
書籍名
個人情報の保護と利用
判型など
382ページ、A5判、並製カバー付
言語
日本語
発行年月日
2019年11月
ISBN コード
978-4-641-22778-1
出版社
有斐閣
出版社URL
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本書は、個人情報の保護と利用に関する多様な問題について論じている。
第1章第1節では、医療に係る個人情報の特色について論じ、医療に係る特別法の制定が必要であるか、必要であるとした場合、いかなる内容が規定されるべきかについて論じている。第1章第2節では、医療ビッグデータの保護と利用という観点から、次世代医療基盤法について論じている。
第2章第1節では、消費者保護の観点から、既存の個人情報保護法制の問題点を指摘し、第2章第2節では、EU一般データ保護規則 (GDPR) で導入されたデータ・ポータビリティ権について、分析を行っている。データ・ポータビリティ権については、若干の先行研究はあったものの、論じられていなかった点が多かったため、深掘りした研究の必要性を感じたため、包括的な研究を行ったものである。本論文では、この権利が、むしろ新規事業者が利用者を囲い込むことが困難になり競争を阻害するという議論があることなどから、競争法の視点も視野に入れた分析を行っている。さらに、情報アクセス権との観点からの長短も検討している。
第3章では、いじめ、体罰、試験等の教育に関する個人情報の保護と利用について論じている。
第4章では、グローバル化が進行する中で、個人情報保護法制を域外適用する立法管轄権は、どの範囲で認められるのかについて、既存の法制の考え方を踏まえた検討を行っている。
第5章では、検索サービスにより、過去の情報が半永久的に検索されうることから、最近、盛んに論じられている「忘れられる権利」の問題について、国際的動向、わが国の裁判例を検討して、解釈上の論点を明確にして、私見を提示している。
第6章では、統計法の2007年の全部改正および2018年の一部改正により、統計情報を保護しつつ、それを社会の情報基盤として有効活用する統計法制度改革が実現したことについて論じている。
第7章では、弁護士法23条の2の規定に基づく弁護士会照会に関する最高裁判決の検討を通じて、弁護士会照会に対する報告を受けることについて弁護士会が有する利益の法的性質について検討している。
第8章では、宇治市住民基本台帳漏えい事件に関する裁判例の検討を通じて、個人情報の漏えいに対する法的責任について検討している。
第9章では、自己情報の開示請求に対する一部開示決定の取消訴訟における主観的出訴期間の起算点は、一部不開示決定の通知を受けた時点と解すべきか、それとも一部開示が実施された時点と解すべきかという訴訟法上の問題について最高裁判決の検討を通じて論じている。
(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 名誉教授 宇賀 克也 / 2021)
本の目次
第1節 医療情報の保護と利用
第2節 次世代医療基盤法──医療ビッグデータの利用と保護
第2章 消費者情報
第1節 消費者保護と情報管理
第2節 データ・ポータビリティ権について
第3章 教育と個人情報保護
第4章 グローバル化と個人情報保護──立法管轄権を中心として
第5章 検索サービス
第1節 「忘れられる権利」について
第2節 検索サービス事業者の削除義務
第3節 検索サービス事業者の法的責任
第4節 検索サービス事業者に検索結果の削除の仮処分が命じられた裁判例
第6章 統計情報
第1節 全面施行された新統計法と基本計画
第2節 統計データの利活用に向けた統計法の改正
第7章 弁護士会照会
第1節 弁護士会照会に対する報告を受けることについて弁護士会が有する利益
第2節 弁護士会照会に対する報告義務確認訴訟
第8章 宇治市住民基本台帳データ漏えい事件
第9章 一部不開示決定の取消訴訟における主観的出訴期間
関連情報
原田大樹 (京都大学大学院法学研究科教授) 評「データ・ポータビリティ権について」 (日本公法学会『公法研究』81号、p.288 2019年10月)
http://www.asas.or.jp/publiclaw/
過去の著者インタビュー:
問われる個人情報の保護と活用法 (Between 2005年4・5月号)
https://berd.benesse.jp/berd/center/open/dai/between/2005/0405/01toku_05.html