令和3年度東京大学学部入学式 祝辞(宗岡 正二 東京大学校友会 会長)

令和3年度東京大学学部入学式 祝辞

只今、ご紹介頂きました宗岡でございます。東京大学校友会を代表致しまして、東京大学に入学された皆様方に、心からお祝いを申し上げたいと存じます。また、入学生のご家族の皆様方にも、重ねてお祝いを申し上げます。本日は誠におめでとうございます。

まずもって、足下のコロナ禍の最中にかかわらず、このような形で入学式を執り行うことができましたことは、総長はじめ学内の関係者の皆様方のご尽力によるものと心から感謝を申し上げたいと存じます。

新入生の皆さんは、この春の東京大学入学と同時に、全員が東京大学校友会の新たな仲間になられました。校友会会長として、新会員の皆さんを心から歓迎致します。

さて、ここで皆さんに東京大学校友会を少し紹介させて頂きたいと思います。東京大学校友会は、個人会員と団体会員からなる全学同窓組織であり、2004年に発足致しました。本年で発足17年となります。個人会員では、すべての在学生、教職員と存命の卒業生、合わせて20数万人に及ぶ、大変大きな組織であり、加えて、団体会員としても、学部や学科の同窓会、国内外の地域同窓会、運動部やサークルのOB会・OG会等々、311もの団体が登録されております。

校友会の活動と致しましては、卒業生向けのイベントのみならず、近年は、新入生の学年会や、学部3年生の就職活動のための面接演習等、在学生を支援する活動も拡充してきております。本年度は、10月のホームカミングデイに合わせて、今年入学された皆さんの学年会を行う計画がございます。文系・理系や科類を超えた同期生との交流、大学の先生や先輩、卒業生との懇談の場として、この秋の学年会に皆さんが多数参加されることを期待しております。

また、東京大学校友会は、海外35か国・地域にも多くの会員を有するグローバル・コミュニティであり、性別、年齢、国籍を問わない、極めて多様な人材の宝庫であります。この素晴らしいコミュニティで、皆さんの在学ないし留学中、さらには卒業後の長い人生におきまして、東京大学の仲間との交友を広げて頂きたいと思います

さて、次に、簡単に私の自己紹介をさせて頂きたいと思います。半世紀前の1970年に農学部農業経済学科を卒業し、鉄鋼メーカーである当時の新日本製鐵に一期生として入社致しました。社長・会長を経て、現在、日本製鉄 相談役を務めております。大学で柔道部におりましたことから、この日本武道館は、学生時代に選手として試合に臨んだ場所であり、また不祥事に揺れた全日本柔道連盟の立て直しを要請され、2013年から4年間、全日本柔道連盟会長を務めた際には、全日本柔道選手権大会を会長として主催致した場所でもあります。このように、この入学式の会場は、私にとりましても誠に馴染みの深い会場であります。

また、私が東京大学柔道部員であった当時、柔道部長をお願いしていたのが伊藤正己(いとう まさみ)法学部長で、部員一同、大変親身にご指導頂きました。先生は、のちに最高裁判事に就任され、また文化勲章をも受章されるなど、英米法及び憲法の日本の権威でもあられました。

伊藤先生の座右の銘は、論語にある「和して同ぜず」でありました。「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」の一節ですが、「君子、すなわち、立派な人は、いつも協調的であるが、大事な局面では自分自身の意見をしっかり述べることが出来る。小人、すなわち、つまらない人は、自分自身の意見を持たないので、付和雷同するが、喧嘩ばかりしている」との意味で、「しっかり勉強し、自分の意見を持ちなさい」という訓えであります。私の尊敬する先生のこの座右の銘を、皆さんにも是非身につけて頂きたいと思います。

さらに、もう一つ、皆さんに身につけて頂きたいのが「ノブレス・オブリージュ」の精神であります。「ノブレス・オブリージュ」とは、欧米社会における基本的な道徳律であります。古くから貴族制度が根付いていた欧州を起源とする概念ですが、「身分の高い者はそれに応じて果たさなければならぬ社会的責任と義務がある」というもので、欧米の騎士道精神の根幹をなすものであります。新渡戸稲造が、彼の書いた「武士道」の中で、日本の武士道精神にも通ずるものであると解説しています。

皆さんは、これから皆さんが進む分野において、将来、この国のみならず、国際的なリーダーとなることが大いに期待される人達であります。皆さんには、知力、気力、体力に加え、人としての倫理観をも併せ持った、万国共通の真のリーダーになってもらいたいと思っています。

先ほどの「和して同ぜず」とこの「ノブレス・オブリージュ」を心に刻み、これからの4年間を過ごして頂きたい。色々な事柄を学び、多くの人と出会い、視野を広げ、知性と感性に加え、品性をも磨いて頂きたい。皆さんが単なる「頭の良い東大卒業生」で終わらぬよう、東大校友会20万人のOB・OGもお手伝いしていきたいと思っております。

最後になりますが、皆さんの東京大学への入学を心からお祝い申し上げます。皆さんご自身も、これまで皆さんを育ててくれたご家族に感謝し、そして入学できた幸運にも心から感謝し、心豊かな人間に成長して頂きたいと思います。改めまして本日は誠におめでとうございます。

令和3年4月12日
東京大学校友会 会長
宗岡 正二

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