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第119回(平成26年春季)東京大学公開講座
「人間は進歩しているか?」

■開講にあたって

 パブロ・ピカソに「芸術はそれ自体、発展することはない。思想が変り、それとともに表現形式が変るのである」という言葉があります。世の中は芸術を中心に回っているわけではないかもしれませんが、地球温暖化や人口爆発などの問題を鑑みるに、進歩史観を盲信する時代はもはや過ぎ去ったとは言えるでしょう。ローマクラブは、すでに1970年代の初頭に「成長の限界」を主張していますし、環境汚染や原発事故、繰り返される経済危機、戦争・紛争、サイバーテロ、インターネットを介したプライバシー侵害など、時代とともに悪化するものごとも多くあります。科学技術の進歩がそのまま人間の進歩に重ならないことは、世の中で繰り返し主張されているところですが、科学技術の進歩をどう制御していけばよいかについては、実効性の高い議論がなされているとは言いがたいのではないでしょうか。
 本学が対象とする学問分野には広大なスペクトルがあります。今回の東京大学公開講座では、その広がりのさまざまな領域を代表する専門家に登壇いただき、それぞれの目で見た「人間の進歩」について語っていただく中で、専門分野の違いや考え方の違いによって人類の現状と未来がどのように違って見えているのか、そこにどういう問題があるのか、明らかにすることを試みます。その上で、人間にとって真の進歩とは何か、それはどうやったら達成できるのかを論じてみたいと思います。ここでは、文系と理系、実学と虚学、基礎科学と応用科学など、目にとまりやすい対比だけではなく、より深い思想や実社会での実践に根ざした議論がなされるようにしたいと考え、選りすぐりの登壇者を用意させていただきました。各回で、技術、医療、経済といちおうテーマを分けてはいますが、場合によっては、それぞれが背負っている分野の利害を超えて、登壇者個人の本音を語り合っていただくのも良いかもしれません。
平成26年2月
第119回東京大学公開講座企画委員会
委員長 坂井 修一
(東京大学大学院情報理工学系研究科長)

開催日時・プログラム


SCHEDULE/PROGRAM
DAY1 | 科学技術は制御可能か?
4月26日(土)
時間講義題目講師所属・職名
12:50-13:00開講の挨拶坂井 修一情報理工学系研究科長
13:00-13:50「進歩か進化か:科学・技術・人文・社会科学に於ける発展とは?」太田 勝造法学政治学研究科 教授
14:10-15:00「沿岸域の防災・環境と向き合う人間の進歩」佐々木 淳新領域創成科学研究科 教授
15:20-16:10「複雑巨大システムの安全をどう確保したらよいのか」古田 一雄工学系研究科 教授
16:20-17:10総括討議 鍵 裕之理学系研究科 教授
DAY2 | 身体とこころ
5月24日(土)
時間講義題目講師所属・職名
13:00-13:50「遺伝子から考える人類の進歩」徳永 勝士医学系研究科 教授
14:10-15:00「ヒト進化から考える人間の進歩」近藤 修理学系研究科 准教授
15:20-16:10「発達心理学から見た人間の進歩-人の子育ては進歩しているか?-」遠藤 利彦教育学研究科 教授
16:20-17:10総括討議遠山 千春医学系研究科 教授
DAY3 | 経済の発展は人類を幸福にしたか?
5月31日(土)
時間講義題目講師所属・職名
13:00-13:50「現代社会に生きる人間の生態」梅崎 昌裕医学系研究科 准教授
14:10-15:00「人間は経済危機を制御できるか?」柴田 徳太郎経済研究科 教授
15:20-16:10「経済学の『進歩』と経済危機」飯田 敬輔法学政治学研究科 教授
16:20-17:10総括討議寺谷 広司法学政治学研究科 教授
17:10-17:20閉講の挨拶江川 雅子理事

インターネット動画公開


UTokyo.TV

公開講座の講義をインターネットで公開しています。

進歩か進化か:科学・技術・人文・社会科学に於ける発展とは?太田 勝造
2014年4月26日
沿岸域の防災・環境と向き合う人間の進歩佐々木 淳
2014年4月26日
複雑巨大システムの安全をどう確保したらよいのか古田 一雄
2014年4月26日
遺伝子から考える人類の進歩徳永 勝士
2014年5月24日
ヒト進化から考える人間の進歩近藤 修
2014年5月24日
発達心理学から見た人間の進歩-人の子育ては進歩しているか?-遠藤 利彦
2014年5月24日
現代社会に生きる人間の生態梅崎 昌裕
2014年5月31日
人間は経済危機を制御できるか?柴田 徳太郎
2014年5月31日
経済学の『進歩』と経済危機飯田 敬輔
2014年5月31日

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