令和6年秋の紫綬褒章受章

令和6年秋の紫綬褒章受章

藤田友敬教授、岩坪威教授、石原あえか教授、中畑雅行教授が令和6年秋の紫綬褒章を受章いたしました。

藤田友敬 大学院法学政治学研究科・法学部 教授

藤田友敬教授

大学院法学政治学研究科・法学部の藤田友敬教授が、2024年11月3日の褒章発令により、紫綬褒章を受章されました。

藤田教授のこの度の受章は、国内にとどまらず国際的なルール形成に影響を与える研究成果を継続的に公表されると共に、経済学など法学に隣接する他分野の知見を法学研究に応用する新たな研究手法を確立し、商法学の発展に多大な貢献をされてきたことが高く評価されたものです。

藤田教授は、経済理論の法学研究への応用という新しい研究手法の導入と確立に積極的に取り組み、その後の法学研究及び立法作業に大きな影響を与えました。その中でも特に会社法の意義・機能を経済学のツールを用いて分析する(会社法の経済分析)という手法の確立に尽力されました。また、藤田教授は、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)におけるロッテルダム・ルールズ(2008年12月に国際連合第63回総会において採択された「全部又は一部が海上運送による国際海上物品運送契約に関する国際連合条約」)の起草作業をはじめとして、万国海法会(CMI)、国際海事機関(IMO)、国際油濁補償基金(IOPCF)などの国際機関におけるルール形成や運用に継続的に関与するだけではなく、関連する研究業績を積極的に公表されました。このような国際的なルール形成における豊富な経験を活かして、藤田教授はわが国の商法(運送法・海商法)の改正においても主導的な役割を果たされました。

さらに、藤田教授は、日本私法学会理事・理事長、日本海法学会理事・理事長、日本空法学会理事、公益財団法人日本海法会理事・副理事長を務め、学会運営の重責を担うことによって、わが国の学界の発展に寄与されました。

このように、藤田教授はわが国の商法学の分野全般にわたって立法・行政に尽くすのみならず、国際的なルールの形成におけるわが国の地位の向上にも貢献され、その功績はまことに顕著なものです。藤田教授のこの度のご受章を心よりお祝い申し上げますと共に、教授のご健勝と今後益々のご活躍を祈念いたします。

(大学院法学政治学研究科・法学部 加藤貴仁・松井智予)

岩坪威 大学院医学系研究科・医学部 教授

岩坪威教授

本学医学系研究科の岩坪威教授が2024年秋の紫綬褒章を受章されました。心よりお慶び申し上げます。

岩坪教授はこれまでアルツハイマー病を中心に神経病理学の分野において多くの先駆的かつ重要な成果を挙げ、基礎・臨床の両面において世界の研究を先導してこられました。基礎研究においては、アルツハイマー病脳内に早期から蓄積するアミロイドβ分子種としてAβ42を同定し、Aβ産生酵素の分子機構を解明、またパーキンソン病脳内に蓄積する病因分子αシヌクレインを同定し、疾患特異的なリン酸化修飾を発見するなど、まさにマイルストーンと呼ぶべき実績を重ねてきました。また臨床研究面においては、アルツハイマー病早期段階の自然経過を縦断的に計測・記述する本邦の大規模臨床観察研究J-ADNI (Japanese Alzheimer Disease Neuroimaging Initiative) を開始、のちにレカネマブなどの治療薬の治験に不可欠となる基準データの取得を可能とし、公開したほか、アルツハイマー病発症前のプレクリニカル期における変化を解明し、治験の推進に繋げる治験即応コホートJ-TRCを立ち上げて研究を進めています。

これらの様々な研究成果を糾合し、岩坪教授は、エーザイなどが共同開発し2023年に世界初の臨床実用に至ったアルツハイマー病疾患修飾薬レカネマブについて、その治験結果の解析にあたる国際グループの主要メンバーを務め、結果の公表を主導しました。また、その最適使用推進ガイドライン策定や薬事承認の過程においても重要な役割を果たし、保険収載・実用化を導くなど、アルツハイマー病の根本メカニズムを対象とする治療の実現に突破口を開くご活躍をされました。

以上の卓越した業績により、日本神経学会賞(2004)、メットライフ賞(2008)、米国アルツハイマー病協会ヘンリー・ウィズニィエフスキ記念賞(2010)、米国神経学会ポタムキン賞(2012)、高峰記念第一三共賞(2012)、日本医師会医学賞(2021)、持田記念学術賞(2023)、上原賞(2023)、文部科学大臣表彰科学技術賞(2024)、ヘルシー・ソサエティ賞(2024)など多数の賞を受賞されてきました。

岩坪教授のこの度の紫綬褒章受章は、長年にわたる上記研究や教育・社会貢献活動の功績が高く評価されたものです。受章を心よりお祝い申し上げますとともに、今後の益々のご健勝・ご活躍を祈念いたします。

(大学院医学系研究科・医学部 桑原知樹)

石原あえか 大学院総合文化研究科・教養学部 教授

石原あえか教授

本学大学院総合文化研究科の石原あえか教授が、2024年秋の紫綬褒章受章者に選ばれました。

石原教授は、ドイツの文豪ゲーテについて、文学活動だけでなく、高級官僚でもあった彼の自然研究者としての活動に着目し、天文学など近代自然科学とゲーテ作品との相互影響関係の研究に取り組み、科学史的視点を採り入れたゲーテに関する新たな分析や近代科学史に関するユニークな研究成果を次々と発表されてきました。さらに医学や地理学などの分野・領域を横断した研究を展開し、文理の境界を定めない人的ネットワークを構築するなど、日本の学術研究の発展に多大な貢献を果たしてこられました。

ケルン大学学位請求論文を書籍化したドイツ語単著『マカーリエと宇宙(Makarie und das Weltall)』において石原教授は、従来のゲーテ研究でほとんど顧みられてこなかった「近代天文学」との関わりを徹底した文献学的調査によって究明しました。2冊目のドイツ語単著『ゲーテの《自然という書物》(Goethes Buch der Natur)』では、天文学を起点に、物理学・植物学などに研究対象を拡大し、それまでの科学と文学が共存していた学問(博物学)が現代の専門的な学問領域へ分化していく〈知〉の流れを丹念に再構成しています。

さらに石原教授の学術的関心は、ゲーテの文学作品をもとに、近代測量技術や医学標本(特に近代皮膚科普及に不可欠だった蝋製立体模型〈ムラージュ〉)にまで及んでいます。その成果は、ゲーテ時代の文学・文化史と科学史・科学技術を結びつけた日本語単著『科学する詩人ゲーテ』、仏・独の近代三角測量の比較や相互の影響に至るまでを考察したドイツ語単著『地球の測量可能性(Die Vermessbarkeit der Erde)』、日本語単著『近代測量史への旅』や『教養の近代測地学』などに結実しています。

これらの優れた研究業績により、石原教授は、日本独文学会賞(2006年)、日本学術振興会賞・日本学士院学術奨励賞(2007年)、サントリー学芸賞(2010年)、フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞(2013年)、「測量の日」功労者表彰(2021年)を受賞されています。

この度の石原教授のご受章を心よりお祝い申し上げますとともに、今後の益々のご活躍を祈念致します。

(大学院総合文化研究科・教養学部 竹峰義和)

中畑雅行 宇宙線研究所 教授

中畑雅行教授

本学宇宙線研究所の中畑雅行教授が2024年秋の紫綬褒章を受章されました。

中畑教授は長年に亘り岐阜県飛騨市のカミオカンデとスーパーカミオカンデ実験の主要なメンバーとしてニュートリノ宇宙物理学の発展に多大な貢献をしてきました。

まず、中畑教授はカミオカンデでの太陽ニュートリノ観測の重要性に着目し、データ解析プログラムの主要部分を構築するとともに、さまざまな工夫で信頼性の高い実験データを得て、世界で2番目の太陽ニュートリノ観測の成功に大きく貢献しました。それとともに最初の太陽ニュートリノ観測で示唆されていた観測数が理論値より有意に少ないということを確認し、後の太陽ニュートリノ振動の発見に繫がる成果を得ました。

続いてスーパーカミオカンデ実験においても太陽ニュートリノ観測のために装置の開発、改良やデータ解析をすすめました。特に、医療用線形電子加速器を使って電子をスーパーカミオカンデに打ち込み、測定器の正確なエネルギー較正を行って、太陽ニュートリノの精密観測を可能にしました。そしてカナダのSNO実験と共同で太陽ニュートリノ振動の証拠を得ることに成功しました。そして近年、精密観測により太陽ニュートリノの夜の観測数が昼の観測数よりわずかに多いという証拠を得ることに世界で初めて成功し、物質中でのニュートリノ振動の理解の正しさを決定づけました。

以上に加え、1987年に大マゼラン星雲で超新星爆発があった際にもデータ解析に取り組み、世界で初めて太陽系外の天体からのニュートリノを観測することに大きく貢献しました。

これらの優れた研究業績により、米国天文学会ブルーノ・ロッシ賞(1989年、カミオカンデ・グループとして)、井上研究奨励賞(1990年)、仁科記念賞(2001年、鈴木洋一郎と連名)、井上学術賞(2009年)、戸塚洋二賞(2011年)などを受賞されてきました。

この度の中畑教授のご受章を心よりお祝い申し上げますとともに、先生のご健勝と益々のご活躍を祈念致します。

(宇宙線研究所 梶田隆章)

カテゴリナビ
アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる