令和4年度東京大学学部入学式 祝辞(宗岡 正二 東京大学校友会 会長)

令和4年度東京大学学部入学式 祝辞

只今、ご紹介頂きました宗岡でございます。東京大学校友会を代表致しまして、東京大学に入学された皆様方に、心からお祝いを申し上げたいと存じます。また、入学生のご家族の皆様方にも、重ねてお祝いを申し上げます。本日は誠におめでとうございます。

まずもって、長引くコロナ禍の中で、このように入学式を執り行うことができましたことは、藤井総長はじめ学内の関係者の皆様方のご尽力によるものと心から感謝を申し上げたいと存じます。

新入生の皆さんは、この春の東京大学入学と同時に、全員が東京大学校友会の新たな仲間になられました。校友会会長として、新会員の皆さんを心から歓迎致します。

さて、ここで皆さんに東京大学校友会を少し紹介させて頂きたいと思います。東京大学校友会は、団体会員と個人会員からなる全学同窓組織であります。団体会員は、学部・学科、運動部・サークルなどの同窓会、国内外の各地における地域同窓会等々、310もの団体からなり、そして、個人会員は、すべての在学生、卒業生・修了生と教職員、合わせて20数万人で構成される、極めて大きなグローバル・コミュニティであります。

東大校友会の具体的な活動と致しましては、毎年10月のホームカミングデイを始めとする卒業生向けのイベントのみならず、近年は、入学同期の学部生と卒業生との交流イベントや、就職活動を控えた在学生と卒業生との座談会等、在学生を支援する活動も拡充してきております。こうした東大校友会の世代や国籍を問わないコミュニティで、是非とも、皆さんの在学中ないし留学中、さらには卒業後も長きにわたり、東京大学の仲間との交友を広げて頂きたいと思います。

さて、次に、簡単に私の自己紹介をさせて頂きたいと思います。私は、およそ半世紀前の1970年に農学部農業経済学科を卒業し、鉄鋼メーカーである当時の新日本製鐵に一期生として入社致しました。社長・会長を経て、現在、日本製鉄 相談役を務めております。大学で柔道部におりましたことから、この日本武道館は、学生時代に選手として試合に臨んだ場所でもあり、また、不祥事に揺れた全日本柔道連盟の立て直しを要請され、2013年から4年間、全日本柔道連盟会長を務めた際には、全日本柔道選手権大会を会長として主催致した場所でもあります。このように、この入学式の会場は、私にとりましても誠に馴染みの深い会場であります。

さて、これから皆さんは、教養学部の前期課程に進まれるわけですが、比較的自由な時間のあるこの時期に、リベラル・アーツ、とりわけ教養としての歴史を学んでいただきたい。そして、多くの良書にも親しんで頂きたいと思います。

何千年にも亘る人類の歴史において、我々は多くのことを学んで参りました。先人たちが幾多の問題にどう取り組み、成功したのか、或いは失敗したのか、各々の時代の思想や英知の結集を歴史は私たちに教えてくれています。そして、歴史を深く学べば学ぶほど、人間の本質、人間の強さ・弱さ、賢さ・愚かさ、そしてリーダーに求められる真の資質は人格や胆力であることを私たちに教えてくれています。

欧米社会においてリーダーに求められてきたのは、欧米の騎士道精神の根幹を成す「身分の高い者は身分に応じて果たさなければならない社会的責任と義務がある」という「ノブレス・オブリージュ」の精神であります。

日本においても、新渡戸稲造が、この欧米の「ノブレス・オブリージュ」に通ずる道徳律として、格調高い英文で「武士道」を書き上げ、世界的なベストセラーとなりました。当時のアメリカ大統領セオドア・ルーズベルトは、この「武士道」を読んで、大いに感銘を受け、日露戦争の講和に尽力することとなったと言われております。

新渡戸稲造は樋口一葉の前の5千円札の肖像となっていたことでも有名ですが、1883年に東京大学に入学した、私どもの大先輩で、その後、第一高等学校校長、東大教授を経て、国際連盟事務次長に就かれた真の教育者・国際人であった方です。先ほどの著書「武士道」の中で、新渡戸は、武士道は正義(正しいこと)、勇気(その実行)、仁(慈愛)を中核とした道徳律であり、欧米社会の「ノブレス・オブリージュ」にも通じ、品格の形成を重んじる点で、武士道とキリスト教とは親和性があることを説き明かしたと言われております。

皆さんは、これから皆さんが進む分野において、将来、この国のみならず、国際的なリーダーとなることが大いに期待される人達であります。皆さんには、知力、気力、体力に加え、人としての倫理観をも併せ持った、万国共通の真のリーダーになってもらいたいと思います。

皆さんには、この「ノブレス・オブリージュ」の精神を心に刻み、これからの4年間を過ごして頂きたい。色々な事柄を学び、多くの人と出会い、視野を広げ、知性と感性に加え、品性をも磨いて頂きたい。また、2022年入学同期生同士の温かい仲間意識を醸成して頂きたい。皆さんが素晴らしい東大生、東大卒業生としての人生を送られるよう、東大校友会もお手伝いして参りたいと考えております。

最後になりますが、皆さんの東京大学への入学を心からお祝い申し上げます。皆さんが本日、東京大学に入学できたのも、皆さんの努力だけで掴んだものではありません。これまで導いて頂いた高校までの恩師の先生方、そして、これまで皆さんを育み、支えてくれたご両親・ご家族に感謝するとともに、入学できた幸運にも心から感謝する、そうした謙虚な気持ちを忘れないでもらいたい。そして、皆さんが心豊かな人間に成長して頂くことを心から祈念致しております。改めまして本日は誠におめでとうございます。

令和4年4月12日
東京大学校友会 会長
宗岡 正二

関連リンク

カテゴリナビ
アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる