示す書籍が求められていた。本書はそのような要請に応えるべく企画された、一般向けの哲学ガイドである。西洋哲学を中心にした古代から現代までの哲学・思想の流れを追い、そして、現代の哲学が直面する基本的な主題を論じる。
西洋古代哲学が専門の私 (納富) と、近現代フランス哲学を中心に多数の著作がある本学哲学専攻出身の檜垣立哉氏 (大阪大学)、現代英米分析哲学の代表的研究者である柏端達也氏 (慶應義塾大学) が編者となり、若手の研究者たちを結集して書かれた、現代日本の哲学レベルを示す概説書である。3名の編者を含めた28名の専門家が、最先端の知見を踏まえてできるだけ簡潔にわかりやすく解説を加えた。全部で103の項目を立てて、写真や参考文献などを組み込んで見開き2ページで解説している。
哲学史としては、古代ギリシア哲学から20世紀後半の現代思想までをカバーし、明治以降の日本の哲学にも多くの紙数を割いている。哲学の諸問題としては、「生と死」や「神」や「時間論」といった古典的な問題から、「STS (科学技術社会論)」「子どもの哲学」「クィア・LGBT」「ケアの哲学」などの現代的なトピックまで幅広い内容を取り上げている。これらの主題をつうじて、哲学が関わる領域の全体と、個別の議論をバランスよく学ぶことができる。
本書が念頭においている読者は、大学の教養課程から専門課程の学生、そして、哲学に関心のある一般の方々である。高校の倫理などで哲学・思想に興味を持った人たちが、本書を通じて哲学の基本的考え方や基礎知識を学び、より本格的な哲学書や西洋哲学の原典にあたってもらうことができる。興味のある項目から自由に拾い読みしていただくことができるが、通読することで現代の哲学分野に通じることもできる。「一家に一冊」というコンセプトで作られた本で、辞典としても使っていただける。是非、本書を活用して哲学を楽しんでいただきたい。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 納富 信留 / 2019)
本の目次
序 哲学の枠組み
1 「哲学」とは何か?
2 哲学の部門
3 哲学史とは
第1部 西洋哲学史
I 古代・中世の哲学
1 初期ギリシア哲学 (1): 自然哲学の誕生
2 初期ギリシア哲学 (2): 存在論の展開
3 ソフィストとソクラテス
4 プラトン
5 アリストテレス
6 ヘレニズム哲学
7 新プラトン主義
8 教父哲学
9 スコラ哲学
10 イスラーム哲学
11 ルネサンス哲学
II 近代の哲学
1 デカルト
2 パスカル
3 スピノザ
4 ライプニッツ
5 イタリア近代
6 ベーコンとホッブス
7 ロック
8 バークリ
9 ヒューム
10 フランス啓蒙思想
11 ルソー
12 スコットランド啓蒙思想
13 メーヌ・ド・ビランとコント
14 カント
15 ハーマンとヘルダー
16 フィヒテ
17 シェリング
18 ヘーゲル
19 ショーペンハウアー
20 キルケゴール
21 マルクス
22 功利主義
III 現代の哲学
1 ニーチェ
2 フロイトとユング
3 初期プラグマティズム
4 ベルクソン
5 フッサール
6 解釈学
7 ハイデガー
8 初期の分析哲学
9 ホワイトヘッド
10 論理実証主義
11 日常言語学派
12 ウィトゲンシュタイン
13 科学哲学
14 70年代以降の分析哲学
15 現代プラグマティズム
16 人類学と哲学
17 フランクフルト学派
18 アーレント
19 ハーバーマス
20 サルトル
21 メルロ=ポンティ
22 レヴィナス
23 フーコー
24 ドゥルーズ
25 デリダ
第2部 近代日本の哲学
IV 西洋哲学の受容期
1 明治の啓蒙思想
2 西洋哲学の導入
3 内村鑑三
V 日本哲学の展開期
1 西田幾多郎
2 田辺 元
3 九鬼周造
4 和辻哲郎
5 三木 清
6 京都学派
7 戦後の哲学
第3部 哲学の諸問題
VI 哲学の基本主題
1 生と死
2 人間: ヒューマニズム / アンチ・ヒューマニズム
3 神
4 現代の存在論
5 言語哲学
6 時間論
7 真理論
8 論理学
9 知識論
10 行為論
11 心身問題
12 他者論
13 相対主義・多元主義
14 美の哲学
VII 現代の諸問題
1 自由論
2 STS (科学技術社会論)
3 公共哲学
4 正義論
5 徳倫理学
6 グローバル化とポスト・コロニアル
7 フェミニズムとジェンダー
8 クィア・LGBT
9 生命と進化
10 教育哲学
11 文芸批評
12 子どもの哲学
13 医療倫理・生命倫理
14 ケアの哲学
15 アフォーダンス
16 環境倫理学
17 新しい技術と倫理
18 メタ哲学
人名索引
事項索引