令和4年度文化功労者顕彰

令和4年度文化功労者顕彰

関根清三 名誉教授、吉田稔 教授が、文化功労者として顕彰されました。

関根清三 大学院人文社会系研究科・文学部 名誉教授

関根清三名誉教授

このたび、本学名誉教授の関根清三先生が、令和4年(2022年度)の文化功労者に選定されました。

関根先生は、本学文学部および大学院人文科学研究科(現・人文社会系研究科)の倫理学研究室で学士課程から博士課程まで学ばれた後、ドイツのミュンヘン大学に留学され、同大学で学術助手も務められました。1985年に北海道大学の助教授にご着任、1988年から本学に移られ、1994年に教授にご昇任ののち、2016年のご定年まで本学で長く教鞭を執られました。現在は、聖学院大学特命教授を務めておられます。

先生のご専攻は倫理学・聖書学であり、その特徴は、堅実な文献学的研究を土台にしつつ、現代の解釈学的方法を駆使して、対象となるテクストを綿密かつ柔軟に読み解くスタイルにあります。先生の御業績として真っ先に挙げられるのは、国際的にも高く評価されている画期的な旧約聖書解釈ですが、成果はそれのみに留まりません。先生のご研究は、古今東西にまたがる極めて該博な教養と、一貫した実存的関心に裏打ちされています。旧約聖書を対象とする際も、あるいは内村鑑三や和辻哲郎などのテクストに対峙する際も、先生の眼差しは常に、信仰と倫理の本性へ、そして両者の根源的なかかわりへと向かい、そこで粘り強く思索が重ねられています。先生のご論考が類い稀な迫力を有し、現在を生きる私たちに大きな示唆をもたらし続けるのは、主としてこの点によると言えるでしょう。

関根先生は、以上の独創的なご業績により、第7回和辻哲郎文化賞のほか、第88回日本学士院賞、第73回毎日出版文化賞など、数々の賞を受賞されています。また、これまで、日本旧約学会会長、日本倫理学会会長などを歴任し、学界の発展に大きく寄与されています。このたびの関根先生のご顕彰を心からお慶び申し上げるとともに、現在も旺盛な研究活動を続けておられる先生の、益々のご健勝とご活躍を祈念いたします。

(大学院人文社会系研究科・文学部 古田徹也)

吉田稔 大学院農学生命科学研究科・農学部 教授

吉田稔名誉教授

このたび本研究科教授の吉田稔先生が、化学生物学に関する顕著な業績により、2022年度の文化功労者に選出されました。吉田先生は昭和56年に本学農学部農芸化学科をご卒業後、同大学院、本学農学部助手を経て、平成7年に同助教授となられました。その後平成14年に理化学研究所に異動され主任研究員に着任、また同29年より本学農学部教授を分任、令和4年より理化学研究所研究政策審議役にご就任されています。

この間、先生は一貫して新規生理活性物質の探索とその化学生物学に関する研究・教育に取り組まれ、基礎と応用の両面から数々の業績を挙げられました。その代表的なものとして、白血病細胞分化誘導物質トリコスタチンAが世界初の特異的ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であることの解明、抗がん活性物質レプトマイシンの標的分子解明からタンパク質核外輸送シグナル受容体の発見、世界初のスプライシング調節薬スプライソスタチンの創成などが挙げられます。これらを通じヒストンアセチル化によるエピジェネティクスの制御機構、タンパク質核-細胞質間輸送制御機構、スプライシング調節とイントロン配列の持つ隠された機能などを明らかにするとともに、全く新しい抗がん剤開発の基礎を作られ、現在ではその一部がすでに実用化されています。また、新規活性物質の発見と作用機序研究を行うための大規模高速スクリーニングの基盤設備を構築するなど、わが国全体のアカデミア創薬研究を牽引して来られました。一方、日本農芸化学会会長、日本がん分子標的治療学会理事長など多くの学会の要職を歴任するなど、学術の発展と普及にも大きく貢献されています。

先生はこれまで、バイオインダストリー協会賞、日本農芸化学会賞、日本学士院賞など数多くの賞を受賞されています。このたびさらに文化功労者として顕彰されたことは、まことに先生のご業績にふさわしく、心よりお祝い申し上げるとともに、先生の益々のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。

(大学院農学生命科学研究科・農学部 有岡学)
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