令和7年度 東京大学卒業式 祝辞(國部 毅 東京大学校友会 会長)
令和7年度 東京大学卒業式 祝辞
ただ今ご紹介に預かりました國部でございます。
東京大学校友会を代表いたしまして、本日ご卒業される皆さま、そして、そのご家族の皆さまに、心からお祝いを申し上げます。
私は1976年、ちょうど50年前に本学の経済学部を卒業し、現在は三井住友フィナンシャルグループの名誉顧問を務めておりますが、一昨年(2024年)7月から東京大学校友会の会長を拝命しております。
東京大学校友会は、2004年に発足した全学同窓組織でございます。
まだ歴史は浅いですが、300を超える団体会員と約25万名の個人会員によって構成される、大きなコミュニティです。
毎年10月にホームカミングデイを東京大学と共同開催するなど、本学と会員の方々の相互のコミュニケーションを促進し、本学のさらなる発展を支援することを目的として活動しております。
ここにいらっしゃる皆さまを含めまして、本学の卒業生・修了生・在学生・教職員は全員が校友会の会員であります。
皆さまの中には、すでに校友会主催の在学生学年会に参加された方や今後、校友会行事に参加予定の方もいらっしゃると思います。お手元の冊子に校友会の案内がありますので、是非ご覧ください。
さて、私が卒業した1976年頃を振り返ると、日本経済は、第一次オイルショックを受けた不況を脱し、世界第二位の経済大国として地位を高めていました。一方、人口動態をみれば、戦後生まれの人口が戦前生まれを超え、世代間の「相互理解」の必要性が指摘され始めたのもこの頃からでした。
また、世界情勢をみれば、東西冷戦の真っ只中、アジアや中東の情勢も不安定で、国境やイデオロギーを越えた「相互理解」の必要性も指摘されていました。
あれから半世紀が経ちましたが、人々の価値観は世代間の違いに止まらず多様化し、世界は再び分断の時代に突入しています。「相互理解」の重要性は、半世紀前よりも高まっていると言えるのではないでしょうか。
相互理解を深めるためには、異なる価値観を認め合うことが必要です。
ただし、それは、「言うは易し、行うは難し」であります。
とりわけ、インターネット技術やAI技術が発達した現在は、情報過多の時代であり、膨大な情報に触れることはできますが、アルゴリズムによるエコーチェンバーの形成や、偽情報の氾濫などにより、正しい情報が何かを見極めることが難しくなっています。
幸い、AIが爆発的な進化を遂げた歴史的な転換点に、本学において、自ら問いを立て、学びを深めてきた皆さんには、情報が溢れる時代を生き抜くための土台がしっかりと備わっていると思います。
ただし、卒業後に進まれる大学院や社会では、これまでとは比べ物にならないくらい大量かつ多様な情報に触れることになるでしょう。
このような時代に、世界を動かすリーダーとなる皆さんには、自分の価値観に囚われた近視眼的な思考に陥ることなく、溢れる情報の波の中から物事の本質を見抜く力、そして、自分とは異なる価値観を理解する力を養い、広い視野で日本や世界を良い方向に導いていただきたいと思います。
そのために皆さんに是非お願いしたいことは、常日頃から、慣れ親しみ、同じ価値観の人たちに囲まれた居心地の良い環境、いわゆるコンフォートゾーンから一歩踏み出して、新しい経験や自分と違う考え方に触れ、自分なりに吸収していって欲しい、ということです。
その繰り返しが、多面的で大局的な物の見方の習得につながるのだと思います。
東京大学校友会のコミュニティを活用して、自分と違う世代や異なる分野で活躍する同窓の仲間と交流することも、その一助になると思います。
相互理解がますます重要となる世界において、皆さんがその先導役となり、明るい社会、そしてより良い未来を創り上げてくれることを心から期待しております。
最後に、皆さまの人生の門出を心よりお祝い申し上げますとともに、今後益々のご活躍をお祈りいたします。
改めまして、本日は誠におめでとうございます。
令和8年3月25日
東京大学校友会 会長
國部 毅
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