学生のみなさんへ

| 東京大学歴代総長メッセージ集(第27代)インデックスへ |

式辞・告辞集 学生のみなさんへ

新たな知の共同体創出への参画を
―東京大学の法人化にあたって、学生の皆さんによびかける―

国立大学法人東京大学総長 佐々木 毅
平成16年(2004年)4月1日

東京大学が、平成16年(2004年)4月1日を期して国立大学法人となることはご存じだと思います。国が直接運営する組織でなく、独自の経営主体と管理機構をもつ、より独立性の高い機関へと生まれ変わるのです。考えてみれば、これは百数十年に及ぶ東京大学の歴史のなかで、創立時、第二次世界大戦後の新制大学発足時に並ぶ、三度目の大きな変化です。東京大学は、昨年評議会が採択した「東京大学憲章」において、今回の法人化を、大学がより自由でより自律的な機関へと脱皮する好機ととらえ、この機会に世界水準の学問研究の推進役であると同時に「市民的エリートが育つ」知の共同体へと飛躍することを期していると宣言しました。

東京大学の法人化は、本学に学ぶ学生の皆さんに、今まで以上の大きな役割の発揮を求めています。「東京大学憲章」は、大学の構成員の責務を定めた条項で、「東京大学を構成する教職員および学生は、その役割と活動領域に応じて、運営への参画の機会を有するとともに、それぞれの責任を自覚し、東京大学の目標の達成に努める」としています。学生の皆さんが今まで以上に自律性を獲得し、あらゆる局面で自己決定が重要となる新しい知の共同体創出への共同参画者となるよう呼びかけているのです。

「東京大学憲章」は、東京大学が「学生の学習活動に対して世界最高水準の教育を目指す」ことを誓約しています。「世界最高水準の教育」を提供すべく、教員と職員がいっそうの努力をするのはいうまでもないことですが、しかし学生の皆さんにはその「世界最高水準の教育」という大学が提供するサービスの受動的享受者にとどまってほしくありません。大学における学習が与えられた課題をこなすだけの受動的なものでなく、自ら課題を見つけ取り組む能動的なものであることと深く関わりますが、東京大学は、学生の皆さんが自分の学ぶ場を世界最高の教育と研究の府とする共同作業に参画してくれることを願っているのです。

さらにまた「東京大学憲章」が謳う「市民的エリートが育つ」知の共同体とは、そこにおいて「各分野の指導的人格」が養成される場にほかなりません。東京大学は、学生の皆さんが社会性を鍛え、リーダーシップを涵養することを、教育上の大切な柱としています。学生の皆さんが、よりよい東京大学を作り出すこと、すなわち自分自身の学習と研究の環境を改善する仕事に積極的に関わることは、「東京大学憲章」の掲げる教育理念を実現する上で、重要な意味を持っています。

また、「世界の東京大学」にとっては、より多くの優秀な留学生を迎え、より多くの在学生が外国に留学するなどして、国際化を促進することも重要な課題です。学生の皆さんは、大学の国際化の大切な担い手でもあります。

東京大学は、法人化にあたり、学生の皆さんが、新しい東京大学創出という大事業に、教員・職員とともに、責任ある参画者として主体的に関わることを期待しています。

カテゴリナビ
アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる