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ブルー系のタイル模様の表紙

書籍名

行政法概説I 行政法総論 [第8版]

著者名

宇賀 克也

判型など

574ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2023年8月

ISBN コード

978-4-641-22853-5

出版社

有斐閣

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行政法概説 I 行政法総論

その他

第5版: 2013年9月発売 (更新2023年8月)

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本書の特色として一般に指摘されているのは、情報量の多さである。確かに、取り上げている裁判例、引用している法令の数は、類書よりもはるかに多い。また、国の法制度のみならず、重要な条例も対象にしている点も特色といえよう。「概説」ではなく「詳説」という名称にすべきという意見もあるが、著者としては、行政法で論ずべきことは膨大であり、そのエッセンスを対象にしているにすぎないので、「概説」という書名を維持するつもりである。
 
本書が、行政法の体系書としてオリジナリティを有すると考えているものを、いくつか挙げると以下のようになる。第1に、行政文書の取得・管理 (開示・公表を含む)・廃棄または国立公文書館等への移管とそこでの利用というライフサイクル全体を視野に入れた体系を示したことである。従前、行政手続との関係で論じられてきた申請・届出も行政情報の取得の一形態として位置づけている。また、公文書管理法を一般法として、行政機関情報公開法、行政機関個人情報保護法を特別法として位置づける視点を提示した。さらに、従前、もっぱら労働法の問題としてとらえられてきた公益通報者保護制度、もっぱら独禁法の問題としてとらえられてきた課徴金減免制度も、行政情報の取得法制としても重要な意味を有することを指摘し、これを行政情報の取得法制の中で位置づけた。歴史公文書等の国立公文書館等への移管とそこでの利用によるアカウンタビリティの確保についても、初めて取り上げた。
 
行政の行為形式論では、かつては、行政法学の肝として位置づけられてきた行政行為の効力論、特に公定力論を排除し、実定法制に即した説明に徹した点も特色といえよう。行政行為に公定力のような効力が内在しているわけではないことには、今日、広範な合意があるにもかかわらず、いまだに行政法の体系書では、公定力という用語を用いた説明が広くみられる。著者は、このような説明は、読者に、行政行為にアプリオリにかかる効力が備わっているという印象を与え、土地収用法133条の当事者訴訟についての形成効説のような無益な議論を惹起する点で、弊害が大きいと考えている。そこで、一般に行政救済論で説明される取消訴訟の排他的管轄論を、公定力論に代えて、行政行為の箇所で説明することを試みている。
 
行政手続に関して、著者は、行政情報化が政府の目標とされた1990年代から、行政手続のオンライン化が、書面を前提とした行政手続に関する法制度・法理にいかなる変容をもたらすかに関心を抱き続けてきた。そのため、行政手続のオンライン化の問題を行政手続の箇所で取り上げ、行政手続のオンライン化がもたらす解釈上の問題も指摘した。また、新たな住民参加の方式としての諮問型世論調査等、行政法理論上注目されるが、類書では取り上げられていない制度をコラム欄等で積極的に取り上げ、行政法理論の発展の触媒とすることを期待している。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 宇賀 克也 / 2016)

本の目次

第1部 行政法の基礎理論
 序 章 行政法の特色
 第1章 行政法の法源
 第2章 行政法の効力
 第3章 法律による行政の原理
 第4章 行政法の一般原則
 第5章 行政法と民事法
 第6章 行政過程における私人
第2部 行政活動における法的仕組み
 第7章 行政活動の類型
 第8章 規制行政における主要な法的仕組み
 第9章 給付行政における主要な法的仕組み
 第10章 行政資源取得行政における主要な法的仕組み
 第11章 誘導行政における主要な法的仕組み
第3部 行政情報の収集・管理・利用
 第12章 行政情報の収集
 第13章 行政情報の管理と行政的利用
 第14章 行政情報の公開
第4部 行政上の義務の実効性確保
 第15章 行政上の義務履行強制
 第16章 行政上の義務違反に対する制裁
第5部 行政の行為形式
 第17章 行政基準
 第18章 行政計画
 第19章 行政行為
 第20章 行政契約
 第21章 行政指導
第6部 行政手続
 第22章 行政手続法
 第23章 行政手続に関するその他の問題
 

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2023年8月第8版発売

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