総長就任にあたって

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式辞・告辞集 総長就任にあたって

職員の皆様へ

 

国立大学法人東京大学総長 小宮山 宏
平成17年(2005年)4月1日


 大学は現在、世界的な競争環境におかれています。人材育成の場として、未来を牽引する研究の場として、社会との間で知が交叉する創造の場として、本学が世界に冠たる地位を確立できるのかどうか、その競争は熾烈なものがあります。優秀な若者に、トップクラスの研究者に魅力的な環境を提供することが、大学が競争力を発揮するための源泉です。
  大学の構成員は、教員と学生と職員です。世間が抱く大学のイメージは、前二者でありますが、わたしたち教員、なかんずく部局長や役員といった職に就いたことのある者は、職員の皆様が一所懸命働いているおかげで、本学の研究と教育が成り立っていることを十分に承知しています。本学が得ている高い評価は、皆様の支えがあってこそ達成されているものであります。われわれは現在の状況に満足してはいけません。さらに高きを目指しましょう。
  知が創り出される場所は、教室であり、研究室です。すなわち、部局に教育研究の現場があるのであって、本部ではありません。本部は部局の活動を支えるためにあります。部局の職員は、より現場に密着して教育研究を支援し、本部の職員は、部局の教職員の活動を行いやすくする仕組みをつくることで間接的に教育研究を支援しています。しかしながら、本部が企画し、部局は実行するといった上意下達の世界で、本部と部局の距離が遠のいているのではないでしょうか。しばしばその伝達さえうまくいかない例も生じています。
  部局の現場で何が起き、何が問題となっているのか、本部にいる職員はアンテナを張り、つねに現場を意識して物事を考えるようにしたいと思います。そこで私は、「部局パートナー」を本部の職員に兼ねてもらうことを検討しています。本部の管理職を部局毎のパートナーとして指名し、部局からの質問は、担当外事項であっても一手に引き受け、たらい回しにしない、時間がかかってもパートナーから部局に答えるという仕組みをつくります。部局の教職員はだれでもパートナーに質問でき、必ず答えが返ってくる。そしてそのQ&Aはホームページで公開され、蓄積されるのです。部課という縦割りの組織と部局という縦割りの組織を将棋盤に例えれば、部局パートナーは飛車のように、縦の部課1行、横の部局一列をカバーします。さらに、ワンストップサービスを引き受けるということは、隣の行にいる他の部課の職員に聞きながら答えを出しますので、角の動きも必要です。この「飛車角方式」を導入して、現場の変化に機動的に対応できるようにしたいと思います。
  4月の組織改編で本部では産学連携課や調達グループ、学生部のキャリアサポートグループなど、部局の教育研究活動を全学的にサポートし、新しく重点を置くべき分野の組織を充実します。しかし、そのために本部の人数を増やすということはしていません。逆に減らしており、それによって生じた人員によって柏事務局を充実しました。限りなく現場を重視し、書類を相手にするのではなく、人を相手にする仕事に職員の皆様の力を結集したいと考えております。
  知の創出の現場は、教室であり、研究室であると申しましたが、大学にとってもう一つ大事な現場は事務室です。世界のリーディングユニバーシティとして教育も研究もそして事務室も知が躍動する場所にしていきたいと思います。皆様とともに、生き生きと仕事に励むことができるよう微力を尽くします。

 

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