概要ABOUT
第136回(2023年春季)東京大学公開講座
少子化
第136回(2023年春季)東京大学公開講座
少子化
開催日時・プログラム
SCHEDULE/PROGRAM
時間 | 講義題目 | 講師 | 所属・職名 |
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12:50-13:00 | 開講の挨拶 | 勝野 正章 | 企画委員長/教育学研究科長 |
13:00-13:40 | 「高齢社会と少子化からのユニバーサルデザイン再考」 | 二瓶 美里 | 新領域創成科学研究科 准教授 |
13:50-14:30 | 「社会保障と「少子化対策」」 | 笠木 映里 | 法学政治学研究科 教授 |
14:40-15:20 | 「少子化と財政運営」 | 岩本 康志 | 公共政策学教育部 教授 |
15:35-16:25 | 総括討議 | 中村 尚史 | 社会科学研究所 教授 |
時間 | 講義題目 | 講師 | 所属・職名 |
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13:00-13:40 | 「少子高齢化社会と子どもの権利」 | 齋藤 宙治 | 社会科学研究所 准教授 |
13:50-14:30 | 「少子化と保育・幼児教育の課題」 | 野澤 祥子 | 教育学研究科 准教授 |
14:40-15:20 | 「サステイナビリティと人口減少―反出生主義へと向かわせるもの」 | 堀江 宗正 | 人文社会系研究科 教授 |
15:35-16:25 | 総括討議 | 川口 大司 | 公共政策学教育部 教授 |
時間 | 講義題目 | 講師 | 所属・職名 |
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13:00-13:40 | 「いのちの誕生を支える」 | 春名 めぐみ | 医学系研究科 教授 |
13:50-14:30 | 「家畜繁殖ーヒトによる命の管理と操作」 | 松田 二子 | 農学生命科学研究科 准教授 |
14:40-15:20 | 「家族<制度>を解体する―ソフィー・ルイスの議論を参考に」 | 飯田 麻結 | 教養学部附属教養教育高度化機構 特任講師 |
15:35-16:25 | 総括討議 | 阿部 公彦 | 人文社会系研究科 教授 |
16:25-16:35 | 閉講の挨拶 | 津田 敦 | 理事・副学長 |
インターネット動画公開
UTokyo.TV
2023年6月10日
2023年6月17日
2023年6月24日
過去の公開講座一覧
ARCHIVES
■開講にあたって
における社会経済活動の持続可能性への危惧が叫ばれるようになり、既に久しいものがあります。しかし、子どもを産みやすく、育てやすい社会への移行が唱えられ、種々の対策が講じられてきてはいるものの、少子化に歯止めがかかる様子は一向に見られません。厚生労働省によれば、新型コロナウイルス感染の影響を考慮する必要はありますが、2022年に日本で生まれた子どもの数は80人万を割り、統計開始以来最少を記録しました。
少子化の背景、原因については、様々な分析や議論が行われてきました。たとえば、男女を問わず進行する若年層の労働・経済環境の劣化と格差拡大、「イクメンブーム」がアイロニカルに示す子育て・家事負担の男女不平等などが、未婚・非婚、そして非自発的なものを含む子どもを産まないという選択の背景にあることが指摘されています。戦後の日本は、人口増加と経済・政府活動(行政サービス)拡大の好循環を経験しました。少子化は、この成長モデルを支えていた日本型企業社会が揺らいでいるにも関わらず、社会が子育てや家事といったシャドーワークに認める価値は低いままであることと深く関わっています。
現代社会において子どもを産み、育てるという営為には、普段私たちが自明視している意味や制度を問い直す契機が含まれています。たとえば、近年増加している生殖補助医療による妊娠・出産は、生物学的意味のみならず、法的・社会的な意味でも、従来の親子や家族という概念の再考を迫るものです。日本では、独身女性や同性カップルに対する人工授精や体外受精はほとんど行われていませんが、その背景には伝統的な家族観が存在しています。また、社会における子どもという存在の意味についても考えてみる必要があります。社会経済活動の持続性という観点のみから少子化の問題を捉えてしまうと、子どものウエルビーイング(well-being)は顧みられなくなってしまうかもしれません。
少子化という現代社会が直面している課題の背景・原因、影響、対策等について、様々な分野の学術的知見に基づいて多角的かつ根源的に考えることが、本講座のねらいです。そのため、「整える」「育む」「生まれる」という3つのサブテーマを設定しました。個々の講義の具体的な内容・テーマは、社会保障、財政運営、ユニバーサルデザイン、子どもの権利、保育・幼児教育、「反出生主義」、いのちの誕生、家畜の繁殖、家族制度の「解体」と多岐にわたります。人文・社会科学と自然科学の垣根を越えて、少子化という現象が差し出す数々の問いをともに考えましょう。
第136回東京大学公開講座企画委員会 委員長 勝野 正章
(教育学研究科長)