途上国での災害と貧困の関連性分析

  • 目標1:貧困をなくそう
  • 目標11:住み続けられるまちづくりを
  • 目標13:気候変動に具体的な対策を
川崎 昭如
工学系研究科
社会基盤学専攻 水循環データ統融合の展開学 社会連携講座 特任教授
2015年、『持続可能な開発目標(SDGs)』では17の目標が設定された。その第一目標は「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」であり、それまで貧困は主に人文・社会科学領域の問題として捉えられてきた。しかし、同年に採択された『仙台防災枠組』および気候変動に関する『パリ協定』により、それ以前は個別の課題として捉えられがちであった持続可能な開発と防災・減災、そして気候変動との間の重要な結びつきが明示された。しかし、災害が貧困層などの脆弱な層に最も深刻な打撃を与えることは自明で指摘もされてきたが、災害や気候変動、開発と貧困との関連性についての包括的な学術研究はあまり行われておらず、その関係性の全体構造および要素間の関連の実態はほとんど分かっていない。

災害の中でも、気候変動の影響により特に洪水の被害が将来的に増加すると考えられているが、洪水の被害を受けるアジア各国においては貧困が問題化していることも多い。そのため洪水と貧困の両方の問題を考慮した支援策が必要であるが、現状では貧困及び洪水の実態を地区レベルで考慮した施策は少ない。

そこで本研究では、途上国での地区レベルにおける貧困層の特性と居住分布を把握するための実態調査を行うとともに、それらを考慮した洪水常襲地帯の開発支援策を提案している。学術研究と実際の政策に乖離があると指摘されている中で、本研究では洪水常襲地帯における貧困の実態と洪水氾濫計算結果の両方を考慮して現地の実情と対策の効果を評価した上で、地区レベルでの具体的な開発支援策を提示した点で実践的かつ意義が大きいと考えている。

研究対象地は、タイ、ミャンマー、スリランカ、バングラデシュである。
ミヤンマーでの水害常習地帯での聞き取り調査
川崎昭如
洪水氾濫と貧困層居住分布を考慮した地域開発と防災計画の提案
川崎昭如

共同実施者

・Win Win Zin ヤンゴン工科大学(YTU、ミャンマー) 教授
・Zin Mar Lar Tin San ヤンゴン工科大学(YTU、ミャンマー) 教授
・田平由希子 アジア工科大学院 (AIT、タイ王国)  Research Assistant
・Gouri Silva 東京大学 工学系研究科 社会基盤学専攻 博士課程
・小高 暁 慶應義塾大学 大学院システムデザイン・マネジメント研究科 特任助教

主な関連論文

1.川村元輝,川崎昭如(2018)貧困層を考慮した洪水氾濫域の開発支援策の検討:ミャンマーでのケーススタディ.水文・水資源学会誌,31(2),83-93.doi.org/10.3178/jjshwr.31.83
2.Silva, M.D., Kawasaki, A. (2018) Socioeconomic vulnerability to disaster risk: A case study of flood and drought impact in a rural Sri Lankan community. Ecological Economics, 152, 131-140. doi.org/10.1016/j.ecolecon.2018.05.010
3.川村元輝,川崎昭如(2017)開発途上国の洪水と貧困の関係性に関する研究:ミャンマーでの地区レベルにおけるケーススタディ. 地域安全学会論文集, 31, 187-193.
4.田平由希子, 川崎昭如(2017)東南アジアの洪水常襲地帯における住民の災害対応と支援の関係:タイとミャンマーの比較分析から.水文・水資源学会誌,30(1), 18-31.doi.org/10.3178/jjshwr.30.18
5.川崎昭如, 地球観測と防災・減災科学の連携.『学術の動向』,21(3), 115-117, 2016年3月.
6.田平由希子,川崎昭如(2016)タイ中部における農村と洪水の関係「貧しい村」と「豊かな村」はなぜ存在するのか.地域安全学会論文集,29,269-278.doi.org/10.11314/jisss.29.269

問い合わせ先

  • 担当: 工学系研究科 社会基盤学専攻 川崎昭如

  • メールアドレス: kawasaki[at]hydra.t.u-tokyo.ac.jp
    ※[at]を@に置き換えてください
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