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第137回(2023年秋季)東京大学公開講座
科学と美

■開講にあたって

 自然法則は、驚くほどシンプルで美しい方程式で表されることがあります。また、人々が美しいと感じる芸術作品や建築物は、数学的、科学的法則に従っていることもよくあります。
前者の例としては、ニュートンの万有引力の法則F=Gm1m2/r²やアインシュタインの有名な法則E=mc²が挙げられます。このような簡単な式で、物質同士が引き合う力や、物質の質量とエネルギーの関係が記述できるというのは、実際驚くべきことです。後者の例としては、ピラミッドやパルテノン神殿、モナ・リザの顔が1:1.618の黄金比に従っていることが挙げられるでしょう。
 曖昧さを許さず真実を探ろうとする科学と、人々の感覚に訴える芸術などの美は、対極に位置するとも考えられます。しかし、ある意味対極に位置しながらも、科学と美は相互に深く関わっているようです。
 多くの科学分野に理論的基礎を提供する数学は、それ自体美しい体系を持っています。まず、論理の展開はそれ自体が美しいと言えます。また、定理を導く証明は美しいほど価値が高いと考えられています。数学が持つ美を探ることは、それ自体がまず楽しい作業です。
 また、理論物理学における数学的美を探るのも興味深いし、実験物理学においても、理論が予測する物理法則を成功裡に検証する実験方法は独創的で美しいものです。もちろん科学における美は数学や物理学にとどまらず、化学や工学、情報科学、そして人文社会科学にも見出されます。
 芸術や音楽の中に存在する科学を探究するのも、楽しい作業です。黄金比に代表されるように、人々が美しいと感じるものに、ある一定の科学的、もしくは数学的法則が存在していることがあります。美を作り出す芸術家や建築家が、無意識にそうした法則に従っているのか、それとも意識的に科学を取り入れているのか、とても興味深い問いです。
 今回の公開講座では、主に科学の中に潜んでいる美を探ることにより、科学と美の関係について考えていきます。「視覚に訴える美」、「理性に訴える美」、「感性に訴える美」というサブテーマのもと、9名の講師の方々が日々の研究の中に見ている美を紹介します。本公開講座の機会を捉え、科学の中の美を鑑賞していきましょう。
2023年11月
第137回東京大学公開講座企画委員会  委員長 古澤 泰治
(経済学研究科長)


第137回(2023年秋季)東京大学公開講座

科学と美

開催日時・プログラム


SCHEDULE/PROGRAM
DAY1 | 視覚に訴える美
11月11日(土)
時間講義題目講師所属・職名
12:50-13:00開講の挨拶古澤 泰治企画委員長/経済学研究科長
13:00-13:40「物理素材の特性を活かしたインタラクションと表現」筧 康明情報学環 教授
13:50-14:30「ゲーテの『色彩論』から広がる地平」石原 あえか総合文化研究科 教授
14:40-15:20「流れが造る機能美」長谷川 洋介生産技術研究所 教授
15:35-16:25総括討議渡邉 英徳情報学環 教授
DAY2 理性に訴える美|
11 月18日(土)
時間講義題目講師所属・職名
13:00-13:40「身の回りに潜む対称性」松井 千尋数理科学研究科 准教授
13:50-14:30「振動反応が創り出す生物リズムの美」樋口 秀男理学系研究科 教授
14:40-15:20「美しい数学の世界」伊藤 由佳理カブリ数物連携宇宙研究機構 教授
15:35-16:25総括討議岩田 覚情報理工学系研究科 教授
DAY3 | 感性に訴える美
11月25日(土)
時間講義題目講師所属・職名
13:00-13:40「中国音楽における科学と美学」田中 有紀東洋文化研究所 准教授
13:50-14:30「すべては遊びから始まる──ゲーム研究の現在地」吉田 寛人文社会系研究科 准教授
14:40-15:20「人工知能は美や感性を理解するのか」山崎 俊彦情報理工学系研究科 教授
15:35-16:25総括討議横山 広美カブリ数物連携宇宙研究機構 教授
16:25-16:35閉講の挨拶津田 敦 理事・副学長
※プログラムの変更もしくは休講する場合があります。

※オンライン配信はおこないません。すべての講座はありませんが、開催後、東大TVにて視聴できますので、そちらをご視聴ください

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