平成28年秋の紫綬褒章受章

平成28年秋の紫綬褒章受章

幾原雄一教授、古澤明教授、水野哲孝教授が、平成28年秋の紫綬褒章を受章いたしました。

幾原雄一 大学院工学系研究科・工学部 教授

幾原雄一教授

このたび、大学院工学系研究科・工学部(総合研究機構)の幾原雄一教授が、本年秋の紫綬褒章を受章されました。

幾原先生は、最先端透過電子顕微鏡法を高度に駆使し、材料界面における軽元素や局在原子など材料機能に直結する原子の直接観察に成功し、材料科学分野に大きなブレークスルーをもたらしてきました。先生は球面収差補正-走査透過電子顕微鏡法と第一原理計算を融合した新しい解析手法を独自に開発し、これまでその観察が不可能とされてきた界面に局在する原子一個一個やリチウム原子、水素原子などの可視化に世界に先駆けて成功するとともに、界面に形成される複雑な超構造の存在をはじめて発見しました。これらの成果に基づき、新しい材料設計指針を提唱し、実際に透明絶縁体中の導電性ナノワイヤーの開発や単一界面素子の開発を行い、これまでには無い全く新規な機能材料を創出するなど、斯学の発展に大きく貢献してきました。

これらの先駆的な研究業績に対し、平成23年ドイツのアレキサンダー・フォン・フンボルト財団・Humboldt Research Award、平成27年米国セラミックス学会・Robert B. Sosman Award(日本人として初受賞)、平成22年公益財団法人本多記念会・第7回本多フロンティア賞、平成27年日本金属学会・谷川・ハリス賞など国内外の数多くの賞を受賞されています。また、国際・国内会議の議長などの要職を多数務められたほか、World Academy of CeramicsのAcademician及び米国セラミックス学会のフェローに選出されるなど、国際的に高い評価を受けておられます。

この度の受章を心よりお慶び申し上げますとともに、先生のご健勝と益々のご活躍をお祈り致します。

 
(大学院工学系研究科・工学部 柴田直哉)

古澤明 大学院工学系研究科・工学部 教授

古澤明教授

このたび、大学院工学系研究科・工学部の古澤 明教授が本年秋の紫綬褒章を受章されました。

古澤教授は、量子コンピューターにおける恒等演算に相当する量子テレポーテーションを、世界で初めて決定論的に動作させることに成功し、さらにその高性能化を図ってこられました。量子コンピューターでは、量子力学の黎明期にアインシュタインらによって指摘された量子もつれがそのパワーの源と考えられていますが、量子テレポーテーションは、その量子もつれを用いた最も基本的な量子演算あるいは量子通信プロトコルとなっています。量子テレポーテーションの名前は、量子力学の根幹にある不確定性原理と量子状態のクローン禁止定理の要請から、量子状態伝送時に送信者側で量子状態が消えねばならず、その様子を表すことに由来します。つまり、量子状態伝送では、送信者側で量子状態が消え、受信者側で現れるようなプロトコルしか許されないので、それがSFの「テレポーテーション」と同じことから名付けられました。量子テレポーテーションでは、量子もつれ状態にある2つの量子系において、片方の測定の影響が空間的に離れたもう片方に及ぶ性質を用いて、量子状態伝送を可能にしています。したがって、量子テレポーテーションは、最も簡単な量子コンピューターと考えることができます。そして、量子テレポーテーションの手法を応用すれば、ユニバーサルな量子コンピューターが作製可能とされています。古澤教授はこれらを追求され、多くの成果を挙げてこられました。

これらの先駆的な研究業績に対し、「東京テクノ・フォーラム」ゴールド・メダル賞、久保亮五記念賞、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞、International Quantum Communication Award、Palacky University Medal、東レ科学技術賞を受賞されています。

この度のご受章を心よりお祝い申し上げますとともに、今後のご健勝とますますのご活躍をお祈りいたします。

 
(大学院工学系研究科・工学部 長谷川達生)

水野哲孝 大学院工学系研究科・工学部 教授

水野哲孝教授

このたび、水野哲孝教授が、本年度秋の紫綬褒章を受章されました。

我々の持続可能な社会の実現のためには、効率よくかつ無駄なものを一切出さないものづくりの技術や反応開発が切望されていますが、その実現のためには真に力量ある触媒の開発が必要不可欠です。水野教授は、特に固体触媒(ポリオキソメタレート、結晶性酸化物、金属ナノ粒子など)における活性点および周辺構造を精密に設計する必要性を早くから提唱し、固体触媒を原子・分子レベルで精密設計する独自の手法を世界に先駆けて開発してきました。水野教授は独自に設計した触媒を用いて数々の高効率反応や新反応も実現されました。重クロム酸、過マンガン酸などを含む重金属塩、次亜塩素塩、硝酸などの酸化試薬を用いて行われてきたいくつかの酸化反応を、開発した触媒を用いることによって、地球上に無尽蔵に存在する空気(酸素)あるいは過酸化水素を酸化剤とする新反応に置き換えることに成功しています。例えば、過酸化水素有効利用率100%・選択性100%のオレフィンのエポキシ化反応、空気を酸化剤・アンモニアを窒素源としたアルコールのアンモ酸化やアミド化反応、空気を酸化剤とする酸化クロスカップリング反応などが代表的な例です。空気や過酸化水素を酸化剤として用いると反応後は水のみが副生成物となるため、これまでに深刻な問題であった重金属塩の処理などは一切回避できます。

これらの研究業績に対し、日本化学会賞、触媒学会賞、石油学会賞など数多くの賞を受賞されています。また水野教授は、内閣府の最先端研究開発支援プログラムの中心研究者として、蓄電池開発に関する研究にも注力され、現行のリチウムイオン電池の数倍の蓄電電気量が可能な蓄電デバイスを提案されました。

このたびのご受章を心よりお祝い申し上げますとともに、今後の益々のご活躍をお祈り致します。

 
(大学院工学系研究科・工学部 山口和也)
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