令和4年春の紫綬褒章受章

令和4年春の紫綬褒章受章

野崎 京子教授、玄田 有史教授が令和4年春の紫綬褒章を受章いたしました。

野崎 京子 大学院工学系研究科・工学部 教授

野崎京子教授

このたび、大学院工学系研究科化学生命工学専攻の野崎京子教授が、学術・芸術・スポーツ分野における優れた業績をあげた方に授与される紫綬褒章を受章されました。

野崎教授は、有機合成に係る分野において、持続可能性社会に貢献する革新的な触媒ならびに触媒反応を開発し、有機合成の新しい手法を開発するとともに、これらの手法を高分子合成に適用し、有機合成化学、高分子化学の分野の発展に多大な貢献をなされました。

医薬・農薬などの合成に重要な鏡像異性体のうちの一方だけを作り分ける不斉合成の分野において、エチレンやプロピレンなどのオレフィン類に一酸化炭素を反応させ炭素を付加する不斉ヒドロホルミル化反応を実用レベルで達成する触媒を世界で初めて開発されました。さらに、この触媒反応をプロピレン、スチレンなどと一酸化炭素との高分子合成、すなわち不斉重合に展開され、高分子鎖中の不斉炭素がほぼ完全な立体選択性をもって組みあがることを世界で初めて示すことで、高分子合成の新分野を拓かれました。さらに、二酸化炭素の水素化によるギ酸塩基の合成やブタジエンと二酸化炭素の共重合による高分子合成など、二酸化炭素の固定化反応を多数開発されました。これらは多大な注目を集め、世界的に多数の研究者により参考とされ、研究の道標とされています。加えて、それまで不可能と考えられていた極性モノマーとエチレンやプロピレンとの共重合を実現する新しい触媒を開発されました。これらにより得られた新素材は、異素材との接着に優れた高機能樹脂としての利用にとどまらず、易分解性材料として持続可能な社会の構築や環境問題の解決への貢献が期待されています。

これらの優れた研究業績に対して、2013年度高分子学会賞、2020年度日本化学会賞、2021年度ロレアルーユネスコ女性科学者賞、2021年度アメリカ芸術科学アカデミー外国人名誉会員などの国内外の著名な賞を多数受賞されています。

この度の受章を心よりお喜び申し上げるとともに、今後の益々のご活躍を祈念いたします。

(大学院工学系研究科・工学部 山東 信介)

玄田 有史 社会科学研究所 教授

玄田有史教授

このたび、社会科学研究所の玄田有史教授が、学術・芸術・スポーツ分野で著しい業績をあげた功労者に授与される紫綬褒章を受章されました。

玄田教授は、労働経済学の分野において、1990年代のバブル経済崩壊後の長期不況の中で深刻化した若年者雇用の実態分析を中心に、平成期の日本労働市場の構造的特性の解明に向け、雇用創出・消失分析などの多角的な実証研究に取り組んでこられました。そして置換効果、世代効果、若年無業者(ニート)など新たな視点を提示し、斯学の発展に多大な貢献をされました。また、玄田教授は、2000年代初頭までは利用可能性が非常に限られていた政府統計の個票データについて、政府の研究所の研究官として、あるいはデータの試行的提供などの機会を駆使して、その活用の先駆けとなっていらっしゃいました。これにより労働経済学分野において数々の重要な事実発見を行ったのみならず、個票データによる分析の重要性を示し、若い世代の日本の労働経済学者による研究発展の道筋も拓きました。また、近年では東日本大震災が就業にもたらした影響についての実証研究を行い、震災記録の雇用面からの継承にも寄与しています。

これらの優れた業績により、これまでにも2002年度にサントリー学芸賞(政治・経済部門)、日経・経済図書文化賞、2004年度に労働関係図書優秀賞、2005年度にエコノミスト賞、2009年度に円城寺次郎記念賞、2012年度に日本経済学会・石川賞、2015年度に冲永賞などを受賞されています。また、玄田教授による、バブル崩壊が若年の雇用に与えた影響についての指摘は、自己責任論に偏りがちだった若年雇用問題のとらえ方を根本から変え、若年雇用対策としての地域若者サポートステーションの設置、無業者へのアウトリーチ(訪問支援)、就職氷河期世代支援プログラムなどの政策立案にも活かされています。

この度の受章を心よりお喜び申し上げるとともに、今後の益々のご活躍を祈念いたします。

(社会科学研究所 近藤 絢子)
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