平成26年度秋の紫綬褒章受章

平成26年度秋の紫綬褒章受章

香取秀俊教授が、本年秋の紫綬褒章を受章いたしました。

香取 秀俊 大学院工学系研究科・工学部 教授

香取 秀俊 大学院工学系研究科・工学部 教授 画像

 香取秀俊教授が本年秋の紫綬褒章を受章されました。
 香取先生は1997年に、量子現象探索を目的として、気体原子の新しいレーザー冷却法の開発に着手し、1999年にスピン禁制遷移冷却と後に「香取の魔法波長」として有名になる光トラップ法を開発しました。これはストロンチウム原子をわずか100ミリ秒で400ナノケルビンという極低温に冷却する画期的な技術です。
 香取先生はこれが時間標準の新技術をもたらすことに気がつき、「光格子時計」として2001年に発表しました。光格子時計は、レーザーを用いて形成した格子状の光トラップに冷却した原子を捕獲し、熱的な運動を除去して原子遷移の周波数を精密に測定するという仕組みです。光トラップはバイオでも広く使われていますが、通常はトラップ中で原子遷移周波数がずれてしまいます。光の波長を「魔法波長」に合わせるとこのずれを除去でき、光格子中で運動が凍結された多数の原子を同時に計測し、時計の精度と確度を飛躍的に向上できるという発明です。2003年にはこの技術を当時大学院生であった高本将男氏等と共に世界に先駆けて実証しました。
 光格子時計は、その長所がたちまち世界で認知され、2006年の国際度量衡委員会において、提案からわずか5年で、秒の二次表現として採択されました。これまで本命と考えられていた単一原子イオンを測定するイオン光時計に対し、光格子時計は100万個の原子を同時に観測するので、数秒の積算時間で18桁の高精度を達成できる画期的なものです。香取先生はその後も快進撃を続けており、最新の実験では、精度と確度はついに18桁台に入っています。光格子時計の研究は世界20箇所以上で行われており、前回の改訂より47年を経ている現在の秒の定義を塗り替える時も近い状況です。
 光格子時計は、物理定数の恒常性の検証、さらにはダークマターやダークエネルギー探索など自然の基礎原理を追求する新たなツールを与えるものです。同時に衛星測位計測、大容量高速通信ネットワークのタイミング制御、地殻変動検出等、人類社会への貢献も大いに期待されます。長年の同僚として、その研究進捗をいつも固唾を飲んで楽しみにしています。この度の受章をお喜び申し上げると共に、今後のご健勝とますますの活躍をお祈り申し上げます。

(大学院理学系研究科・理学部 五神 真)

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