法人化をめぐる動向について

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式辞・告辞集 法人化をめぐる動向について

国立大学法人東京大学総長 佐々木 毅
平成15年(2003年)1月8日

 

法人化は東京大学のメンバーに共通の目下最大の関心事であり、特に、誤った事実認識に基づく誤解やそれに伴う不安や混乱はこの際是非とも回避されなければならない。これまでも法人化をめぐる学内の動きについては随時「学内広報」に関連の記事が掲載されてきたが、さまざまな報道がなされているという現実に鑑み、今後、この場を借りて学内に対して適宜情報の提供をするようにしたい。

  1. 学外の状況
    周知のように、国立大学を法人化するための法律は未だに成立していないし、国会にもまだ提出されていない。現在のところ、法案そのものについては文部科学省が内閣法制局や総務省などとすり合わせ中であり、1月中には法案の内容が固まり、2月末に閣議決定に至るというのが文部科学省の見通しのようである。その前に恐らく国立大学学長会議などが開催され、法案に対する説明が行われるものと予想される。そしてこの法案は予算関連法案でないため、通常国会の後半で審議されることになるが、今年は4月に統一地方選挙が行われるため、早くても審議が始まるのはゴールデンウイーク以後になろう。勿論、政局の新たな展開などによっては当初の目論みが影響を受けることは避けられない。そして、法案の内容と行方に注意を払うのが、今年前半の大きなテーマである。
    法人化をめぐる諸問題との具体的な取組みの中心になっているのが、国立大学法人化特別委員会(以下、法人化特委と呼ぶ)である。この委員会では法案の検討のみならず、今後の人事制度や財務会計制度について文部科学省との間で意見交換と今後の諸案件の具体的な取り扱いが審議されている。また、将来の国立大学法人の存立と不可分の関係に立つ中期目標・計画の実際の内容についてもこの法人化特委を中心に意見交換が行われ、昨年末に凡そのフォーマットが示された。そこでの審議結果は直ちに各大学に伝えられ、そこでの検討の材料にされている。本学においても学部長会議や研究所長会議等においてこの委員会の動きを速やかに伝え、後で述べるような具体的な学内での検討につなげている。法案の内容の検討はこの法人化特委の重要な任務であるが、同時に非公務員型の採用に伴う人事制度の大きな変更や財務会計制度の新たな設計など、その他にも膨大な課題のあることがそこで明らかになっている。授業料の決定といった重大な問題も一定の範囲で各大学の裁量に属する事項になることが確認されている。
    最終報告(新しい「国立大学法人」像についてH14.03.26)において非公務員型が採用されたことによって、一方でこれまでの公務員法制から民間型労働法制への移行に伴う多くの作業が必要になり、予想されていなかったようなコストの増加が心配されるとともに、他方で、法人自身が自ら設計しなければならない課題が広がることになった。従って、法案によって決まる部分と法人として自ら決定しなければならない部分とを区別考える必要がある。法人化そのものもさることながら、法人の定めるルールも教職員の将来に影響を及ぼすことを認識しておく必要がある。

  2. 学内での検討状況
    法人化についての学内の主たる検討の場はUT21会議であり、昨年、各部局長を含む三つの検討委員会(組織・運営機構、財務・会計、人事・業務・評価)を設けて論点の準備的検討を行い、9月末に中間的な報告がなされた。なお、これら三つの検討委員会の課題についてはそれぞれに対応する形で運営諮問会議を今年度3回開催し、学外からの意見も聴取している(その内容は、随時「学内広報」に掲載してきている)。その後、法人化に伴う具体的な問題の検討に取組むため法人化準備委員会を設置し、この中に総長・部局長の選考方法等、就業規則、資源配分の三つのワーキンググループを設置し、目下、副学長と総長補佐を中心に検討を行っており、そこで結論が出たものについてはUT21会議において議論していただくことを予定している。現に、今回選出される部局長の任期についてはここで基本方針を決定した。また、昨年末、法人化に伴う附置研究所・センターの取り扱いについて文部科学省の審議に対応するため本学の原案を作成する「附置研究所・センター等問題検討委員会」を設置した。
    中期目標・計画については昨年の夏に各部局から具体的な提案を出していただいたが、その後、そのフォーマットが明らかになったことを踏まえつつ、総長補佐を中心に第1次草案を準備し、時期を見てその内容について各部局の意向を確認する作業を行うつもりである。現在までのところ中期目標・計画には全学的な事項が中心に盛り込まれるものと思われるが、各部局の意向を充分に踏まえた上で作成することは言うまでもない。また、中期目標・計画の作成と平成16年度概算要求との関係など、なお、整理しなければならない課題がある。
    先にも述べたように、提出を求められる中期目標・計画は全学事項を中心とした比較的量の少ないものになると予想されている。しかしこれとは別に、それぞれの部局には具体的な中期目標・計画の準備が求められ、場合によっては中期目標・計画の添付資料といった形で将来提出を求められる可能性が高い。また、学内においてもそれぞれの部局が何を目標にし、どのような成果をあげたかを評価していく仕組みを作らなければならず、従って、各部局における中期目標・計画についての検討は今後とも必要である。
    今回の法人化に伴う制度の変更や見直しについては多くの意見が学内からも寄せられている。問題は何をどのような段階を踏んで実現していくかであり、最初の6年をどのように使うかについてこれから検討を進めていく必要がある。

[学内広報No.1253抜粋]

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