令和2年秋の紫綬褒章受章

令和2年秋の紫綬褒章受章

神田秀樹名誉教授、川﨑雅司教授、小林 修教授、後藤由季子教授が令和2年秋の紫綬褒章を受章いたしました。

神田秀樹 大学院法学政治学研究科・法学部 名誉教授

神田秀樹名誉教授

大学院法学政治学研究科・法学部の神田秀樹名誉教授が、2020年11月3日の褒章発令により、紫綬褒章を受章されました。

神田先生は、長年にわたって、商法、会社法、金融法、金融商品取引法および信託法を中心とする法学研究において卓越した研究業績をあげられました。会社法分野では、世界的に著名な研究者たちと複数の共同研究を行い、機能に着目した理論的研究を深化させ、日本法の枠を超えた国際的な会社法の基礎理論の発展に大きく寄与しつつ、日本の会社法とその理論を広く世界に発信されました。また、神田先生は、金融商品取引法の構造を理論化・体系化し、立法に多大の影響を与えられ、多数の論文や注釈書などの公表・公刊を通じて、理論および実務を主導されました。さらに、有価証券の管理および有価証券取引のペーパーレス化に早くから着目し、その法規制のあり方について、金融監督法と会社法・有価証券法の双方に対する深い造詣に基づき、独創的な視点から考究されました。神田先生のご知見は、日本の証券決済法制の整備にあたって理論的な支柱になっただけでなく、Hague Securities Convention や UNIDROIT Convention on Substantive Rules for Intermediated Securitiesという2つの国際条約の成立に対しても多大な影響を与えることになりました。 学会活動としては、日本私法学会、金融法学会、信託法学会、および、法と経済学会の理事長または会長としてそれぞれの学会の活動を牽引され、学会の水準を高めることに尽くされました。 このように、神田先生は、卓越した研究業績をあげられ、ご研究に基づくご知見を、法制審議会や金融審議会等における活動などを通じて広く社会に還元されました。

神田先生のこのたびのご受章を心よりお喜び申し上げるとともに、益々のご健勝とご活躍を祈念いたします。

(大学院法学政治学研究科・法学部 神作裕之)

川﨑雅司 大学院工学系研究科・工学部 教授

川﨑雅司教授

このたび、大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター・物理工学専攻の川﨑雅司教授が、2020年11月3日の褒章発令において、材料科学研究功績により紫綬褒章を受章されました。

川﨑教授は、長年にわたって材料科学の教育研究に従事され、物質化学・電子デバイス工学・物性物理学との境界領域において活発な研究を展開してきました。対象とした主な物質は金属酸化物であり、大学院生時代に発見された銅酸化物系の高温超伝導体を研究対象として以来、一貫して酸化物の高品質薄膜や界面の作製技術を高度化し、界面に発現する新物性や新機能の開拓において世界をリードする成果をあげつづけています。特に本分野で影響力の高い成果は、酸化物の単結晶基板表面を原子レベルで平坦化し、原子層ごとに一層ずつ薄膜を作製する技術の開発です。これにより、酸化物エレクトロニクス分野が創始されました。また、化粧品の白色顔料である酸化亜鉛というありふれた材料において、室温励起子紫外レーザー発振と発光ダイオードの実証を行いました。さらに、多品種の薄膜試料群を一括に合成・評価するコンビナトリアル技術を開発して研究を高効率・高速化しています。最近は、表面界面の巨視的な量子現象に注力し、電界効果による絶縁体から超伝導体への相転移や、酸化物における量子ホール効果の実現に初めて成功しています。特に、酸化亜鉛薄膜の清浄度は極限的に高められ、擾乱に対して堅牢なトポロジカル量子計算を可能にすると理論的に予言されている特殊な量子ホール状態が実現されました。このような研究活動を通して、各界で活躍する多くの若手人材を育成しています。また、修博一貫の統合物質科学リーダー養成プログラム(MERIT)を指揮して本学の大学院教育改革においても大きな貢献をされています。

川﨑教授の今回のご受章は、物質科学における大きな研究功績に加え、人材育成や教育改革におけるリーダーシップが高く評価されたものです。このたびのご受章を心よりお喜び申し上げるとともに、川﨑先生のますますのご健勝とご活躍を祈念いたします。

(附属量子相エレクトロニクス研究センター 岩佐義宏)

小林 修 大学院理学系研究科・理学部 教授

小林 修教授

本研究科化学専攻の小林修教授が,2020年11月3日の褒章発令において,学術・芸術・スポーツ分野で業績の著しい方を対象とする紫綬褒章を受章されました。心よりお祝い申し上げます。

小林教授は,永年にわたって有機化学・有機合成化学の発展に尽力されてきました。地球環境との調和を志向したグリーン・サスティナブルケミストリーの実現を目指し,医薬品や化成品等の生産過程で大量に排出される廃棄物を,有機合成化学の新手法によって大幅に削減するための研究を進めてこられました。主な研究としては有機溶媒に代わる反応媒体として水を用いる有機化学・有機合成反応の研究,リサイクル可能な不均一系触媒の開発,有機分子の基本骨格を効率よく構築するための新反応・新触媒の開発,反応容器に原料を流通させ連続的に合成を行うフロー精密合成法の研究等が挙げられます。特にフロー精密合成法を我が国の将来を担う鍵技術として大きく発展させるべく,基礎研究の充実と産業界への橋渡し,世界で活躍できる次世代の人材を育成するための教育,啓蒙にご尽力されています。

小林教授の研究は,理学の理念に基づく基礎研究ですが,学術界のみならず産業界からも大きな注目を集めています。また,同教授は,国内はもとより国際的にも高い評価を受け,米国化学会賞,独フンボルト研究賞,ハミルトン賞等を受賞しています。今回の受章を契機に,益々の御活躍を祈念いたします。

(大学院理学系研究科・理学部 菅裕明)

後藤由季子 大学院薬学系研究科・薬学部 教授

後藤由季子教授

薬学系研究科の後藤由季子教授が、2020年11月2日の褒章発令において、学術・芸術・スポーツ分野で業績の著しい方を対象とする紫綬褒章を受章されました。

後藤教授は、永年にわたって生命科学の教育、研究に務められ、特に、「MAPキナーゼ経路」の同定ならびに神経幹細胞運命制御機構の解明、に多大な貢献をされました。生命体の基本構成単位である細胞は、細胞外から増殖因子、分化因子などの情報を受け取って細胞内の核(DNA)へと情報を伝えることで、自身の機能・性質の変化、増殖や生存などの運命変化、の決定を行います。「MAPキナーゼ経路」はこの情報伝達を司る主要な経路です。「MAPキナーゼ経路」の同定は、生命体の成り立ちを理解するという生命科学の基礎として根源的な発見であったと同時に、「MAPキナーゼ経路」の異常活性化が癌化につながることから医学的社会的インパクトも大きなものでした。また後藤教授は、細胞運命制御に魅せられて幹細胞が組織を作り上げる過程を研究し、脳の幹細胞である「神経幹細胞」の巧妙な運命制御機構をいくつも明らかにされました。その中でも、成体(大人)の脳に存在する神経幹細胞の胎生期の起源を明らかにした発見は、アイデアの意外性・独創性、実験的証明の明確さが世界的に高く評価されています。後藤教授は、現在も脳発生の基本原理とその異常による脳疾患への関連を精力的に研究されています。そして神経科学、幹細胞学の分野で主要な国際学会のプレナリー講演や国際誌のアドバイザーを数多く務めるなど国際的な活躍をされています。

後藤教授の今回のご受章は、基礎学術への国際的貢献と種々の学術界への貢献を高く評価されたものです。御受章を心よりお祝い申し上げますとともに、今後の益々の御活躍を祈念いたします。

(大学院工学系研究科・工学部 平林祐介)

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