令和6年度文化功労者顕彰

令和6年度文化功労者顕彰

菅野和夫 名誉教授、五味文彦 名誉教授、辻井潤一 名誉教授、羽田正 名誉教授が、令和6年度文化功労者として顕彰されました。

菅野和夫 大学院法学政治学研究科・法学部 名誉教授

菅野和夫名誉教授

このたび、本学名誉教授の菅野和夫先生が、労働法学における多大の功績により2024年度の文化功労者に選出されました。

菅野先生は、1966年に東京大学法学部を卒業、1968年に司法修習を終えられた後、本学法学部助手、助教授を経て、1980年に教授に就任されました。菅野先生は民事法学・刑事法学の普遍的法理論との整合性に留意しつつ、労働関係の特質を踏まえた解釈論を展開した『争議行為と損害賠償』(東京大学出版会、1978年)により、労働法学が法律学として成熟する転機をもたらされました。そして、法律学としての労働法学を確立したといわれる1985年刊行の『労働法』(弘文堂、第13版は2024年刊行)によって学界および実務界に多大の貢献をされました。1992年、2002年には同書の英訳書を刊行され、また、多数の英語論文によって、日本の労働法学の水準を国際的に示し、その評価を大いに高められました。こうした功績により、菅野先生は国際労働法社会保障法学会会長(2006-2009年)に選出され、2017年には生涯を通じて国際的に比較労働法に顕著な功績のあった研究者に授与されるBob Hepple Award (Labour Law Research Network)を受賞されています。

菅野先生は、中央労働基準審議会会長、労働政策審議会会長、中央労働委員会会長、労働政策研究・研修機構理事長等として労働法政策の発展と労働紛争処理の実務にも重要な貢献をされました。とりわけ、司法制度改革推進本部労働検討会座長として関与された労働審判制度の創設、そして、労働契約法制研究会座長として議論をリードされた労働契約法の制定におけるご尽力は特筆すべきものです。

そのほか、瑞宝重光章(2013年)、福島県外在住者知事表彰(2018年)などを受賞され、2008年からは学士院会員を務められています。先生の文化功労者としてのご顕彰を心よりお慶び申し上げますとともに、益々のご健勝とご活躍を祈念致します。

(大学院法学政治学研究科・法学部 荒木尚志)

五味文彦 大学院人文社会系研究科・文学部 名誉教授

五味文彦名誉教授

このたび、本学名誉教授の五味文彦先生が、日本中世史研究における多大な功績により2024年度の文化功労者に選ばれました。心からお祝い申し上げます。

五味先生は、1968年に東京大学文学部をご卒業され、同大学院修士課程を修了後、東京大学文学部助手、神戸大学文学部講師、お茶の水女子大学文教育学部助教授を経て、1984年に東京大学文学部助教授に着任、1992年に教授に昇任されました。五味先生はさまざまな史料を駆使して日本中世社会の解明に力を注いでこられました。軍記物語や説話集、絵巻物など文学作品や美術作品にも積極的に取り組み、歴史学の立場から分析を加え、文献史料のみからではうかがい知ることができなかった中世社会の実像を次々と明らかにされました。武家政権と朝廷が並存した中世の政治体制を二つの王権として提示されたのはその成果の一つです。また中世考古学との協働の重要性を提起し、連年にわたってシンポジウムを開催されるなど学際研究の推進・発展にもつとめてこられました。これらの研究成果は、『院政期社会の研究』(1984年)や『書物の中世史』(2003年)をはじめとする数多くの著作により広く社会に発信され続けています。

五味先生は、人間文化研究機構理事をつとめられるなど日本史学研究の振興・発展にも寄与されてきました。とりわけ文化庁文化財保護審議委員会委員・横浜市ふるさと歴史財団理事長をはじめ各地の文化財保護委員・審議委員をつとめられ、文化財保護行政に尽力されています。

これまでに1991年サントリー学芸賞、2004年角川源義賞、2016年毎日出版文化賞など数々の賞を受賞されました。このたびさらに、文化功労者としてご顕彰されたことを心よりお慶び申し上げるとともに、先生のご健勝とますますのご活躍を祈念いたします。

(大学院人文社会系研究科・文学部 高橋典幸)

辻井潤一 大学院情報理工学系研究科 名誉教授

辻井潤一名誉教授

このたび、本学名誉教授の辻井潤一先生が、自然言語処理・計算言語学分野における多大な功績により令和6年度文化功労者に選出されました。心よりお祝い申し上げます。

辻井先生は、京都大学大学院を修了後、京都大学、マンチェスター大学等を経て、1995年に本学に着任、大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻、理学部情報科学科などで教育、研究にあたられました。自然言語のもつ構造と意味、言語の意味と背景知識の関係を計算論的な立場から究明する研究を推進され、機械翻訳、言語解析、生命科学分野のテキストマイニングといった自然言語処理の各分野における先駆的な研究成果は世界的に広く知られています。また、Association for Computational Linguistics (ACL)、International Association for Machine Translation (IAMT)、International Committee for Computational Linguistics (ICCL)、言語処理学会等の国内外の学会会長等を歴任し、新たに学術団体を創設するなど、計算言語学・自然言語処理分野の発展に多大な貢献をされています。

これまでに、自然言語処理分野の国際学会において長年の功績に対して授与されるACL Lifetime Achievement Awardをはじめ、国内外の数多くの賞を受賞されているほか、2010年には紫綬褒章、2022年には瑞宝中綬章を授与されています。現在は産業技術総合研究所フェロー、マンチェスター大学教授としても活躍されており、自然言語処理分野に限らず人工知能研究を牽引されています。今後のますますのご活躍を祈念いたします。

(大学院情報理工学系研究科 中村宏)

羽田正 東洋文化研究所 名誉教授

羽田正名誉教授

このたび、本学名誉教授の羽田正先生が、世界史・グローバルヒストリーの研究における多大な功績により、令和6年度の文化功労者に選出されましたことを、心よりお祝い申し上げます。

羽田先生は、1976年に京都大学文学部をご卒業され、1983年にパリ第3大学イラン学第3期博士の学位を授与されたあと、1989年に東京大学東洋文化研究所に着任され、イランを中心とする西アジア史研究を推進されました。2005年の『イスラーム世界の創造』(東京大学出版会)出版を契機に、ヨーロッパ中心のこれまでの世界史のあり方を見直す「新しい世界史の構築」を提唱し、グローバルヒストリー研究を国際的に牽引する研究者として世界史の研究と教育に新たな潮流を生み出されました。人類社会全体を視野に入れ、単なる時系列史や地域史を超えて、海洋交易や知の伝達など相互交渉や同時代史に注目しながら過去の事象を叙述することにより、現代へとつながる世界史の理解をめざして、国際的な研究活動を進めていらっしゃいます。また、この新しい世界史の研究成果が広く享受されるよう、一般向け書籍の監修などにも尽力されてきました。

羽田先生の学術業績は、2002年毎日出版文化賞、2006年アジア・太平洋賞特別賞、2010年アジア太平洋出版連合(APPA)出版賞学術書部門銀賞およびファーラービー国際賞(イラン)、2017年紫綬褒章、2021年フランス教育功労章オフィシエ級の国内外の受賞/受章により国内外で認められています。

さらに羽田先生は、2009年から2012年まで東洋文化研究所の所長を務められたのち、東京大学副学長、大学理事、大学執行役、東京大学国際高等研究所東京カレッジ特任教授および東京カレッジ長を歴任され、本学の運営にも力を注いでこられました。

このたびの羽田先生のご顕彰をお慶び申し上げるとともに、現在も旺盛な研究活動を続けておられる先生の、益々のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。

(東洋文化研究所 桝屋友子)

カテゴリナビ
アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる