平成30年度文化功労者顕彰

平成30年度文化功労者顕彰

江頭憲治郎名誉教授、塩川徹也名誉教授、宇井理生名誉教授が、文化功労者として顕彰されました。

江頭憲治郎 大学院法学政治学研究科・法学部 名誉教授

江頭憲治郎名誉教授

江頭憲治郎名誉教授が、平成30年度の文化功労者として顕彰されました。

江頭先生は、昭和44年に東京大学法学部助手として商事法研究のスタートを切られて以来、商事法を中心とする幅広い分野において画期的な業績を公表され学界をリードされるとともに、多くの後進の指導・育成に尽力されました。

先生の研究業績は商法の全領域に及び、しかも各分野において時代を画する大きな成果を挙げている点に特徴があります。『会社法人格否認の法理』(1980年)と『結合企業法の立法と解釈』(1995年)の2冊のモノグラフィーは、わが国の会社法学の水準を一挙に引き上げた業績として知られ、また長年の会社法研究の成果を取り入れた『株式会社法』は、学界・実務の双方において最も指導力のある体系書として版を重ねています(最新版は、2017年刊行の第7版)。また『商取引法』(最新版は2018年刊行の第8版)は、わが国の商取引に関する綿密な実態調査を踏まえた解釈論を展開する、それまでに類のない体系書として商取引の研究のあり方を変えるものでした。現代の商法学が、その領域の拡大とともにそれぞれが専門化していることを想起すると、このように商法学の全領域において卓越した研究業績を挙げられたことは、稀有のことと言わねばなりません。また方法論的にも、アメリカ法、ドイツ法等を対象とする機能主義に基づく比較法的研究という伝統的な手法を精緻に実践するのみならず、いちはやくファイナンス理論に目を向け、さらに近時は統計的・計量経済学的な実証分析の成果を取り入れ解釈論・立法論を展開するといった多彩かつ斬新な試みを数多くなされています。

先生は、このような学識をもとに、法制審議会・会社法(現代化関係)部会部会長として平成17年の会社法制定に尽力されるなど、わが国の立法や実務に多大な貢献をされました。そして平成21年に紫綬褒章を受章され、平成26年には日本学士院会員に選ばれております。

先生のこのたびのご顕彰を心よりお祝い申し上げるとともに、これからもますますお元気でご活躍くださることをお祈り申し上げます。

(大学院法学政治学研究科・法学部 藤田友敬)

塩川徹也 大学院人文社会系研究科・文学部 名誉教授

塩川徹也 名誉教授

このほど、塩川徹也名誉教授が平成30年度の文化功労者に選出されました。心からお慶び申し上げるとともに、塩川先生がこれまで積み重ねてこられた業績の偉大さに改めて思いを馳せずにはいられません。

先生はフランス17世紀文学、とりわけパスカルの専門家として数々の著作、論文を発表してこられました。出発点となった著作は、博士論文をフランスで刊行した『パスカルと奇蹟』(1977年、パリ、ニゼ書店)です。ソルボンヌ大学のジャン・メナール教授はその序文で、「テクストや資料の吟味における明晰な洞察力」を称賛し、それこそは時代や文化の違いを超えた理解を可能にする資質であると強調しています。塩川先生のその後の歩みはまさに、稀有な資質が豊かな果実を稔らせていく過程であったといえるでしょう。意欲的なフランス語論文を次々に発表するとともに、先生は日本語でも活発な著述活動を行い、日仏両国においてパスカル学の最先端を示し続けたのです。『パスカル 奇蹟と表徴』(1985年)、『虹と秘蹟 パスカル「見えないもの」の認識』(1993年)、学士院賞および和辻哲郎文化賞に輝いた『パスカル考』(2003年、以上はいずれも岩波書店刊)、『信仰と理性のあいだで』(パリ、シャンピオン書店)といった一連の著作は、日仏を往還する先生のたゆまぬ研鑽の賜物です。2009年には日本学士院会員に選出され、他方、フランス学士院は2014年、ピエール=ジョルジュ・カステックス賞を授与し先生の功績を称えました。さらに日本では、長年の研究成果を凝縮させた『パンセ』の清新な翻訳(2016年、岩波文庫全3巻)によって読売文学賞を受賞なさったのも記憶に新しいところです。

先生は日本フランス語フランス文学会会長を務められるとともに、日仏の学術交流のために心血を注いでこられました。われわれの仏文研究室において、幾多の学生たちに学問への愛と情熱を吹き込んでくださったことはいうまでもありません。深い感謝の念とともに、先生の変わらぬご活躍をお祈りいたします。 

(大学院人文社会系研究科・文学部 野崎歓)

宇井理生 大学院薬学系研究科・薬学部 名誉教授

宇井理生 名誉教授

このたび、宇井理生名誉教授が薬学・生化学・薬学教育の分野における多大な貢献により、平成30年度の文化功労者に顕彰されました。宇井先生は生体機能を司るホルモンなどの刺激が細胞内部に情報として伝えられる仕組みを明らかにし、特に受容体刺激を仲介するGTP結合タンパク質(Gタンパク質)の発見、同定に関して多数の重要な業績を上げられました。特筆すべきは、Gタンパク質活性を阻害することで毒性を発揮する百日咳毒素の研究を土台に、極めて独自性のある研究を展開して同分野を国際的に牽引されていたことです。この成果をもとに、Gタンパク質を介する情報伝達系の分子機構が次々に明らかにされ、生命の基本ともいえる細胞内情報伝達機構の研究の発展に尽力されてきました。

宇井先生は、本学在職中は評議員、退職後は理化学研究所特別招聘研究員、東京都臨床医学総合研究所長、徳島文理大学香川薬学部長、高崎健康福祉大学理事、薬学部長などを歴任され、宇井先生の深遠な研究哲学・教育理念は若手研究者を惹きつけ、これまでに数多くの人材を教育され、薬学・生化学分野に優秀な研究者を輩出されてきました。国内の細胞内情報伝達研究の興隆を支えたその御功績はまことに顕著です。

宇井先生はこれらの優れた業績に対して、これまでに上原賞、日本薬学会賞、学士院賞、ポール・エールリッヒ国際医学賞などを受賞されています。

このたびのご栄誉を心よりお祝い申し上げますとともに、益々のご健勝とご活躍を祈念いたします。

(大学院薬学系研究科・薬学部 北川大樹)
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