令和5年度東京大学大学院入学式 祝辞(宗岡 正二 東京大学校友会 会長)

令和5年度東京大学大学院入学式 祝辞

只今、ご紹介頂きました宗岡でございます。東京大学校友会を代表致しまして、東京大学大学院に入学された皆様方に、心からお祝いを申し上げたいと存じます。また、入学生のご家族の皆様方にも、重ねてお祝いを申し上げます。本日は誠におめでとうございます。

まずもって、3年にも及んだコロナ禍が収束に向かいつつある中で、このように入学式を盛大に執り行うことができましたことは大変喜ばしく、藤井総長はじめ学内の関係者の皆様方のご尽力に心からの感謝を申し上げたいと存じます。

東京大学以外の大学を卒業され、東京大学大学院に入学される方々におかれましては、今般の大学院入学と同時に、新たに東京大学校友会の会員になられました。校友会会長として、新会員の皆さんを心から歓迎致します。

まず、簡単に私の自己紹介をさせて頂きたいと思います。私は、およそ半世紀前の1970年に農学部農業経済学科を卒業し、鉄鋼メーカーである当時の新日本製鐵に一期生として入社致しました。社長・会長を経て、現在、日本製鉄 相談役を務めておりまして、2020年からは本学の全学同窓組織であります東京大学校友会の会長も務めております。

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、ここで改めて東京大学校友会について紹介させて頂きます。本日皆さんにお配りしていますリーフレットにも記載のとおり、東京大学校友会は、団体会員と個人会員及び家族会員からなる全学同窓組織であります。団体会員は、学部・学科・部局、運動部・サークルなどの同窓会、国内外の各地における地域同窓会等々、300を超える団体からなり、そして、個人会員は、すべての在学生、卒業生・修了生と教職員、合わせておよそ25万人で構成されております。また、昨年、家族会員を新設し、在学生の保護者の方々も、東大校友会のグローバル・コミュニティに加わることができることとなりました。

皆さんはこれから、それぞれ専門の研究に打ち込まれる一方で、そう遠くないうちに大学院修了後のキャリアについて、真剣に考えられることになると思います。引き続き学問を究めるキャリアを歩まれる方や起業を目指す方、あるいは就職を予定される方もいらっしゃるでしょう。そのような皆さんの多様なキャリア形成についても、東大校友会は積極的に協力・支援する体制を整えております。海外から留学されている方々に対する協力や支援も、今後一段と拡充して参ります。皆さんには、多様な人材の宝庫である東大校友会のグローバル・コミュニティを存分に活用頂き、皆さん自身の将来に役立てて頂ければと思います。

さて、皆さんが、これから専門の研究に取り組まれるにあたっては、幾多の困難な壁に遭遇されることがあろうかと思います。研究内容に関わる純粋にアカデミックな壁に直面することもあれば、コロナ禍のようなパンデミックや、格差社会・分断社会に起因する壁、更には、ロシアのウクライナ侵攻に見られるような、民主主義への挑戦、基本的人権の侵害等の影響が、皆さんの研究生活に及ぶ可能性も否定できない時代になって参りました。こうした困難な壁に直面したときに、皆さんに大事にして頂きたいことを申し述べたいと思います。

今からおよそ10年前、ニューヨークにおいて、当時ヤンキースの野球選手であった、「ゴジラ」こと松井秀喜さんと対談する機会に恵まれました。松井さんは、ヤンキース時代、1シーズン31本のホームランを放ち、これは2021年に大谷翔平選手に抜かれるまで、メジャーリーグにおける日本選手として最多のホームランでありました。また、ヤンキースに9年振りのワールドシリーズ優勝をもたらし、ワールドシリーズMVPにも選出された名選手であります。2013年には長嶋茂雄監督とともに国民栄誉賞を授与された、当時、日本最高峰のバッターであったことは皆さんご存じの通りです。

しかしながら、彼はそうしたことを微塵もひけらかさない、極めて礼儀正しく、落ち着き払った方でした。彼は、「3割打てれば一流のバッターと言われます。つまり一流のバッターでも7割は失敗しているのです。自分はこの7割の失敗を活かそうと考えてきました。」と言い、少年時代には、机の前に「努力できることが才能である」という額を掛けていたそうです。

皆さんも、今後の研究の過程において、一直線に成功に向かわれることはあまりなく、試行錯誤のなかで、きっと多くの失敗を経験されることになるでしょう。しかし、そうしたなかでも、失敗から学び、成功に向けた努力を絶やさない姿勢をぜひとも大事にして頂きたいと思います。

皆さんには、先ほど述べたような困難な壁に直面したときにも、仲間と励まし合い、初心を貫き、挑戦し続ける、強い精神力を持った真のリーダーになってもらいたいと思います。東大校友会としても、世代や国籍を問わず、いつでも、どこでも、皆さんを応援してまいりたいと考えています。

最後になりますが、皆さんの東京大学大学院へのご入学を心からお祝い申し上げます。皆さんご自身も、学問を究めると同時に、これまで皆さんを育み、支えてくれたご両親・ご家族に改めて感謝し、そして大学院で学べる幸運にも心から感謝する、そうした心豊かな人間に成長して頂きたいと思います。改めまして、皆さんが健康で充実した大学院生活を送られることを心から祈念致します。本日は誠におめでとうございます。

令和5年4月12日
東京大学校友会 会長
宗岡 正二

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