東京大学発明等取扱規則


東京大学発明等取扱規則
東京大学発明等取扱規則 | |
平成16年4月1日 役員会議決 東大規則第130号 |
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第1章 目的 (目的) |
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第1条 | 本規則は、国立大学法人東京大学(以下「大学法人」という。)の教職員等が行った発明等の取扱いについて規定し、その発明者等としての権利を保障し、発明等の奨励及び研究意欲の向上を図ることを目的とする。 |
(外国出願) | |
第2条 | 本規則は、外国の知的財産権を対象とする発明等に関しても、これを準用する。 |
第2章 定義 (定義) |
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第3条 | 本規則において、次に掲げる用語は、次の定義によるものとする。 |
(1) | 「発明等」とは、次に掲げるものをいう。 |
イ
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特許権の対象となるものについては発明 |
ロ
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実用新案権の対象となるものについては考案 |
ハ
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意匠権の対象となるものについては意匠の創作 |
ニ
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育成者権の対象となるものについては品種の育成 |
ホ
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回路配置利用権の対象となるものについては回路配置の創作 |
(2) | 「発明者等」とは、発明者、考案者、意匠、回路配置の創作者及び品種の育成者の総称をいう。 |
(3) | 「特許等」とは、特許、登録実用新案、登録意匠、登録回路配置及び登録品種の総称をいう。 |
(4) | 「特許権等」とは、特許法(昭和34年法律第121号)に規定する特許権、実用新案法(昭和34年法律第123号)に規定する実用新案権、意匠法(昭和34年法律第125号)に規定する意匠権、種苗法(平成11年法律第43号)による育成者権及び半導体集積回路の回路配置に関する法律(昭和60年法律第43号)に規定する回路配置権並びに外国においてこれらの権利の一に相当する権利をいう。 |
(5) | 「出願等」とは、特許出願、実用新案登録出願、意匠登録出願、回路配置利用権の設定登録又は品種登録出願等の発明等に関して法令で定められた権利保護のために必要な所定の手続を行うことをいう。 |
(6) | 発明等について「実施」とは、特許法第2条第3項、実用新案法第2条第3項、意匠法第2条第3項、半導体集積回路の配置に関する法律第2条第3項及び種苗法第2条第4項に定める行為をいう。 |
(7) | 「職務に関連する発明(以下「職務関連発明」という。)」とは、公的研究資金若しくは大学法人が資金その他の支援をして行う研究等、又は大学法人が管理する施設を利用して行った研究等に基づき、教職員等が行った発明等をいう。 |
(8) | 「その他の発明」とは、教職員等の行った発明等のうち、職務関連発明を除いたものをいう。 |
(9) | 「教職員等」とは、次に掲げるものをいう。 |
イ
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大学法人の役員、常勤教職員、特定有期雇用教職員、再雇用教職員、短時間勤務有期雇用教職員及び特定短時間勤務有期雇用教職員 |
ロ
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イ以外の者であって、職務関連発明につき大学法人との間で契約が締結されている者 |
(10) | 「その他の研究者等」とは、教職員等以外の者であって、教育、研修及び研究を目的として本学が受け入れているものをいう。 |
第3章 権利の承継と帰属 (機関帰属の原則) |
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第4条 | 大学法人は、教職員等の行った職務関連発明の特許等を受ける権利を承継することができる。 |
2 | 大学法人は、職務関連発明について二以上の発明者がいる場合は、教職員等の特許等を受ける権利の持分を承継することができる。 |
3 | 大学法人は、職務関連発明の特許等を受ける権利を承継する必要がないと認めたときは、当該教職員等に帰属させることができる。 |
4 | 発明等を行った教職員等は、大学法人がその特許等を受ける権利を承継しないと決定した後でなければ、当該権利を当該教職員等以外の者に譲渡等処分してはならない。 |
5 | 大学法人は、その他の発明について、必要と認めたときは、当該教職員等の同意を得てその特許等を受ける権利を承継することができる。 |
6 | その他の発明のうち、その特許等を受ける権利を大学法人が承継しないものの当該権利は、当該教職員等に帰属する。 |
7 | 特許等を受ける権利を行使することが社会貢献上適切でないと判断される研究成果については本条の限りではない。 |
(退職後の取扱い) | |
第5条 | 教職員等が大学法人を退職した場合においても、当該発明等が職務関連発明に該当する場合の取扱いは、本規則によるものとする。 |
(守秘義務) | |
第6条 | 大学法人及び教職員等は、当該発明等の内容等の事項について、特許等を受ける権利を確保するために必要な期間中その秘密を守らなければならない。ただし、大学法人と当該教職員等が合意の上公表する場合又は大学法人若しくは教職員等の責によらずして公知となった場合は除く。 |
(その他の研究者等の発明等) | |
第7条 | 大学法人は、その他の研究者等に対し、規則又は受入契約等により、当該研究者等に対し発明等の届出を求めることができる。 |
2 | 前項に該当するその他の研究者等が次の各号の発明等を行った場合は、第15条に準じて所属する部局に届け出るものとする。 (1) 教職員等と共同で行った発明等 (2) 自身の大学での研究成果に関わる発明等 (3) 現在所属する、又は過去に所属した研究室における研究に関する発明等 |
3 | 第1項及び第2項に該当するその他の研究者等は、受入期間の終了後6か月以内に行った発明等についても、前項の届出をするものとする。 |
4 | その他の研究者等が第2項又は第3項の届出を行った発明等については、前条の規定を準用する。 |
5 | 大学法人は、発明者等であるその他の研究者等の同意を得て、特許等を受ける権利を承継することができる。 |
6 | 前項によって権利が承継された場合、教職員等の発明等に準じて、第23条及び第24条の補償金の支払いを行う。 |
(特許等を受ける権利及び特許権等の譲受) | |
第7条の2 | 大学法人は、教職員等及びその他の研究者等から、既に出願等を終えた特許等を受ける権利又は特許権等の譲渡の申出があり、次条に規定する知的財産部が必要と認めた場合、教職員等及びその他の研究者等の同意を得て、その特許等を受ける権利又は特許権等を譲り受けることができる。 |
2 | 大学法人における知的財産等の技術移転に資するため、次条に規定する知的財産部が必要と認めた場合、大学法人は、教職員等及びその他の研究者等以外の者、又は大学法人以外の機関の同意を得て、その特許等を受ける権利又は特許権等を譲り受けることができる。 |
第4章 発明等の処理機関 (知的財産部) |
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第8条 | 本規則に定める事務を行うため、全学組織として知的財産部を設置する。 |
(機関帰属の判断) | |
第9条 | 知的財産部は、教職員等が行った発明等の特許等を受ける権利(第7条第1項又は第2項の規定により、その他の研究者等が届け出た場合を含む。)を大学法人が承継することの要否を決定する。 |
(出願に関するコンサルティング) | |
第10条 | 知的財産部は必要に応じて、発明等の新規性や権利化の範囲等について、発明者等に対するコンサルティングを行う。 |
(譲渡・出願・中間処理・登録・維持等に関する業務) | |
第11条 | 知的財産部は、大学法人がその特許等を受ける権利又は特許権を承継すると決定した発明等について、発明者等からの権利移転手続、出願から登録にいたる手続、権利化後の維持手続の要否を判断し、必要な手続を速やかに実施する。 |
2 | 知的財産部は、前項の手続業務の全部又は一部を第三者に委託することができる。 |
(技術移転に関する業務) | |
第12条 | 知的財産部は、大学法人が所有する特許等を受ける権利及び特許権等について、その活用を推進し、必要と判断したときは、企業等に技術移転を行う。 |
2 | 知的財産部は、技術移転の方法として専用実施権の設定、通常実施権の許諾又は権利の譲渡のうちから、当該発明等が社会に最も寄与すると考えられるものを選択する。 |
3 | 知的財産部は、第1項の業務の全部又は一部をTLO等の第三者に委託することができる。 |
(係争に関する業務) | |
第13条 | 大学法人は、大学法人が所有する特許等を受ける権利及び特許権等について、その権利を守るために法的手段を講じる。 |
(部局の知的財産管理機能) | |
第14条 | 発明者等が所属する部局は、当該発明者等が行った発明等が職務関連発明であるか否かを認定する。 |
2 | 部局は、前項の認定に必要な機関として知的財産室等を設置できる。 |
第5章 処理手続 (発明等の届出) |
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第15条 | 教職員等は、発明等を行ったときは別に定める様式によって、速やかに所属する部局に届け出るものとする。 |
2 | 教職員等は、当該発明等に関連する他の知的財産(職務関連著作、有体物、商標等)がある場合には、前項の届出に付記するものとする。 |
(職務に関連する発明の認定) | |
第16条 | 部局は、前条の規定による届出があったときは、その報告に基づき職務関連発明であるか否かを決定する。 |
2 | 部局は、前項の規定による当該発明等に関する決定を2週間以内に行い、当該教職員等に通知しなければならない。 |
3 | 部局は、第1項の規定による決定後、職務関連発明と判断した発明等及び発明者等が大学法人による権利化を希望する発明等を速やかに知的財産部に案件送付する。 |
4 | 知的財産部は、前項の案件送付があったときは、速やかに当該教職員等に受理した旨を通知しなければならない。 |
5 | 部局は、第1項の規定による決定が2週間以内に行えないときは、知的財産部に決定を委ねることを付記して、知的財産部に案件送付する。 |
6 | 知的財産部は、前項の案件送付があったときは、当該教職員等に受理した旨を通知するとともに、速やかに当該発明等が職務関連発明であるか否かを決定する。 |
7 | 知的財産部は、前項の規定による決定後、速やかに部局及び当該教職員等に通知しなければならない。 |
(権利の承継と譲渡書の提出) | |
第17条 | 知的財産部は、前条第3項による案件送付のあった発明等又は前条第6項において職務関連発明と決定した発明等につき特許等を受ける権利を大学法人が承継するか否かを決定する。 |
2 | 知的財産部は、前項の規定による決定を前条第4項又は第7項による通知後10日(休日を除く。)以内に行い、当該教職員等に通知しなければならない。 |
3 | 教職員等は、当該発明等につき特許等を受ける権利を大学法人が承継すると決定したときは、別に定める様式による権利譲渡書を知的財産部に提出しなければならない。なお、第4条第5項又は第7条第5項の場合においても、大学法人は、教職員等又はその他の研究者等に対し当該権利譲渡書の提出を求めるものとする。 |
(部局決定に対する異議申し立て) | |
第18条 | 教職員等は、第16条による部局の決定に異議があるときは、通知を受けた日から2週間以内に部局に対し、異議を申し立てることができる。 |
2 | 部局は、異議の申し立てがあったときは、当該異議申し立ての当否を決定する。 |
3 | 部局が前項の決定を行ったときは、当該教職員等にその結果を通知する。 |
(知的財産部に対する異議申し立て) | |
第19条 | 発明者等は、第17条第1項による知的財産部の決定に異議があるときは、通知を受けた日から2週間以内に知的財産部に対し、異議を申し立てることができる。 |
2 | 知的財産部は、異議の申し立てがあったときは、当該異議申し立ての当否を決定する。 |
3 | 知的財産部が前項の決定を行ったときは、当該発明者等にその結果を通知する。 |
(知的財産部の承継決定が遅れた場合の特例) | |
第20条 | 教職員等は、第17条第1項の規定による決定が第16条第4項又は第7項による通知後10日(休日を除く。)以内になされない場合、第4条第3項の決定があったものとして自己で権利化を図ることができる。ただし、承継決定を第16条第4項又は第7項による通知後11日以降に行う必要性が生じ、教職員等の同意が得られた場合は、この限りでない。 |
2 | 前項の場合、教職員等は、自己で権利化を図ることを知的財産部に報告するとともに、次条の報告義務を負う。 |
(職務関連発明の報告義務) | |
第21条 | 教職員等は、第4条第3項により特許等を受ける権利を得て、権利化を図るときは、その経過を知的財産部へ報告しなければならない。 |
(迅速な処理を要する場合の特例) | |
第22条 | 教職員等は、研究成果の公表又は発明等の優先権確保の必要がある場合、第17条第2項による通知を受ける前に、迅速な処理を必要とする理由を知的財産部に通知することにより、自らの責任において出願等を開始することができる。その際、当該教職員等は、第4項の手続を阻害することを行ってはならない。 |
2 | 知前項の場合でも、第4条第4項による権利譲渡等処分の禁止、第6条による守秘義務は適用される。 |
3 | 第1項に該当する教職員等は、手続の経過を知的財産部へ報告する義務を負う。 |
4 | 大学法人は、第17条第1項の規定に基づき当該発明等の承継を決定した場合には、第1項の規定により教職員等が出願等を行った発明等につき特許等を受ける権利又は特許権等を承継することができる。 |
5 | 前項の規定による承継を行った場合には、大学法人はその出願等に要した費用を教職員等に支払わなければならない。 |
第6章 補償と実施料等の収入分配 (権利承継による補償の支払い) |
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第23条 | 大学法人は、大学法人が次の各号に掲げる場合において特許等を受ける権利又は特許権等を取得したときは、その特許等を受ける権利又は特許権等に係る発明等を行った教職員等に対し、別に定める補償金を支払うものとする。 |
(1)
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大学法人が特許等を受ける権利を承継し、これが登録になったとき(登録補償) |
(2)
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大学法人が特許権等(出願済みの発明等の特許等を受ける権利を含む。)を譲り受けたとき(譲受補償) |
2 | 第7条の2第2項の規定に基づき、大学法人が、教職員等及びその他の研究者等以外の者、又は大学法人以外の機関から、特許等を受ける権利又は特許権等を譲り受けた場合、前項及び第24条に準じた補償金を支払うことができる。 |
(実施による利益及び実施料等の収入による補償の扱い) | |
第24条 | 大学法人は、大学法人がその所有する特許権等の実施により利益実績を得たとき、又は大学法人が所有する特許等を受ける権利又は特許権等を第三者に実施許諾若しくは譲渡して収入を得たときは、その利益実績又は実施料等の収入に応じて当該発明等を行った教職員等に対し、原則として次2条の規定に従って補償金を支払う。 |
(経費の控除) | |
第25条 | 大学法人は、利益実績又は実施料等の収入から、必要経費を控除して分配金総額を算定する。 |
(分配金総額の分配) | |
第26条 | 大学法人は、前条の規定により算出した分配金総額(年額)を、次に定める割合で分配する。 |
(1)
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分配金総額の40%を当該教職員等に補償金として分配する。 |
(2)
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分配金総額の60%を当該発明等の届出を受理した部局と知的財産部で等分する。 |
2 | 前項第2号において、当該発明等を行った教職員等が複数の部局に所属する場合、事前に発明者等である全教職員等の同意があるときは、当該分配金の支払についてそれぞれの部局に分配することができる。 |
3 | 発明者等は、大学法人に届け出ることにより本条の補償金を受ける権利を放棄し、その補償金の全額を当該発明者等の指定する研究室等へ分配させることができる。 |
(共同発明者に対する補償と分配) | |
第27条 | 第23条及び第24条の補償金は、それを受ける権利を有する教職員等が2人以上あるときは、原則としてそれぞれの持分に応じて支払う。 |
第7章 雑則 | |
(本規則の改廃) | |
第28条 | 本規則の改廃は、教育研究評議会の審議を経て行う。 |
(他機関との契約等) | |
第29条 |
大学法人が他機関と研究に関する契約又は協定を締結するときには、相手機関に本規則の趣旨を説明し、当該契約又は協定を本規則で規定する大学法人及び教職員等の権利を擁護する内容にするよう努めなければならない。 |
2 | 前項にかかわらず、大学法人が本規則と異なる内容の契約又は協定を他機関と締結する場合、教職員等は当該契約又は協定の内容を遵守しなければならない。 |
(既存の契約) | |
第30条 |
本規則の施行前に締結された契約により、大学法人と教職員等、その他の研究者等又はそれ以外の第三者との間で発明等の取扱いが合意されている場合は、当該契約の合意事項に従う。 |
附則 | |
(施行期日) | |
1 | この規則は、平成16年4月1日から施行する。 |
(規則の廃止) | |
2 | 東京大学発明規則(昭和54年4月17日制定)は、廃止する。 |
(経過措置) | |
3 | (削除) |
(経過措置の見直し) | |
4 | (削除) |
附則 | |
この規則は、平成16年9月30日から施行する。 |