森を動かす。世界を担う知の拠点へ

森を動かす。世界を担う知の拠点へ

東京大学総長 濱田純一  
東京大学総長
濱 田 純 一

2009年4月

― 森を動かす

 国立大学法人化後5年が経ち、佐々木元総長による法人化の制度整備、小宮山前総長による法人化のもつ可能性へのチャレンジがなされてきた基盤の上に、いま法人化による改革は、土壌づくりと「木を動かす」段階から、「森を動かす」段階に入ったものと考えています。法人化後の仕組みやその可能性を存分に活用し、東京大学の基底から湧きあがる力を最大化し持続可能なものとしていくという課題が、私の任期中のバックボーンです。
 この課題の確実な実現を目指して、行動シナリオを策定します。


― 世界を担う知の拠点

 東京大学は、国民に支えられる大学として、日本社会に対する直接的な貢献とともに、世界の人々の福利に寄与することを通じて、日本に対する信頼と敬意を高める役割を担います。
 東京大学は、世界の知の頂点を目指して研究水準を一層高めていくとともに、教育を通じて、卒業生が日本と世界の至る所で、東京大学の知を生かして活躍し、人類の未来を支えていくことができる、卓越した知の拠点たるべきであると考えています。


― 「未来への確かな指針」を示す、知の公共性

 時代はいま激しく変動し、将来が見通しにくい状況となっています。こうした時こそ、学術を基盤として「未来への確かな指針」を示し、誰もがより快適に安心して生活できる社会を作るのに寄与することが、東京大学が担うべき「知の公共性」であると考えます。


― 総長のリーダーシップ。強い本部と強い部局、強い個人

 総長のリーダーシップは、教職員学生がもっている力を最大限に引き出しながら大学全体を動かす力にあると考えます。教職員学生一人一人が優れた力を有している東京大学は、しなやかなリーダーシップを発揮するにふさわしい組織です。この考え方を踏まえて、強い個人、強い部局を基盤とした強い本部組織を運営します。


― 「厚み」のある教育。「タフ」な東大生

 教養教育、専門教育ともに、さらなる質の洗練を続け、総合研究大学としての相乗効果を最大限に発揮することによって、教育の内容に「厚み」をつけます。
  知力にくわえて、人間力と国際的な力を鍛え、たくましい交渉力と大胆な行動力を備えた東大生をさらに多く輩出していきます。


― 世界から日本へ、日本から世界へ

 海外からの留学生や研究者の受入れを拡充すべく、体制を強化します。アジアをはじめ世界の人々に対して知の公開を行い、かつ、知の創造のための多様性を拡大します。
 日本人学生のさらなる国際化は決定的に重要です。日本人学生に、語学学習、国際経験、留学生との交流の機会などを、拡大します。


― 二兎を追う

 学術においては、基盤的なディシプリンの教育研究の拡充と、先端的・融合的な教育研究へのチャレンジとに、ともに取組みます。業務運営においては、安定性のある正確さと、柔軟かつ挑戦的であることを、ともに目指します。長所と長所の組み合わせを大胆に試み、その相乗効果を生み出します。


― スリムな組織、スマートな運営、スピーディな業務

 組織改革、業務改革の一層の推進とコンプライアンスの徹底を図ります。スリムな組織による効率的な経営によって教職員の創造的活動のための時間を生み出すとともに、国立大学法人にふさわしい、スマート(賢く洗練された)でスピード感のある業務運営を目指します。


― 財源の多様化と資産の有効活用

 多様な財源の確保とその機動的な運用によって、高度な水準の教育研究活動を確実に担保していきます。施設、敷地等の資産は、計画の最適化とともに、多様な開発手法を用いることによって、有効で迅速な活用を図ります。また、施設等の適正な管理をすすめます。


― 旗艦大学の自負と広範な連携

 東京大学は、日本の知の水準を着実に高めていく重要な責務を負っています。そうした責務は、東京大学自らの誇りある教育研究活動によって、また、多くの大学や産業界、国、自治体等も含めた社会との幅広い連携によって、果たされるものと考えています。

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