令和3年度文化功労者顕彰

令和3年度文化功労者顕彰

青柳正規 名誉教授、川合眞紀 名誉教授、中村祐輔 名誉教授が、文化功労者として顕彰されました。

青柳正規 人文社会系研究科・文学部 名誉教授

青柳正規名誉教授
(提供:多摩美術大学)

青柳正規名誉教授が、西洋美術史と西洋古典考古学の分野における業績により、令和3年度の文化功労者に選出されました。心よりお祝い申し上げます。

青柳教授は、1972年に本学文学部に助手として着任するや、ヴェスヴィオ山の噴火で埋もれた有名な古代都市ポンペイの遺跡で発掘調査を行い、その成果『エウローパの船の家』(1977年、地中海学会賞受賞)によって輝かしいスタートを切りました。その後、1985年に助教授として本学文学部に再び着任し、1991年に教授に昇任されてからは、人文社会系研究科長、副学長も務められました。本学退職後は、国立西洋美術館館長、国立美術館理事長、文化庁長官を歴任され、現在は橿原考古学研究所所長や多摩美術大学理事長など多くの要職につき、活躍されています。その間、数々の受賞に加え、紫綬褒章、瑞宝重光章も受章されました。

多忙な中、イタリアにおける古代ローマ時代の別荘遺跡の発掘調査も、シチリア島アグリジェント、イタリア中部のタルクィニア、2002年以降はナポリ近郊ソンマ・ヴェスヴィアーナにおける学術領域横断的な発掘を現在にいたるまで主導し、研究の最前線を切り開くと同時に、数々のご著書や展覧会によって古代ローマ文明を広く日本に紹介しました。それらの功績により、イタリア共和国功労勲章ウッフィチャーレ章、ポンペイ名誉市民、アメデオ・マイウーリ国際考古学賞ほか、いくつもの賞をイタリアから贈られています。

授業や発掘を通して、また真に広範な学際的研究によって、学生や後進の研究者たちを啓発し続けるだけでなく、すでに昭和時代に「我が家ではママレモン(当時有名だった食器用洗剤)のことをパパレモンと呼ぶ」とおっしゃりその通り実践するなど、学術のみならず人生に対する学生たちの意識を揺さぶりました。既成概念に囚われない自由な発想で、今後もますますご活躍されることをお祈りいたします。

(人文社会系研究科・文学部 芳賀京子)

川合眞紀 新領域創成科学研究科 名誉教授

川合眞紀名誉教授

本研究科(基盤科学研究系物質系専攻)名誉教授の川合眞紀先生が2021年度の文化功労者に選ばれました。心からお祝い申し上げます。

川合先生は1980年に本学理学系研究科博士課程を修了されて、東京工業大学工業材料研究所客員教授,理化学研究所主任研究員などのご経歴を経て,2004年に本学新領域創成科学研究科教授に就任されました。2016年に本学を御退任後、現在まで自然科学研究機構の分子科学研究所の所長を務められています。 また、これまでに理化学研究所理事、日本学術会議幹事、日本化学会会長の要職を歴任され、2021年には、国連「10人委員会」メンバーになっておられます。

私たちが化学反応とよぶ現象に対して、これまでは原子の組み合わせがかわることを想像して、化学反応式で表す理解をしてきましたが、川合先生のご研究の成果により、状況が一変しました。先生は、走査型トンネル顕微鏡を用いる新しい手法によって、一つ一つの分子や原子が、電子の授受をしながら、くっついたり離れたりするところを、固体表面上で直接観察することに成功され、その結果、様々な反応のなぞを解明してこられました。また、固体表面上で、自然界で起こりにくい反応の制御や集合体構造の創成にも成功されるとともに、後進の育成にも力を注がれました。このように、表面科学の学問分野を築いてこられたことは、エネルギー問題やカーボンニュートラル政策など、今後人類全体の課題解決に資するに違いありません。

先生は、猿橋賞、ロレアル-ユネスコ女性科学賞受賞、日本学士院賞受賞など数多くの賞を受賞されており、2017年には、「固体表面における触媒反応に関する研究」および「走査トンネル顕微鏡を用いた単分子化学反応の実現」の研究成果に対して、紫綬褒章が贈られております。 このたびさらに,文化功労者として顕彰されたことは、本学にとっても大きな名誉であり、心からお喜び申し上げます。

(新領域創成科学研究科 竹谷純一)

中村祐輔 医科学研究所 名誉教授

中村祐輔名誉教授

このたび、本学名誉教授の中村祐輔先生が、遺伝医学・ゲノム医学分野における多大な功績により2021年度の文化功労者に選ばれました。

中村先生は1977年に大阪大学医学部をご卒業され、外科医としての研鑽を積んだのちに同大学分子遺伝学教室にて遺伝子研究の道に進まれました。1984年米国のユタ大学に留学し同大学人類遺伝学教室助教授を務めたのち、1989年に帰国され癌研究所生化学部部長を経て、1994年に本学医科学研究所教授にご就任されました。この間、ヒトゲノム地図の作成に役立つ遺伝子多型マーカーを多数同定し、遺伝医学の発展に貢献されました。また、遺伝性の腫瘍疾患の一つである家族性大腸腺腫症の原因遺伝子を発見し、この原因遺伝子が家族性大腸腺腫症だけでなく、一般の大腸ポリープや大腸がんをおさえる腫瘍抑制遺伝子であることを明らかにしました。1995年からは同研究所ヒトゲノム解析センター長として、日本のヒトゲノム研究を牽引されました。2003年から国際ハップマップ・プロジェクトに参画され、ヒトゲノムのなかで個人によって異なる配列を多数同定して個人差を明らかにする研究の基礎を築きました。また、文部科学省の「オ―ダーメイド医療実現化プロジェクト」のリーダーとして、バイオバンクジャパンの創設にご尽力されました。そして多くの共同研究により、心筋梗塞や慢性関節リウマチ、糖尿病など様々な疾患のリスクとなる遺伝的要因を発見し、ゲノム医学の発展に大きく貢献されました。2012年からシカゴ大学医学部腫瘍内科教授、兼個別化医療センター・副センター長を務めたのち、2018年からはがん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長としてご活躍されています。

これまでに高松宮妃癌研究基金学術賞、武田医学賞、慶應医学賞、日本癌学会吉田富三賞、クライベイト引用栄誉賞など数々の賞の受賞に輝いたほか、2004年には紫綬褒章も受章されています。このたびの中村先生のご顕彰を心からお慶び申し上げるとともに、先生の益々のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。

(医科学研究所 古川洋一)

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