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第124回(平成28年秋季)東京大学公開講座
「仮想と現実」
開催日時・プログラム
SCHEDULE/PROGRAM
時間 | 講義題目 | 講師 | 所属・職名 |
---|---|---|---|
12:50-13:00 | 開講の挨拶 | 新井 洋由 | 企画委員長/薬学系研究科長 |
13:00-13:50 | 「バーチャル化する身体」 | 稲見 昌彦 | 先端科学技術研究センター 教授 |
14:10-15:00 | 「フィクションとシミュレーション」 | 三浦 俊彦 | 人文社会系研究科 教授 |
15:20-16:10 | 「新感覚の世界を生きる」 | 池谷 裕二 | 薬学系研究科 教授 |
16:20-17:10 | 総括討議 | 田中 久美子 | 先端科学技術研究センター 教授 |
時間 | 講義題目 | 講師 | 所属・職名 |
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13:00-13:50 | 「ロボット手術の歩む道」 | 野澤 宏彰 | 医学系研究科 特任講師 |
14:10-15:00 | 「教育におけるリアルとヴァーチャル」 | 小玉 重夫 | 教育学研究科 教授 |
15:20-16:10 | 「Human Augmentation:人間拡張とその未来」 | 暦本 純一 | 情報学環教授 |
16:20-17:10 | 総括討議 | 石井 和之 | 生産技術研究所 教授 |
時間 | 講義題目 | 講師 | 所属・職名 |
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13:00-13:50 | 「『現実を編集する』インタフェース」 | 鳴海 拓志 | 情報理工学系研究科 講師 |
14:10-15:00 | 「政治における現実と仮想」 | 加藤 淳子 | 法学政治学研究科 教授 |
15:20-16:10 | 「『現実』になった仮想通貨」 | 宮尾 龍蔵 | 経済学研究科 教授 |
16:20-17:10 | 総括討議 | 船津 高志 | 薬学系研究科 教授 |
17:10-17:20 | 閉講の挨拶 | 古谷 研 | 理事・副学長 |
インターネット動画公開
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2016年10月29日
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2016年11月19日
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■開講にあたって
しかしながら、往々にして革新的な技術には光と影の部分があることは、バーチャルリアリティの分野でも同様です。例えば、自動車免許を取得する際に、あらかじめ、バーチャルリアリティで訓練しておけば、スムースに実際の運転に入れるようになるかもしれませんし、実際には体験できない危険な運転もバーチャルリアリティで体験しておくことにより、意識の中に入れておくことも可能です。また、ダイエットを試みている人がすべて蒟蒻(こんにゃく)で出来た料理を食べても、バーチャルリアリティを使ってそれがステーキやロブスターを食べているように見えたらダイエットも無理なくこなせるかもしれません。そのように考えていくと、素人でもバーチャルリアリティ技術の可能性は無限大に広がっていくように思われます。その一方で、バーチャルリアリティと現実との境が分からなくなったり、バーチャルリアリティに徹夜でハマりすぎて嘔吐するほど体調に影響が現われることもあるようです。バーチャルリアリティ廃人という言葉が現実味も帯びてきそうです。
私たちは外界の出来事を五感でとらえ、体を動かすことによって外界に働きかけてきました。このため、我々が現実の世界として認知し、影響を及ぼすことのできる範囲は、古くは個体の大きさに限られていました。しかし、科学技術の進歩によりこの範囲はますます拡大し、近年のインターネットをはじめとするインフォメーションテクノロジーの発展により、地球上で起こる出来事ならば、ほぼリアルタイムで認知できるだけでなく、世界規模で個人が影響を及ぼすことができるようになりました。すなわち、個人の精神活動のネットワークが体を脱出し、インターネットと繋がることにより、地球を覆うようになりました。また、コンピューターサイエンスの進歩により、身体とか地球規模での気象といった複雑系でも数値計算により現象をシミュレーションできるようになってきました。これらの科学技術が作った世界をバーチャルリアリティとするならば、仮想と現実の境界が次第に曖昧になり、私たちの生活の中でバーチャルリアリティの占める割合が益々大きくなってきています。
今回の公開講座では、現在どのようなバーチャルリアリティが構築されているのか、将来はそれがどのように発展していくのか、バーチャルリアリティは実社会にどのような影響を及ぼし、私たちはどのように対応すべきなのかについて、文理の分野を超えて仮想と現実に関わっておられる講師の先生方のご発表をもとに皆さんと意見交換したいと思っております。
第124回東京大学公開講座企画委員会
委員長 新井 洋由
(東京大学大学院薬学系研究科長)