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クリームイエローの表紙にオリーブグリーンの帯

書籍名

日本立法資料全集 国家賠償法 [昭和22年]

著者名

宇賀 克也

判型など

444ページ、菊判変

言語

日本語

発行年月日

2015年2月23日

ISBN コード

9784797230116

出版社

信山社

出版社URL

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学内図書館貸出状況(OPAC)

国家賠償法 [昭和22年]

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本書は、信山社の日本立法資料全集の一環をなすものとして、1947 (昭和22) 年に制定された国家賠償法の立法過程の資料を収集し、整理・分析したものである。もっとも、戦後間もなくの立法であったため、立法過程の資料の収集は容易ではなかった。一般的には、内閣提出法案の閣議決定前に審議会等において法案の要綱ないし骨子作成のための検討が行われ、その議事録が作成・保存されるので、それが立法過程を理解するためのもっとも基礎的な資料になる。国家賠償法の場合、司法法制審議会第2小委員会で立案作業が行われたが、戦後間もなくの時期であったため、議事録が作成されたか否かも定かではなく、仮に作成されていたとしても、政府は保存しておらず、国立公文書館に移管されてもいなかった。そのため、それ以外の法案策定過程の資料を探索しなければならなかった。それらについても、政府として組織的に保存を意図していたわけではなく、立法過程に関与した方が個人的に保存されていたものの寄贈文書を中心に立法過程を検証する必要があった。
 
とりあけ有益であったのが、司法法制審議会第2小委員会に委員として参画された我妻栄博士が、東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法制史料センターに寄贈された「我妻栄関係文書」と同委員会に司法省事務官として関与された小澤文雄氏が法務図書館に寄贈された「小澤文雄関係文書」であった。これらの文書は、もともと個人的に所蔵されていたものであったため、書込みがなされているものも少なくなかった。このような個人的な書込みも、立法過程を認識するうえで有益と思われるので、本書では、書込みを含めたかたちで収録した。
 
占領期には、内閣提出法案を国会に提出するためには、GHQの承認が必要であった。国家賠償法についても、GHQへの説明がかなりの回数行われ、その際の質疑応答の資料は、日本においても見出すことができた。しかし、アメリカには、さらに詳しい資料があるのではと考え、メリーランド州にある国立公文書館分館を訪問し、調査を行ったところ、整然と分類されたかたちで国家賠償法関係資料がマイクロフィルムで保存されていた。そこで、本書では、アメリカ国立公文書館所蔵の資料も収録している。本書IIでは、国家賠償法案の国会での審議録も収録している。それは、何よりも、同法案での国会審議の質がきわめて高く、また、衆参の司法委員会で修正案が提案され、参議院司法委員会では、国家賠償法3条の修正案が可決されており、立法過程の資料として貴重であるからである。本書IVでは、国立国会図書館憲政資料室所蔵の「佐藤達夫関係文書」の関連資料を掲載し、立案担当者である小澤文雄氏が参加された国家賠償法に関する座談会、司法法制審議会第2小委員会に委員として参加された田中二郎博士が立法過程を回顧された小論も収録した。本書Vでは、国家賠償法案作成過程で政府が用いた参考資料を掲載している。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 宇賀 克也 / 2018)

本の目次

第1部  解説編
  第1章  国家賠償法案の立法過程
  第2章  資料解題
第2部  資料編
  I  法案作成過程
  II  第1回国会審議
  III  正文
  IV  その後
  V  参考資料
 

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