令和6年度文化勲章受章


令和6年度文化勲章受章
江頭憲治郎名誉教授、廣川信隆名誉教授が、令和6年度文化勲章を受章いたしました。
江頭憲治郎 大学院法学政治学研究科・法学部 名誉教授
江頭憲治郎名誉教授が、令和6年度の文化勲章を受章されました。
江頭先生は、昭和44年に東京大学法学部助手として商事法研究のスタートを切られて以来、商事法を中心とする幅広い分野において画期的な業績を公表し学界をリードされるとともに、多くの後進の指導・育成に尽力されました。
先生の研究業績が商法の全領域に及び、しかも各分野において時代を画する大きな成果を挙げている点は特筆すべきものです。『会社法人格否認の法理』(1980年)と『結合企業法の立法と解釈』(1995年)の2冊のモノグラフィーは、わが国の会社法学の水準を一挙に引き上げた業績として知られ、また長年の会社法研究の成果を取り入れた『株式会社法』は,学界・実務の双方において最も指導力のある体系書として版を重ねています(最新版は,2024年刊行の第9版)。また『商取引法』(最新版は2022年刊行の第9版)は,わが国の商取引に関する綿密な実態調査を踏まえた解釈論を展開する、それまでに類のない体系書として商取引の研究のあり方を変えるものでした。現代の商法学が、その対象領域の拡大に伴いそれぞれ高度に専門分化していることを考えると、このように商法学の全領域において卓越した研究業績を挙げられたことは、稀有な偉業だと言わねばなりません。また、方法論的にも、アメリカ法やドイツ法等を対象とする機能主義に基づく比較法的研究という伝統的な手法を精緻に実践するだけではなく、いち早くファイナンス理論に目を向け、さらに近時は統計的・計量経済学的な実証分析の成果を取り入れた解釈論・立法論を展開するといった多彩かつ先進的な検討手法を数多く試みられています。
先生は、このような学識をもとに、法制審議会・会社法(現代化関係)部会部会長として平成17年の会社法制定に尽力されたことをはじめ、わが国の立法や実務に多大な貢献をされてこられました。そして平成21年に紫綬褒章を受章、平成26年には日本学士院会員に選ばれ、平成30年には文化功労者として顕彰されております。
先生のこの度のご受章を心よりお祝い申し上げるとともに、ますますのご活躍とご健勝をお祈り申し上げます。
(大学院法学政治学研究科・法学部 藤田友敬)
廣川信隆 大学院医学系研究科・医学部 名誉教授
この度、本学名誉教授の廣川信隆先生が文化勲章を受章されました。廣川信隆先生はわが国の分子細胞生物学の発展に多大な貢献を果たされました。先生は1970年代に米国にて先端的な電子顕微鏡法の開発にたずさわられ、大きな研究成果を挙げられました。
帰国後、キネシン分子モーター (KIFs) と総称される新しい細胞内輸送酵素群の研究分野を他に先駆けて切り拓かれ、学問的な基盤を築かれるとともに、多くの後進を育てられました。1990年代初頭にマウスの全KIF遺伝子を同定され、クライオ電子顕微鏡・X線結晶解析等を用いてモーター作動原理解明に挑まれる一方、数十種類のノックアウトマウスを作成し、共焦点レーザ顕微鏡・超解像顕微鏡等を用いてKIFsの機能の集学的解析を完遂されました。先生のご研究により、細胞の骨組みである微小管の上を貨物列車のようにオルガネラ群の行き交うイメージが定着し、動的な細胞の姿に初めて光が当てられました。KIFsの異常が、神経難病、統合失調症、左右逆位など多くの重篤な疾患の遺伝的要因となることを解明され、この分野のパイオニアとして、幅広い生物学を展開されました。
廣川信隆先生は、東京大学医学部をご卒業後、米国ワシントン大学医学部准教授等を経て、1983年本学医学部解剖学教授にご就任、さらに大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻の教授・特任教授、順天堂大学の特任教授を務められています。
廣川信隆先生のご研究は卓越した国際誌に多数掲載され、高く評価されてこられました。1995年に上原賞、1996年に朝日賞、1999年に日本学士院賞・藤原賞など多くの賞を受賞され、2013年には文化功労者として顕彰されています。また2001~07年には日本解剖学会理事長、2003~07年には本学大学院医学系研究科長・医学部長、2012~18年には国際ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム機構理事長など国内外の要職を歴任され、2004年からは日本学士院会員として、わが国の基礎科学の発展に大きく貢献されました。
廣川信隆先生の輝かしいご受章を心からお慶び申し上げますとともに、先生のますますのご活躍とご健勝をお祈り申し上げます。
(大学院医学系研究科・医学部 田中庸介)