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第120回(平成26年秋季)東京大学公開講座
「恵み」

■開講にあたって

 人は独りでは生きていくことができない。誕生の瞬間から、親の愛と慈しみを受けて育ち、周囲から与えられる精神的、物質的な恵みに感謝することを通して社会性を身につけ、人として成長する。アリストテレスはこれを「人間はポリス的な動物である」と表現した。自らが授かる恵みに気づき感謝する、そしてそれが幸福の源であるとする教えは多くの宗教に共通する。しかし、現実には、人々の社会性に疑問を生じさせる事件は後を絶たず、宗教が苦しみを与えているようにしか見えない報道に接する。
 一方、人類は自然から様々な恵みを受けてきたが、これからも同じように享受し続けることができるだろうか。20世紀の大量消費社会は天然資源の利用を加速し、地球規模で自然環境を劣化させている。さらに、生物多様性の減少が顕在化し、これまで当然のように受け取っていた自然からの恵みの将来が不透明になってきた。こうした状況から、恵みの配分に関する国際的な関心が高まっている。
 このように恵みは健全な社会の実現にとって不可欠であるが、恵みの雨も過度になれば災害をもたらすように、状況や人々の価値観など数多くの要素を抜きに恵みを考えることはできない。人間社会から自然界にわたり様々な意味を込めて語られる恵みを人はどの様に捉え、さらにこれからどのように享受していこうとするのだろうか、さらにはそれを担保するために人は何をしなければならないのだろうか。この講座では、「恵み」をキーワードにしてこれからの社会の在り方を論じ合う。
平成26年10月
第120回東京大学公開講座企画委員会
委員長 古谷 研
(東京大学大学院農学生命科学研究科長)

開催日時・プログラム


SCHEDULE/PROGRAM
DAY1 | 人間と自然
11月16日(日)
時間講義題目講師所属・職名
12:50-13:00開講の挨拶江川 雅子理事
13:00-13:50「人は人にとっての恵みか:人間の『社会性』をめぐる政治思想」川出 良枝法学政治学研究科 教授
14:10-15:00「太陽光の恵み:農地と自然陸域生態系の光合成」寺島 一郎理学系研究科 教授
15:20-16:10「民俗学から考える動物の恵みと供養―『殺す』ことは罪か?」菅 豊東洋文化研究所 教授
16:20-17:10総括討議西村 明人文社会系研究科 准教授
DAY2 | 恵みの配分
11月24日(月)
時間講義題目講師所属・職名
13:00-13:50「『持続可能な開発のための教育(ESD)』と平和な国際社会の実現-『恵み』の配分を考える」北村 友人教育学研究科 准教授
14:10-15:00「『恵み』を後ろで支えるICT」越塚 登情報学環 教授
15:20-16:10「経済学から見た環境と天然資源の配分」前田 章総合文化研究科 教授
16:20-17:10総括討議岩月 純一総合文化研究科 准教授
DAY3 | 恵みの利用
12月13日(土)
時間講義題目講師所属・職名
13:00-13:50「さとやまの恵みとヒトの持続可能なくらし」鷲谷 いずみ農学生命科学 教授
14:10-15:00「海の恵みの持続的な利用にむけて」多部田 茂新領域創成科学研究科 教授
15:20-16:10「互酬と共生の経済学-コモンズを手がかりとして」丸山 真人総合文化研究科 教授
16:20-17:10総括討議柴田 德太郎経済学研究科 教授
17:10-17:20閉講の挨拶古谷 研農学生命科学研究科長

インターネット動画公開


UTokyo.TV

公開講座の講義をインターネットで公開しています。

人は人にとっての恵みか:人間の『社会性』をめぐる政治思想川出 良枝
2014年11月16日
太陽光の恵み:農地と自然陸域生態系の光合成寺島 一郎
2014年11月16日
民俗学から考える動物の恵みと供養―『殺す』ことは罪か?菅 豊
2014年11月16日
『持続可能な開発のための教育(ESD)』と平和な国際社会の実現-『恵み』の配分を考える北村 友人
2014年11月24日
「『恵み』を後ろで支えるICT越塚 登
2014年11月24日
経済学から見た環境と天然資源の配分前田 章
2014年11月24日
さとやまの恵みとヒトの持続可能なくらし鷲谷 いずみ
2014年12月13日
海の恵みの持続的な利用にむけて多部田 茂
2014年12月13日
互酬と共生の経済学-コモンズを手がかりとして丸山 真人
2015年12月13日

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