Message 総長メッセージ

多様性の海へ
対話が創造する未来

国立大学法人東京大学総長

気候変動の問題はもとより、世界に広がる差別や不平等など、いま人類は容易ならざる困難に直面しています。新型コロナウイルス感染症の蔓延は、人々が集まり、話し合い、触れあうといった日常的な行為がいかに大切であるかを浮かび上がらせました。このように、これまで前提としてきたさまざまな条件や常識が大きく変化しつつある今日だからこそ、私たちは過去から未来までを見すえた長期的な視野に立って、学術が果たすべき役割を自覚し、新しい大学像の構築に取り組まねばなりません。こうした考え方に基づき、東京大学では、学内外の教職員・学生・ステークホルダーのみなさまと意見を交わしながら、これからの基本方針である「UTokyo Compass」を策定し、2021年9月30日に発表しました。

UTokyo Compassでは、基本方針として3つの理念「対話から創造へ」「多様性と包摂性」「世界の誰もが来たくなる大学」を掲げています。対話とは、未知なるものと向き合い、問いかけ、知ろうとする実践です。また対話の実践は、他者の小さな声にも耳を傾ける多様性の尊重や、社会との大きな連携にもつながります。このような対話を通して形作られる信頼があってこそ、地球をはじめとする人類共有の財産を皆で守っていくとともに、社会に広がる閉塞感を乗り越え新たな未来を開く道しるべを見出していくことができます。

また、大学の活力の源泉は、多様な個性と背景、多彩な才能を持つ人が活気溢れるキャンパスに集まることにあります。「多様性と包摂性」の理念の下、多様な背景を持つ優秀な「人」が世界から集まり、活き活きと活動し、多様な「知」を生み出す「場」を実現していく所存ですが、これを進めるためには教員と共に積極的に大学経営を担う職員の存在が不可欠です。

大学では多種多様な業務を職員が担っています。たとえば教育研究の最前線で教員と学生を支援する教育・学生支援や研究推進、社会との新しい関係構築を目指す社会連携や産学協創、国民の健康を支援する医療支援、大学経営を支える人事や財務や総務、キャンパス環境の基盤となる環境安全や施設や情報システムや図書等、幅広い経験を積みながら一人一人の能力を活かしうる場として大きな可能性が拓かれていると言ってよいでしょう。

大学が大きく変わろうとしているいま、一緒に考え、行動する意欲に満ちた方々と「世界の誰もが来たくなる大学」の実現に向けて取り組むことを楽しみにしています。
新しい東京大学をともに創っていきましょう。