令和5年度文化功労者顕彰

令和5年度文化功労者顕彰

宮園浩平 名誉教授、吉川洋 名誉教授、河口洋一郎 名誉教授、河岡義裕 名誉教授、荒川泰彦 名誉教授が、文化功労者として顕彰されました。

宮園浩平 大学院医学系研究科・医学部 名誉教授

宮園浩平名誉教授

この度、宮園浩平卓越教授が、がんの生化学・分子生物学分野における功績が認められ、令和5年度の文化功労者に選出されました。心よりお祝い申し上げます。

宮園先生は1981年に東京大学医学部をご卒業後、本学附属病院などで血液内科の臨床と研究に従事し、1985年からスウェーデンウプサラ大学医化学講座、その後、ルードヴィヒ癌研究所のCarl-Henrik Heldin教授の研究室に留学されました。1990年から同研究所で研究グループを主宰されたのち、1995年に財団法人癌研究会癌研究所生化学部長として帰国し、2000年に東京大学医学系研究科分子病理学分野教授に就任されました。在職中の2021年から東京大学卓越教授(医学系研究科応用病理学)および2022年からは理化学研究所理事・生命医科学研究センターのチームリーダーを務められています。

先生はTransforming Growth Factor-β (TGF-β)ファミリーのシグナル伝達機構に関する研究をライフワークとして推進されています。特にTGF-βファミリーのタンパク質のがん浸潤・転移に関わる分子機構を中心に、多くの研究成果をあげてこられました。2011年からは8年間にわたって医学系研究科長・医学部長として大学運営及び医学教育と研究者育成にも貢献され、2019年からの2年間は本学理事・副学長として人事や研究面の支援に携わられました。学外の公的な場でのご活躍も多く、内閣府、文科省、厚労省、AMEDなどを中心に、本邦のライフサイエンス分野の振興に重要な役割を担い続けていらっしゃいます。

これまでに2008年武田医学賞、2009年紫綬褒章、2010年藤原賞、2011年日本学士院賞、2018年日本癌学会吉田富三賞など数々の賞を受賞されました。2017年からは日本学士院会員に選定されています。宮園先生の今後ますますのご活躍をお祈り申し上げます。

(大学院医学系研究科・医学部 鯉沼代造)

吉川洋 大学院経済学研究科・経済学部 名誉教授

吉川洋名誉教授

このたび、本学名誉教授の吉川洋先生が、マクロ経済研究や為替レートの決定メカニズムの解明に関する多大な功績により2023年度の文化功労者に選ばれました。

吉川先生は1978年にイェール大学でPh.D.を取得された後、ニューヨーク州立大学助教授、大阪大学助教授、東京大学経済学部助教授、東京大学経済学部教授を経て、1996年より東京大学大学院経済学研究科教授にご就任されました。この間、わが国のマクロ経済研究の第一人者として、ケインズ経済学の立場から景気循環理論と経済成長理論の両面で発展に重要な理論的貢献をされただけでなく、その日本経済への応用にも多大な成果を残されました。とくに、設備投資に関する理論分析の先駆けとなった研究、わが国の為替レートの長期的な決定メカニズムを解明した研究、および経済物理学的アプローチを応用した研究は、マクロ経済学研究の新潮流を開拓する成果として、世界的に高く評価されています。また、日本経済のマクロ分析に関する数多くの著作は、日本が短期的・中長期的に直面する課題を鋭く分析した成果として内外から高い評価を受けただけでなく、当時の政策決定に大きな影響を与えるものでした。

吉川先生は、長年わが国の経済学会活動をリードし、2002年には日本経済学会の会長になられました。また、2001年1月~2006年および2008年~2009年に内閣府経済財政諮問会議議員を務めるなど、数多くの政府の審議会等で活躍し、わが国の経済政策上重要な諸課題に対して多大な貢献を行われました。さらに、2009年からは東京大学大学院経済学研究科長を務め、学内行政でも大きな貢献をされました。

これまでに日経経済図書文化賞、サントリー学芸賞、エコノミスト賞、読売・吉野作造賞など数々の賞の受賞に輝いたほか、2010年には紫綬褒章も受章されています。このたびの吉川先生のご顕彰を心からお慶び申し上げるとともに、先生の益々のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。

(大学院経済学研究科・経済学部 福田慎一)

河口洋一郎 大学院情報学環・学際情報学府 名誉教授

河口洋一郎名誉教授

情報学環名誉教授の河口洋一郎先生が、コンピュータグラフィックス(CG)および高精細映像の表現技術における多大な功績により、2023年度の文化功労者に選ばれました。心からお祝い申し上げます。

河口先生は、1982年にCG分野の最高峰である国際会議ACM SIGGRAPHにおいて、造形理論「グロースモデル」を発表されました。プログラミングによって自己増殖しながら複雑に成長していくグロースモデルの芸術表現は、自己組織化するアートという新たな概念を世界に提起しました。河口先生は、螺旋の揺らぎや再帰的自己相似を伴う生々しく有機的な極彩色の造形世界を描き出し、日本を代表するCGアーティストとして長きに渡り活躍してこられました。Eurographics 84 最優秀芸術家賞、PARIGRAPH 87 グランプリ、 Imagina 91 First Prize、Art Eurographics 92 First Prize など数多くの国際的な賞を受賞され,1995年には現代美術のオリンピックともいえる Venezia Biennale 95において日本館代表作家の1人に選ばれました。さらに2005年から8K超高精細映像の圧倒的に繊細で臨場感豊かな作品の制作に着手し、最先端の映像技術が持つ表現の可能性を切り拓いてこられました。

これらの業績により、2010年には SIGGRAPH Distinguished Artist Award for Lifetime Achievement in Digital Art を獲得し、世界で3人目の栄誉ある受賞者になりました。さらに2013年には、芸術選奨文部科学大臣賞、紫綬褒章をそれぞれ受賞されています。

2000年に情報学環・学際情報学府が設立された当初より、東大における芸術活動を力強く先導してこられた河口先生には感謝の念が堪えません。最近では、CG映像から実世界に飛び出した大型立体造形へと活動の場を広げていらっしゃいます。先生の益々のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。

(大学院情報学環・学際情報学府 苗村健)

河岡義裕 医科学研究所 名誉教授

河岡義裕名誉教授

このたび、本学名誉教授の河岡義裕先生が、ウイルス学分野における多大な功績により2023年度の文化功労者に選ばれました。

河岡先生は1978年に北海道大学獣医学部をご卒業され、同大学院修士課程を修了後、鳥取大学農学部助手、米国セントジュード小児研究病院教授研究員、米国ウィスコンシン大学獣医学部教授を経て、1999年に本学医科学研究所教授にご就任されました。河岡先生はインフルエンザウイルスを人工合成する遺伝子操作系を世界で初めて開発されました。ウイルス研究の根幹を成す本技術を活用し、河岡先生はインフルエンザウイルスの感染機構、高病原性獲得機構、薬剤耐性獲得機構を広範に解明しただけでなく、半生ワクチンという新しいワクチンの開発にも貢献されました。また、エボラウイルスでも同様の実験手法を用いることによって、より安全性の高いワクチンの開発にも貢献されています。最近では、新型コロナウイルスに対して、感染モデル動物を開発し、さまざまな変異株の病原性と薬剤への反応性を極めて迅速に解析し公表するなど、パンデミックの制圧に向けて幅広い貢献をなされました。現在も医科学研究所特任教授、東京大学国際高等研究所新世代感染症センター機構長、国際医療研究センター国際ウイルス感染症研究センター長、ウィスコンシン大学獣医学部教授としてご活躍されています。

これまでにロベルトコッホ賞、野口英世記念医学賞、武田医学賞、高峰記念第一三共賞、内藤記念科学賞、慶應医学賞など数多くの賞の受賞に輝いたほか、2011年には紫綬褒章、2016年には日本学士院賞が贈られております。このたびさらに、文化功労者としてご顕彰されたことを心から慶び申し上げるとともに、先生の益々のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。

(医科学研究所 川口寧)

荒川泰彦 生産技術研究所 名誉教授

荒川泰彦名誉教授

このたび、本学名誉教授の荒川泰彦先生が、令和5年(2023年度)の文化功労者に選出されました。

荒川先生は、1980年に本学大学院工学系研究科博士課程を修了された後、直ちに生産技術研究所に講師として着任されました。翌年には同・助教授、1993年には教授に昇任されました。また、先端科学技術研究センター教授、ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構長等もお務めになられました。現在は、ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構の特任教授として研究活動を推進していらっしゃいます。

荒川先生は、1982年に半導体中の電子を完全に閉じ込める「量子ドット」の概念とそのレーザへの応用を提案されました。その後、半導体量子ドット形成技術の開発を進め、量子ドットレーザを実現するとともに、産学連携研究を通じその実用化に多大な貢献をされました。さらに、光電子融合技術における量子ドットレーザの優位性も明らかにされました。この成果をきっかけに、量子ドット搭載の光集積回路チップの開発などが進んでいます。また、単一の量子ドットを用いた極限光源の開拓も推進され、単一量子ドットレーザの実現、光通信波長帯単一光子発生器の実現とその長距離量子暗号通信への応用など、ナノ量子フォトニクス分野における革新的成果を数多く挙げられました。一方、量子井戸や量子ドットなど半導体低次元構造における光電子物性の基礎研究も広く展開されました。特に、半導体微小共振器における共振器励起子ポラリトン効果の観測は、固体共振器量子電気力学という量子エレクトロニクスの一大分野の端緒となりました。

これらの研究業績は極めて高く評価されており、日本学士院賞、紫綬褒章、Heinrich Welker賞、URSI Balthasar Van der Pol Goldメダル等、国内外の著名な賞を受けられるとともに、全米工学アカデミー外国人会員にも選出されていらっしゃいます。また、荒川先生は、数々の国家プロジェクトのリーダーとして関係分野の発展を牽引され、その活動を通して多くの後進研究者を育成されました。

日頃よりご指導をいただく者の一人として、このたびの荒川先生のご顕彰を心よりお慶び申し上げるとともに、先生のご健康とますますのご活躍を祈念いたします。

(先端科学技術研究センター 岩本敏)
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