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書籍名

法改正に対応すべき実務がわかる! 自治体職員のための 2021年改正個人情報保護法解説

著者名

宇賀 克也 (編著)、 宍戸 常寿、 高野 祥一 (著)

判型など

360ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2021年11月9日

ISBN コード

978-4-474-07652-5

出版社

第一法規

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2021年改正個人情報保護法解説

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2021年 (令和3年) に、わが国の個人情報保護法制は大きな変革を受けた。すなわち、従前、わが国では、民間部門の個人情報保護を規律する「個人情報の保護に関する法律」のみならず、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」および「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」が存在したが、同改正によって、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」および「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」は廃止され、その内容は、修正を受けた上で「個人情報の保護に関する法律」に統合された。もっとも、民間部門と公的部門の個人情報保護に関する規律が同じオムニバス方式に転換したとはいえない。なぜならば、民間部門の個人情報保護に関する規律は「個人情報の保護に関する法律」4章、公的部門の個人情報保護に関する規律は同法5章で規定されており、両者の規律は異なるからである。

わが国の個人情報保護法制は、分権的個人情報保護法制を採用していた点でも特色があった。すなわち、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」は、国の行政機関の保有する個人情報についてのみ適用され、地方公共団体および地方独立行政法人の保有する個人情報については適用されなかった。地方公共団体および地方独立行政法人の保有する個人情報については、各地方公共団体の個人情報保護条例で規律されていたのである。しかし、同年の改正で、地方公共団体および地方独立行政法人の保有する個人情報の保護についても、「個人情報の保護に関する法律」5章の規律が適用されることになった。もっとも、地方公共団体は、一部、個人情報保護条例で、地域の特性に応じた規律を行うことを認められている。
 
本書は、大きな変革を受けた新たな「個人情報の保護に関する法律」の解説を行ったものである。序章では、個人情報保護法制の一元化の意義について解説している。第1章では、わが国の個人情報保護法制の展開を概観した後、2021年の個人情報保護法改正の内容について全体的に解説を行っている。第2章では、2021年の個人情報保護法の改正が、地方公共団体の実務に与える影響を中心に論じている。
 
本書は、主として、自治体職員が、同改正の内容を理解し、必要な対応を行うための参考となることを念頭に置いたものであるが、全体に平易明解に執筆されており、研究者、学生、国家公務員、民間企業の法務担当者、弁護士の方等にとっても、十分にお役に立てる内容となっており、広範な方々に参考にしていただければ幸いである。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 名誉教授 宇賀 克也 / 2022)

本の目次

序章 個人情報保護法制の一元化の意義
1 従前の法制
2 個人情報保護に関する3法律の一本化
3 地方公共団体または地方独立行政法人の保有する個人情報の保護に関する共通ルールの設定
4 学術研究と医療事業に係る個人情報保護
5 学術研究目的での個人情報の取扱いに係る適用除外の見直し
6 十分性認定との関係
 
第1章 個人情報保護法制の展開と令和3年改正の概要
1 はじめに
2 令和3年改正以前の個人情報保護法制
   (1) プライバシー保護の要請の高まりと地方公共団体による先行
   (2)平成15年法
      (ア) 平成15年法制定に至る経緯
      (イ) 平成15年法の下での個人情報保護法制の概要
   (3) 平成27年改正法
      (ア) 平成27年改正法制定に至る経緯
      (イ) 平成27年改正法の概要
      (ウ) 行政機関個人情報保護法等平成28年改正
   (4) 令和2年改正法
      (ア) 令和2年改正法制定に至る経緯
      (イ) 令和2年改正法の概要
3 令和3年改正以後の個人情報保護法制
   (1) 令和3年改正法の検討に至る経緯
      (ア) 行政機関個人情報保護法・独立行政法人等個人情報保護法と個人情報保護法の一元化の要請の高まり
      (イ) 個人情報保護法制の変容の地方公共団体等に対する影響
      (ウ) デジタル化の推進と地方公共団体の個人情報保護法制の見直し
   (2) 官民を通じた個人情報保護法制の見直し
      (ア) 「個人情報保護制度の見直しに関する検討会」の設置
      (イ) 中間整理と地方公共団体の個人情報保護法制の検討
      (ウ) 最終報告の概要
   (3) 個人情報保護法令和3年改正
      (ア) デジタル改革と個人情報保護法改正
      (イ) デジタル改革関連法案の国会審議と成立
   (4) 令和3年改正法の内容
      (ア) 新たな個人情報保護法制の全体構造
      (イ) 公的部門に対する令和3年改正法の適用関係
      (ウ) 行政機関等における規律
      (エ) 学術研究分野における規律
      (オ) 全国的な共通ルールの設定と地方公共団体における個人情報保護法制
      (カ) 個人情報保護委員会による監視
4 結びに代えて
   (1) 令和3年改正法の意義と課題
   (2) 令和3年改正法の施行準備
 
第2章 自治体の実務への影響と法改正に伴う例規整備のポイント
1 はじめに
2 法改正により地方公共団体の個人情報保護制度に生じる影響
   (1) 総論
   (2) 基本的な考え方
   (3) 具体的な影響内容
      (ア) 目的 (1条)
      (イ) 定義、行政機関等における個人情報等の取扱い
      (ウ) 個人情報の取扱い
      (エ) 開示、訂正及び利用停止
      (オ) 審査請求
      (カ) 条例との関係
      (キ) 行政機関等匿名加工情報の提供等
      (ク) 適用除外等 (124条)
      (ケ) 地方公共団体に置く審議会等への諮問 (129条)
      (コ) 個人情報保護委員会による行政機関等の監視等
      (サ) 施行期日
3 地方公共団体等における例規整備
   (1) はじめに
   (2) 基本的な考え方
   (3) 例規整備が必要な事項とその内容
      (ア) 条例で定める必要がある事項
      (イ) 条例で定めることができる事項
      (ウ) 規則、要綱等について
4 おわりに
 
資料編 個人情報の保護に関する法律 (平成15年5月30日法律第57号)
改正内容:令和3年5月19日法律第37号 (公布の日から起算して2年を超えない範囲内において、各規定につき、政令で定める日)

関連情報

書評:
巽智彦 (東京大学准教授) 評 (『政策法務Facilitator』73号、p.28 2022年1月30日)
https://researchmap.jp/t-tatsumi/published_papers/36386863/attachment_file.pdf
 
ウェビナー
自治体職員のための『改正個人情報保護法』オンラインセミナー (2022年10月11日 第一法規株式会社)
https://www.daiichihoki.co.jp/seminar/jichi/20220906/index.html

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