令和2年度文化勲章受章

令和2年度文化勲章受章

久保田淳名誉教授が、令和2年度文化勲章を受章いたしました。

久保田淳 大学院人文社会系研究科・文学部 名誉教授

久保田淳名誉教授

このほど久保田淳先生が、文化勲章を受章されました。学問的著作、学界・社会への貢献、後進の指導、いずれにおいても傑出した業績を挙げてこられた先生の足跡を思いつつ、ご受章を心からお慶び申し上げます。

日本文学における幅広い久保田淳先生の学問的業績の中でも、とくに主力を注がれたのが、和歌文学の研究です。なかでも和歌が最も盛んであった中世の、とりわけ表現が研ぎ澄まされた『新古今和歌集』の時代に関心を持ち続けてこられました。

東京大学着任後まもなく不惑の年に上梓された『新古今歌人の研究』は、西行・藤原俊成・藤原定家・藤原家隆・慈円・藤原良経ら新古今時代を代表する六人の歌人が、相互に影響を与え合い、切磋琢磨する動態を精彩に描き出しています。先生の学問の真骨頂は、このような文学者における相互関係の解析に端的に表れます。一人一人の歌人を細やかに追求する分析力と、それを総合し、群像として描き出す構想力がなければ不可能な仕事と言えます。さらに東京大学退官時に出された『中世和歌史の研究』は、広く平安時代後期から中世の歌人群へと領域を広げておられる大著です。

個別の歌人への探求も深められ、中でも前人未到と呼びたくなるのが、藤原定家の研究です。時代の文化の中で定家を浮かび上がらせた『藤原定家とその時代』の研究書があり、幾度も版を重ねた『藤原定家』の入門書があります。そして難解を極める定家のすべての歌に注釈を施した『訳注藤原定家全歌集』上下二冊は、定家に関心をもつ人々への福音となりました。『新古今和歌集全注釈』全六巻と合わせて、現代における注釈の偉業といえます。

先生の業績のもう一つの特徴は、膨大な書籍の編集・監修に示されています。代表的なものは、四人の編集委員のうちの一人として参画された岩波書店の「新日本古典文学大系」全百冊であり、また今も刊行中である「和歌文学大系」の単独監修ですが、それでも一部に過ぎません。先生の学問が常に公的なものを目指されている証しです。圧倒的な質と量を誇るご業績にとどまらず、その点もご受章にふさわしいといえるでしょう。

先生は今年も『藤原俊成 中世和歌の先導者』の緻密な伝記研究を公にされるなど、今も旺盛な執筆活動を進めておられます。いつまでもお元気で活躍されることをお祈りしております。

(大学院人文社会系研究科・文学部 渡部泰明)

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