平成26年度文化功労者顕彰

平成26年度文化功労者顕彰

山川民夫名誉教授、佐藤勝彦名誉教授が、文化功労者として顕彰されました。

山川 民夫 大学院医学系研究科・医学部 名誉教授

山川 民夫 大学院医学系研究科・医学部 名誉教授 画像

 このたび、本学名誉教授の山川民夫先生が文化功労者として顕彰されました。
 山川民夫先生は生化学をご専門とされ、中でも細胞膜の糖脂質に関する研究を通して、今日生化学の主要な一分野となっている糖鎖研究領域の確立と発展に大きく貢献されました。先生は昭和19年に東京帝国大学医学部を卒業され、戦争末期から戦後にかけての困難な時期に伝染病研究所(現、東大医科学研究所)において医学研究に取り組み、赤血球表面に存在する糖脂質の糖鎖構造がABO式血液型の特異性を決定していること、その構造は動物種によって異なることを世界に先駆けて発見し、膜に存在する糖脂質が細胞の特徴づくりに重要であることを初めて明らかにされました。さらに先生は、ガングリオシドやシアル酸といった糖質が細胞膜の糖脂質構造を形成していることを発見し、糖鎖研究を大きく発展させる礎となりました。また、Tay-Sachs病、Fabry病などの先天性代謝異常症において組織に異常蓄積する糖脂質の構造を決定するとともに、原因となる酵素の基質特異性に関する研究を通して、疾患研究の進歩にも大きく貢献されました。
 先生は、学内においては昭和34年から本学教授として伝染病研究所化学研究部を主宰され、医科学研究所への改組にも貢献されました。昭和41年からは医学部生化学第一講座を担当され、糖鎖研究を中心とする生化学研究の発展と数多くの俊秀の育成に尽力されました。また、学外においては日本生化学会の会長、副会長を歴任され、同学会機関誌の編集委員長としても献身的な努力をされるなど、我が国の生化学会において常に指導的役割を果たしてこられました。昭和57年に本学を定年退職された後も、東京都臨床医学総合研究所所長、平成3年からは東京薬科大学学長を歴任され、我が国の生命科学の発展と後進の育成に尽力されました。
 山川先生はこれらの功績により、これまでにも日本学士院賞をはじめ、朝日文化賞、内藤記念科学振興賞など、数多くの賞を受賞されています。この度のご顕彰を心よりお慶び申し上げますとともに、今後益々のご健勝をお祈り申し上げます。

(大学院医学系研究科長・医学部長 宮園 浩平)

佐藤 勝彦 大学院理学系研究科・理学部 名誉教授

佐藤 勝彦 大学院理学系研究科・理学部 名誉教授 画像

 本研究科物理学専攻名誉教授・前ビッグバン宇宙国際研究センター長(現在は自然科学研究機構長)の佐藤勝彦先生が2014年度の文化功労者に叙せられました。先生は1968年 京都大学理学部物理学科をご卒業後、同大学院、助手を経て1982年に本学理学部助教授に就任、1990年に同教授に昇任されました。その後、ビッグバン宇宙国際研究センター長、理学部長・大学院理学系研究科長等の要職を歴任されています。
 佐藤先生は、素粒子物理学を天体物理・宇宙論に応用した世界的な先駆者です。まず、重力崩壊型超新星爆発においてニュートリノが10秒間程度中心部に閉じ込められることを示し、これは後に超新星1987Aによって実証されました。また、宇宙論・天体物理からニュートリノ質量や世代数をはじめとする各種素粒子の性質を制限し、今日の素粒子論的宇宙物理学の方法論を確立されました。さらに、相互作用の大統一理論に基づき、真空の相転移にともなって、宇宙が何十桁も指数関数的に膨張することを示し、ビッグバン宇宙論をインフレーション宇宙論へと発展させました。その際、宇宙の大規模構造の種となり得る揺らぎが生成可能なこと、磁気モノポール問題が解決可能であること、また急激な宇宙膨張によって因果関係をもち得る宇宙の地平線が十分広がることにより、大きな領域にわたって一様に正のバリオン数をもつ物質宇宙が実現することを示しました。さらに、この相転移の進行にともなって、宇宙が自己相似的に多重発生することを示しました。これは「唯一絶対の宇宙」という古典的な宇宙観を、「多種多様な宇宙の中でのわれわれの宇宙」という考え方に変更することを迫った画期的なものです。
 これらの研究成果によって、1989年第五回井上学術賞、1990年第三十六回仁科記念賞を受賞、2002年には紫綬褒章を受章され、2010年には日本学士院賞を受賞されると共に、2013年より学士院会員を務められています。

(大学院理学系研究科・理学部附属ビッグバン宇宙国際研究センター 横山 順一)

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