令和5年春の紫綬褒章受章

令和5年春の紫綬褒章受章

三浦 篤 元教授、苅谷 剛彦 名誉教授、高津 聖志 名誉教授、岡部 徹 教授が令和5年春の紫綬褒章を受章いたしました。

三浦 篤 大学院総合文化研究科・教養学部 元教授

三浦 篤元教授

このたび、大学院総合文化研究科・教養学部 超域文化科学専攻元教授の三浦篤先生が、2023年春の紫綬褒章を受章されました。

紫綬褒章は、科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術分野における優れた業績等に対して授与されるものです。

三浦篤先生は、1993年に本学教養学部に助教授として着任以来、本学部と本研究科において教育・研究活動に従事されました。1997年にフランスのパリ第4大学にて博士号を取得、2006年に本研究科教授となられましたが、前期課程ではフランス語部会(現フランス語・イタリア語部会)に、後期課程においては当初は教養学科比較日本文化論分科、2011年の改組後は超域文化科学分科比較文学比較芸術コースに、そして大学院では超域文化科学専攻比較文学比較文化研究室に所属され、多くの学生を指導されてきました。

三浦先生の主要な研究は、フランスを中心とする近代西洋美術史と日仏美術交流史です。当該分野の第一人者として国内外で幅広い活躍をされていることは、三浦先生がパリ第4大学招聘教授(2007年)、パリ高等師範学校招聘教授(2013年)、パリ社会科学高等研究院招聘教授(2014年)として教壇に立っておられることからも知ることができます。

三浦先生の代表的業績としては、2006年に出版された単著『近代芸術家の表象―マネ、ファンタン=ラトゥールと1860年代のフランス絵画―』(2007年、第29回サントリー学芸賞芸術・文学部門受賞)、2021年に名古屋大学出版会から上梓された『移り棲む美術―ジャポニスム、コラン、日本近代洋画』(同年、第34回和辻哲郎文化賞一般部門と第72回芸術選奨文部科学大臣賞評論等部門をダブル受賞)といった学術的著作が挙げられます。また、『まなざしのレッスン 1西洋伝統絵画』(2001年)、『まなざしのレッスン 2西洋近現代絵画』(2015年)といった日本における西洋美術史教育に大きな貢献した著作もあります。さらに、カタログが第12回倫雅美術奨励賞美術史部門を受賞した『ラファエル・コラン』展(1999年~2000年)をはじめとする数多くの展覧会において監修、学術協力をされ、日本における美術普及活動を牽引されました。『パリ・オペラ座--響き合う芸術の殿堂』展(2022年~23年)においてはジャンルを超えた芸術の照応としてのパリ・オペラ座をテーマに展覧会を監修され、ひろく芸術に対して一般の関心を高める活動をされました。

2015年にフランス共和国芸術文化勲章 シュヴァリエを受勲されたのは、ご専門の研究活動のみならず、日仏美術交流の功績が認められてのことだったことも、三浦先生の幅広いご活躍を顕著にあらわしています。さらに、理事長を務めたジャポニスム学会、代表委員を務めた美術史学会、現在副会長を務めておられる国際美術史学会、等々、諸学会の運営において中心的な役割を果たしておられ、ご自身の活躍はもとより当該分野の学術発展と後進の指導に大きく寄与されています

この度のご受章を心よりお祝い申し上げますとともに、先生のご健勝と益々のご活躍を祈念いたします。

(大学院総合文化研究科・教養学部 寺田 寅彦)

苅谷 剛彦 大学院教育学研究科・教育学部 名誉教授

苅谷 剛彦名誉教授

本学教育学研究科の苅谷剛彦名誉教授が紫綬褒章を受章されました。苅谷名誉教授は本学教育学研究科・教育学部比較教育社会学コースで長年教鞭をとられ、その後にオックスフォード大学に移り、現在も同大学で教授として活躍されています。

苅谷名誉教授の研究は多岐にわたり、複数の領域で教育社会学のマイルストーンとなるような業績を量産されてきました。その影響は隣接諸分野にも及んでおり、社会学・経済学・教育学などでも広く参照されています。

第一に、教育社会学の分野において「学校から職業への移行」研究の先鞭を付けた一連の研究があります。これらは内外のトップジャーナルに掲載され広く引用されています。第二に、教育と不平等、教育政策・教育改革の社会学的研究で、当時まだ社会的に十分な認知を受けていなかった教育における出身階層による不平等に焦点を当て、各種調査データや政策文書の分析、あるいは比較社会学的検討を通じて、教育政策と教育の不平等との関係を独自の視点から明確に提示しました。その研究成果は平成13年大佛次郎論壇賞奨励賞(『階層化日本と教育危機』)、平成17年サントリー学芸賞(『教育の世紀』)を受賞しています。第三に、日本の近代化と教育の研究です。後発型の近代化を遂げた日本における知識人や政策決定者の認識として「キャッチアップ型近代化」の意識を見出し、その終焉がその後の教育政策や時代認識に及ぼした影響を歴史知識社会学的に明らかにしています。その研究の集大成である『追いついた近代 消えた近代』は、平成31年毎日出版文化賞を受賞しています。

以上のような傑出した研究業績に加えて、多数の著書や様々なメディアを通じて社会的発信を続けておられ、人文社会科学の価値も広く示してくださっているように思います。

こうした苅谷名誉教授のご活躍を後ろからずっと見てきた同じ教育社会学者の一人として、このたびの受章を我がことのようにうれしく感じました次第です。心よりお慶び申し上げます。

(大学院教育学研究科・教育学部 中村 高康)

高津 聖志 医科学研究所 名誉教授

このたび、医科学研究所の高津聖志名誉教授が、学術・芸術・スポーツ分野で著しい業績を挙げた方に授与される紫綬褒章を受章されました。

高津名誉教授は、長年にわたり免疫学の教育と研究に従事され、免疫学の発展のみならず、医薬品の創出を通して国民の健康増進にも多大な貢献をされてきました。

喘息をはじめとするアレルギー性疾患では、白血球の一種である好酸球が増加し、過剰に活性化され、病態の形成や増悪に関与しますが、好酸球の活性化メカニズムは不明でありました。高津名誉教授は、体内で好酸球を活性化させる生理活性物質インターロイキン5(Interleukin 5, IL-5)とその受容体を世界で初めて発見し、その作用メカニズムを解明しました。この研究成果は、サイトカインの発見と作用機構の解明を通して免疫学に貢献したばかりでなく、IL-5を標的とすることで好酸球の活性化を制御し得るという新たなアレルギー性疾患治療戦略の可能性を示し、新規医薬品創出への道を開くことになりました。現在までに、IL-5の作用を阻害する抗体は、難治性の喘息患者に対する新たな治療選択肢となったばかりでなく、指定難病である好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の難治症例に供される初めての医薬品となりました。今後さらに適応疾患が拡大すると予想されております。このように、高津名誉教授は基礎医学での成果を臨床応用にまで発展させた数少ない研究者のひとりといえます。

これらの優れた研究業績により、平成4年に持田記念学術賞、平成15年に野口英世記念医学賞、平成19年に国際好酸球学会よりPaul Ehrlich Awardを受賞されています。また、平成30年に喘息に対する抗体医薬品の創出により第2回バイオインダストリー大賞、令和2年に文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を授与されています。

高津名誉教授は、以上のような成果を通して学問の発展や産学連携に貢献されただけでなく、日本免疫学会の理事長を務められるなど、学会活動や若手研究者育成にも多大な貢献をされました。

この度の高津名誉教授のご受章を心よりお祝い申し上げますとともに、先生のご健勝と益々のご活躍を祈念いたします。

(医科学研究所 三宅 健介)

岡部 徹 生産技術研究所 教授

岡部 徹教授

生産技術研究所 所長の岡部 徹 教授が、学術・芸術・スポーツ分野で著しい業績を挙げた方に授与される紫綬褒章を受章されました。心よりお慶び申し上げます。

岡部教授は、これまで、チタンをはじめとするレアメタルの新規製造法ならびにリサイクル技術の開発研究を精力的に推進しておられます。例えば、チタン(Ti)のスクラップを、鉱石から作るバージン材(スポンジTi)よりも高純度のチタンへと再生する“アップグレードリサイクル”プロセスを世界に先駆けて提案されました。また、有害な廃液を出さずに永久磁石中のレアアースを選択的に分離・回収する新技術や、効率良く高純度かつ均一な粒度のレアメタルの粉末を製造する新手法、難溶性の白金族金属(PGMs)を、塩酸などで効率良く溶解する新技術など、既存の冶金学的技術の延長線上に無い、新しいアプローチを提案する、世界最高水準の研究成果をあげてこられました。

上記業績により、多数の学術論文賞 (10回)、市村学術賞・功績賞(平成18年)、The ASM Henry Marion Howe Medal(米国ASM年間最優秀論文賞, 平成25年)、本多フロンティア賞(平成28年)、報公賞(平成28年)、文部科学大臣表彰 科学技術賞 研究部門 (令和3年)、東レ科学技術賞(令和3年度)など多数の賞を受賞されました。

さらに岡部教授は、広い視野でレアメタルの普及に多角的に取り組み、アカデミアとして新たな産官学連携活動、国際ワークショップを多数、主宰し、レアメタル研究の海外への発信、一般社会に対する情報発信活動のフロンティアを自ら切り開き世界をリードしてきました。一連のアウトリーチ活動に関する業績に対し、平成31年度 文部科学大臣表彰 科学技術賞 理解増進部門が授与されました。また、電子部品スクラップ等の都市鉱山からレアメタルを環境調和型の方法でリサイクルする先駆的な研究活動および長年の取り組みが評価され、2021年にはノルウェー科学技術大学(NTNU)から名誉博士号を授与されました。

岡部教授のこの度の受賞は、以上のレアメタルの製錬やリサイクル分野の研究、教育、啓発活動の功績が高く評価されたものです。

この度の岡部教授のご受章を心よりお祝い申し上げますとともに、先生のご健勝と益々のご活躍を祈念しております。

(生産技術研究所 大内 隆成)
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