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第117回(平成25年春季)東京大学公開講座
「統計」

■開講にあたって

 統計というのは世界の歴史の中では比較的新しい考え方である。統計は事象を数えることから始まる。サイコロを振ると出る目は1から6であるが、それを何度も振るとき、正確にできたサイコロならば、どの目も6分の1の割合で出ることが期待される。この経験的な法則は、日常生活では統計とは意識されず理解されてきたと思われる。社会における統計の中で人口の統計は基本的なものである。ローマ帝国においても調べられていたが、社会現象を大量観測して法則性を発見し推測が可能になることを示したという意味では、1600年頃にイギリスのグラント(1620-1674)がロンドン市とその周辺の教会の埋葬と洗礼の記録を調べたことに源流がある。イギリスで埋葬と洗礼の記録が行なわれるようになったのは、1600年前後で、ペストの流行の影響を調べるためであったらしい。
 現在では統計が現れる場面は非常に多様である。日常生活において、新聞を開いても、テレビを見ても、視聴率、降水確率、合格率、投票率、経済成長率というように、パーセントであらわされた数字が表れる。これは過去のデータの評価のこともあるが、過去から未来を予測しようとする数値でもある。我々が現実をとらえようとするとき、我々は様々な統計を取ることから始めるのである。最近では、科学実験においても、経済や社会の実情の分析においても、巨大なデータを分析し、その意味を探る手法が極めて重要になっている。日常に現れる統計の意味を理解することは、毎日の暮らしにおいても、人生の選択においても必要になっている。
 今年2013年は、世界統計年(The International Year of Statistics)とされている。日本のこれまでの教育の中では統計の位置は確定したものではなく、高等学校の指導要領が統計を重視する方向に変わっているところであるが、統計への社会的な理解には不十分な面もあるように思う。
 本公開講座では、統計とはどういうものか、最先端の科学はどのようなデータに向き合っているか、我々は様々な数字をどのように理解していけばよいかなどを考えていきたい。
平成25年3月
第117回東京大学公開講座企画委員会
委員長 坪井 俊
(東京大学大学院数理科学研究科長)

開催日時・プログラム


SCHEDULE/PROGRAM
DAY1 | 統計とは何か
4月27日(土)
時間講義題目講師所属・職名
12:50-13:00開講の挨拶江川 雅子東京大学理事
13:00-13:50「統計ことはじめ」佐藤 俊樹総合文化研究科 教授
14:10-15:00「国勢調査の「美談」分析:国民イベントとしての人口統計」佐藤 健二人文社会系研究科 教授
15:20-16:10「新薬の開発と承認審査における判断 -科学か儀式か-」小野 俊介薬学系研究科 准教授
16:20-17:10総括討議竹村 彰通情報理工学系研究科 教授
DAY2 | データと戦う
5月25日(土)
時間講義題目講師所属・職名
13:00-13:50「日常生活下の大規模生体データとその統計」山本 義春教育学研究科 教授
14:10-15:00「新粒子発見?素粒子実験と統計」川本 辰男素粒子物理国際研究センター 准教授
15:20-16:10「マーケティングと統計」阿部 誠経済学研究科 教授
16:20-17:10総括討議常行 真司理学系研究科 教授
DAY3 | 暮らしと統計
6月1日(土)
時間講義題目講師所属・職名
13:00-13:50「世論調査は何を測るのか?」谷口 将紀法学政治学研究科 教授
14:10-15:00「国により単位の異なる所得や価格などを比較するにはどうするか」本間 正義農学生命科学研究科 教授
15:20-16:10「会社の『寿命』を測る」清水 剛総合文化研究科 准教授
16:20-17:10総括討議橋元 良明情報学環 教授
17:10-17:20閉講の挨拶坪井 俊企画委員長/数理科学研究科長

インターネット動画公開


UTokyo.TV

公開講座の講義をインターネットで公開しています。

統計ことはじめ佐藤 俊樹
2013年4月27日
国勢調査の「美談」分析:国民イベントとしての人口統計佐藤 健二
2013年4月27日
新薬の開発と承認審査における判断 -科学か儀式かー小野 俊介
2013年4月27日
新粒子発見?素粒子実験と統計川本 辰男
2013年5月25日
マーケティングと統計阿部 誠
2013年5月25日
国により単位の異なる所得や価格などを比較するにはどうするか本間 正義
2013年6月1日
会社の『寿命』を測る清水 剛
2013年6月1日

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