令和7年秋の紫綬褒章受章

令和7年秋の紫綬褒章受章

塩谷 光彦 名誉教授、日比谷 紀之 名誉教授、森山 工 教授が令和7年秋の紫綬褒章を受章いたしました。

塩谷 光彦 大学院理学系研究科・理学部 名誉教授

塩谷 光彦 名誉教授

塩谷光彦名誉教授が、令和7年秋の紫綬褒章を受章されました。塩谷名誉教授は理学系研究科化学専攻を令和6年に退職され、現在は東京理科大学研究推進機構総合研究院の教授として活躍されています。

塩谷名誉教授は、永年にわたり、錯体化学、超分子化学、生物無機化学の教育と研究に尽力されました。その研究は超分子金属錯体の化学を基盤とし、分子やイオンの配列・動的構造を巧みに制御し、更には多彩な空間機能を創出することで、物質化学分野において世界を先導してきました。

塩谷名誉教授が創成された新物質は多岐にわたり、特に世界に先駆けて金属錯体型人工DNAを開発され、触媒活性を有するDNA触媒やLogic Gateシステムの開発にも成功されました。さらに、分子認識能と反応場を兼ね備えた多孔性超分子結晶の構築を成し遂げられ、ナノスケール空間の化学に関して新たな方向性を示されました。また、置換活性な金属錯体の「金属中心の不斉誘導」と「絶対配置の安定化」に世界で初めて成功されたことは、不斉金属の化学における大きなブレイクスルーとなりました。

これらの卓越した研究業績により、文部科学大臣表彰 科学技術賞(2016年)、錯体化学会賞(2018年)、日本化学会賞(2020年)、International Izatt-Christensen Award(2022年)、日本核酸化学会賞(2023年)など、数々の栄誉ある賞を受賞されています。

この度の塩谷名誉教授のご受章を心よりお祝い申し上げますとともに、今後ますますのご健勝とご活躍を祈念いたします。

(大学院理学系研究科・理学部 楊井伸浩)

日比谷 紀之 大学院理学系研究科・理学部 名誉教授

日比谷 紀之 名誉教授

日比谷紀之名誉教授が令和7年秋の紫綬褒章を受章されました。日比谷名誉教授は本学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻を令和4年に退職され、現在は東京海洋大学客員教授および海洋研究開発機構アドバイザーとして活躍されています。

日比谷名誉教授は、海洋表層から深層への熱(浮力)輸送による深層水の湧昇を通じて、深層海洋循環、ひいては長期気候変動をも制御する「深海乱流」に注目し、理論と観測を融合した手法によりその実態を解明してこられました。

特に、潮流と海嶺・海山との相互作用により発生する内部潮汐波が、緯度依存性をもつパラメトリック共振を通じて高波数・近慣性流シアーを励起して乱流を引き起こす過程を数値実験により理論的に解明するとともに、これに伴う乱流強度の顕著な緯度依存性を深海乱流計による観測で実証し、世界初となる中・深層での乱流強度の全球マップを作成されました。また、潮汐と並んで深海乱流の有力なエネルギー源とされてきた大気擾乱の寄与を明確に否定する一方で、粗い海底凹凸地形上で強い潮流により励起される内部風下波の砕波に伴う背の高い乱流混合域が、海洋物理学で長く議論されてきた「乱流強度不足問題」解決の鍵となる可能性を提唱されました。さらに、以上の研究成果をもとに、海洋の中・深層および底層での乱流パラメタリゼーションを新たに開発し、マイクロスケールから海洋・気候モデルの高精度化への道を切り拓かれました。

これらの研究業績には、日本海洋学会岡田賞(1989年)、日本海洋学会賞(2008年)、科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門、2020年)、海洋立国推進功労者内閣総理大臣表彰(2021年)、国際測地学地球物理学連合(IUGG)選出フェロー(2023年)、日本地球惑星科学連合(JpGU)フェロー(2025年)など多くの賞が授与されています。

このたびの日比谷名誉教授の受章を心よりお祝い申し上げますとともに、益々のご健勝とご活躍をお祈りいたします。

(大学院理学系研究科・理学部 升本順夫)

森山 工 大学院総合文化研究科・教養学部 教授

森山 工 教授

森山工・本学大学院総合文化研究科教授が、令和7年秋の紫綬褒章を受章されました。

森山教授は、日本を代表する文化人類学者です。その高度な言語能力(英語・フランス語・マダガスカル語など)と哲学的概念の高い構成力を駆使して、マダガスカルで長期のフィールドワークを実施し、儀礼や親族、エスニシティをめぐる諸実践が様々な社会認識を生み出す過程を緻密に描かれました。記述・分析するという学的営みをも徹底した内省の対象とし、そこから照射される広い理論的地平を見据えた森山先生の議論は、『墓を生きる人々:マダガスカル、シハナカにおける社会的実践』(東京大学出版会)に結実しました。この著作はいまなお、民族誌的現地調査を行う学徒にとって、欠かすことのできない参照点であり続けています。

その後、森山教授は、マダガスカルの植民地主義史の残余を人類学の視点で解明され、アフリカ地域研究や歴史人類学に大きく寄与されました。また、共編者の一人として世に出された日本文化人類学会(監修)『フィールドワーカーズ・ハンドブック』(世界思想社)では、人類学的なフィールド調査の内的論理を明晰に語ることに成功されました。森山先生はさらに進んで、マルセル・モースの著作、特に主著『贈与論』を緻密に読解し、その成果を邦訳(『贈与論 他二篇』、『国民論 他二篇』、岩波文庫)と2冊の著作(『贈与と聖物:マルセル・モース「贈与論」とマダガスカルの社会的実践』、東京大学出版会、『「贈与論」の思想:マルセル・モースと<混ざりあい>の倫理』、インスクリプト)として世に送り出されました。これは、人類学的理論解析と思想史的探究の稀有で幸福な結合と評することができるもので、諸学界への多大な貢献となっています。

上記の研究業績により、平成9年に澁澤民族学振興基金第25回澁澤賞、令和6年には第19回日本文化人類学会賞を授与されています。

この度の森山工教授の受章を心よりお祝い申し上げますとともに、森山先生のご健勝と益々のご活躍を祈念いたします。

(大学院総合文化研究科・教養学部 渡邊日日)

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