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書籍名

行政法概説III 行政組織法 / 公務員法 / 公物法 [第5版]

著者名

宇賀 克也

判型など

658ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2019年3月

ISBN コード

978-4-641-12605-3

出版社

有斐閣

出版社URL

書籍紹介ページ

その他

第4版: 2015年12月10日発売

英語版ページ指定

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本書は、行政組織法、公務員法、公物法を対象としている。行政法の研究教育は、行政法総論、行政救済法を中心として行われ、行政組織法、公務員法、公物法の研究教育は重視されない傾向にある。しかし、著者は、行政組織法、公務員法、公物法の研究教育も重要と考え、研究時間のかなりの時間をこの分野に割り当て、その成果を本書に盛り込んだ。たとえば、「本部」は、内閣に置かれ、総合調整のための組織として設置されることが少なくないが、従前は、全く着目されてこなかった。本書では、「本部」について行政法の書籍として初めて取り上げた。また、内閣官房・内閣府による総合調整についても、ヒアリングを含めた調査結果を本書に盛り込み、副長官補室が内閣官房による総合調整の要となっていることを明らかにし、その実態についても解説した。委員会については、大臣委員会とそれ以外の委員会で委員長が投票権を有するか否かで差異が設けられていること、検察審査会は国会答弁では行政機関とされているが、裁判所の組織として位置づけるべきこと等を初めて指摘した。会計検査院については、これまでの行政組織法体系書では、ごく簡単に言及されるにとどまった。これに対し、本書では、会計検査院についてかなり詳しく解説し、会計検査院を国会の機関として位置付けることは、政治的独立性を損なうおそれがあり、とりわけ議院内閣制においてはそうであること、会計検査院の事務総局は人事院の事務総局、他の委員会の事務局と相違する特色を有すること等を指摘した。また、行政法学界で全く注目されてこなかった地方共同法人という法人類型についても、本書で取り上げている。
 
公務員制度については、一連の公務員制度改革について詳細に分析し、コンプライアンス条例等も視野に入れている。
 
公物法の分野では、古典的理論では説明できないような新しい動きが急速に進行している。すなわち、公物管理と公物運営を区分し、後者についてコンセッションを行う分野が拡大しつつある。そこで本書では、「公物管理と公物運営」という項目を設けて、この問題を取り扱うこととした。PFIについても、BTO方式、BOT方式、RO方式の区別、サービス購入型、独立採算型、混合型の区別についても説明する等、かなり詳しく解説している。公物管理における公私協働も進展しており、これについても独立の項目を設けている。また、空間的時間的分割使用の観念の導入により、公用物の公共用物的使用が可能となり、これが進めば、公用物と公共用物の区別は相対化されることを指摘した。
 
本書においては、演習で報告したり、研究を行ったり、実務上の必要から調査する際の便宜のため、注においてできる限り参考文献を掲げているので、活用していただければ幸いである。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 宇賀 克也 / 2016)

本の目次

第1編 行政組織法
  序  章 行政法における行政組織法
 第1部 行政組織法総論
  第1章 行政組織編成権
  第2章 行政機関
  第3章 行政機関相互間の関係
  第4章 国・地方公共団体間および地方公共団体相互間の関係
 第2部 広義の内閣
  第5章 内閣
  第6章 内閣補助部局 (1) – 内閣府以外
  第7章 内閣補助部局 (2) – 内閣府
 第3部 内閣の統轄の下にある行政機関
  第8章 内閣府と省
  第9章 外局
  第10章 附属機関
  第11章 地方支分部局
 第4部 内閣から独立した機関
  第12章 会計検査院
 第5部 特別行政主体と委任行政
  第13章 国の特別行政主体と委任行政
  第14章 地方公共団体の特別行政主体と委任行政
  第15章 国・地方公共団体と特別行政主体の関係
 
第2編 公務員法
  第1章 公務員法総論
  第2章 公務員の勤務関係
  第3章 公務員の権利
  第4章 公務員の義務と責任
 
第3編 公物法
  第1章 公物法の基礎概念
  第2章 公物法の基礎理論
 

関連情報

小西敦 評 (『季刊 行政管理研究』第122号60~65ページ 2008年6月)
http://www.iam.or.jp/quarterly/par122.html

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