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重なった和紙の写真

書籍名

JIHYO BOOKS beyond 2020 LEGACY 歴史を受け継ぎ、新しい未来へ

著者名

隈 研吾 (総監修)、 柏木 孝夫 (監修)、坂村 健 (監修)

判型など

280ページ

言語

日本語

発行年月日

2018年3月

ISBN コード

978-4-88339-252-0

出版社

時評社

出版社URL

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学内図書館貸出状況(OPAC)

beyond 2020 LEGACY

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僕という建築家を一言で要約するとしたら、何ということになるだろうか。「木の建築家」というまとめ方でも正解だろうが、「リノベーションを建築にした建築家」という総括もおもしろいと、僕は感じている。従来の建築家は、目立つ形の建築を、ゼロから新築するのが仕事であった。建築史の教科書に載っているのも、そんな新築ばかりである。しかし、僕は、もともとそこにある建築をリノベーションしたり、保存したりという仕事がとても多い。しかも、その手の仕事に、意外におもしろいものが多いのである。この本で取り上げた建築は、歌舞伎座、日本橋三越本店、京王高尾山口駅、京都新風館、大阪のホテルアンドミュージアムロイヤルクラシックなどである。手の加え方は様々で、保存+修復もあるし、歌舞伎座や、大阪の新歌舞伎座を再現したロイヤルクラシックのように、歴史的建築物を新たに再現したものも、いくつかやっている。そのような作り方の建築がいままで無かったわけではないが、そのような改修系の建築を、僕のような建築家が手掛け、世の中から注目されるという現象は、いままであまり無かったように感じられる。時代が改修を求めており、改修が建築の本流になってきたということではないかと、僕は考えている。
 
ヨーロッパの古い都市では、ほとんどの建築行為は改修である。新築などという行為は、きわめて異例の例外的行為である。改修を上手に行うことで、古いものを継承しながら、都市に新鮮な空気を導入しようということで、行政もデザイナーもしのぎを削っているのである。日本にもやっと、そのような段階がやってきて、僕はそんな新しい時代のパイオニアのひとりということになるのかもしれない。そんなプロジェクトの苦労とか、おもしろさを、参加者に語ってもらってまとめたのがこの本である。
 
新国立競技場の話も入っていて、それは新築ではないかと思われるかもしれないが、あのプロジェクトは、神宮の杜のリノベーションだというつもりで、僕らは取り組んだ。外苑の杜という守るべき環境の保存プロジェクトの一部として、建築があるのだという考えである。そう考えると、すべての建築はリノベーションではないかと、僕は思う。敷地はすでにそこにあるので、大地もお隣りさんも、そのままに保存されるわけだから。ゼロからできる新築なんてものはひとつもないのである。あるものを、どう生かすかが、建築という行為の基本なのである。

 

(紹介文執筆者: 工学系研究科 教授 隈 研吾 / 2020)

本の目次

第1章 伝統を受け継ぎ新たな歴史を
隈 研吾 氏 日本の伝統を受け継ぎ 未来へつなげるレガシーを、 建築で体現
・関連企業の取り組み
 
第2章 次代への贈り物
柏木 孝夫 氏 豊かな暮らしの未来像となるスマートコミュニティの実現へ
坂村 健 氏 オープンデータの広がりによる、新しい概念がレガシーに
・関連企業の取り組み
 
第3章 わが国の未来へ
・霞が関の取り組み
・東京都都市整備局/ 門川 大作 京都市長/
吉田 尚人 高知県梼原町長/ 津曲 俊博 熊本市経済観光局熊本城総合事務所
 

関連情報

書籍紹介:
東京2020オリンピック・パラリンピックを読む 第42回『beyond 2020 LEGACY』 (東京都立図書館ホームページ 2018年12月13日)
https://www.library.metro.tokyo.lg.jp/readings/olympic_paralympic/42/

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